2018年11月27日(火) 18:00
今月はJBCがあったり、その前にはJBC関連で多忙のため1回お休みをいただいたりで、グルメネタは2カ月ぶり。番組の宣伝のようで恐縮だが、本日(11月27日)放送されるグリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』で地方競馬グルメの特集をやっています。
番組開始の2014年から取り上げてきたグルメの総集編のようなもので、しかしながらまだ取り上げきれていなものもいくつかあり、取り上げていれば確実にランキングの上位になったのが、今回紹介する佐賀競馬場、のだ屋さんの焼きそば。
のだ屋の最近の看板メニューは「イケメン」だ。ラーメンの麺にはフライパンで焦げ目がつけられ、きくらげ、もやし、ゆで卵、揚げた豚肉、ネギなど具材がたっぷり。九州では豚骨スープがデフォルトだが、イケメンは透き通ったあっさりスープ。のだ屋のおばちゃんに、「新メニューなのよ」と言われて初めて食べたときは、そのスープにまずびっくりした。
それがもう6年も7年も前だったか。最近では、『ばくばく!バクチごはん』(原作:島田英次郎、漫画:高橋コウ)という漫画でも取り上げられていて、このイケメンを目当てに来るお客さんも多いという。具だくさんで450円というのも信じがたいコストパフォーマンスだ。
のだ屋にはほかにもオススメがいくつもあって、今年6月26日付けのこのコラムでもカレーラーメンを紹介した。しかしその後改めて、これは食わなアカンと気づいたのが、焼きそばだった。
看板に、「のだ屋の原点は焼きそばです」と書かれるようになったのは、いつ頃からだろう。そんな昔ではないような気がするのだが。
のだ屋の歴史を物語る焼きそば
なんとなく見て、気づいてはいたのだが、つい先日ご主人からゆっくり話を聞く機会があって、なるほど、この焼きそばがあったからこそ、佐賀競馬場の今ここに、のだ屋が存在しているのだということを思い知らされた。
写真にある「創業昭和47年」といえば、まさにハイセイコーがデビューした年。その直後、ハイセイコーによる第1次競馬ブームがあり、全国の地方競馬も入りきれないほどのファンで溢れた時代があった。
その創業当時、のだ屋さんの看板メニューだったのが焼きそば。大きな鉄板で延々焼きそばをつくり続け、開催日のたびに何百食も売れたという。焼きそばとはいえ、大量につくり続けるとなれば相当な重労働で、そのためご主人はヘルニアを患ったこともあった。焼きそばだけでは体がもたないことから、徐々にいろんなメニューを増やしていったらしい。それが、「のだ屋の原点は焼きそばです」とするところの意味だ。
今は当時のように競馬場がファンで溢れるようなこともなく、今ののだ屋のメニューで焼きそばは意外に地味な存在。それゆえ注文ごとに、鉄板ではなくフライパンでつくってくれる。その焼きそばが、これ。
佐賀競馬場で歴史を刻んだ焼きそば500円
焼きたて、つくりたてということもあるが、まず見た目がいい。野菜中心で具だくさん、強火でサッと炒められたキャベツともやしはシャキシャキ。ぼくが焼きそばを評価するときの重要なポイントだ。
そして、のだ屋のご主人のこだわりは、ソースにあった。ウスターっぽいソースではあるものの、たしかにこの味はほかで味わったことがない。ソースのことではご主人の話が止まらなくなった。
ご主人自慢のオリジナルソース
市販のソースをベースにしてはいるものの、トマトやらなにやらをじっくり煮込んでオリジナルのソースに仕上げているそうだ。それゆえ、日持ちはしない。なるほど、独特の酸味がきいたソースの味は、トマトだったか。
今は地方競馬でも馬券の売上げの大半がネットになり、その傾向は地方都市の競馬場ほど顕著。場内の飲食店など儲かるわけがない。当然後継者がいるわけもなく、店主が高齢となったことで閉店となる店舗も少なくない。そんな状況で、半世紀近くもお店を続けて、変わらずつくり続けている焼きそばというのは奇跡に近い。
ちゃんぽんも、九州ラーメンもいいが、佐賀競馬場に行ったら、のだ屋の焼きそばを食べよう。
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斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。
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