2019年05月30日(木) 12:00 29
今週火曜日、28日の朝、川崎市多摩区登戸で、通学途中の児童ら19人が男に刺され、2人が亡くなった。事件は、登戸駅から多摩沿線道路を北西に直進し、登戸第一公園の二股を左に入ったところで起きた。私は毎週末東京競馬場に行くとき、その二股を右に進んでいる。人も車も建物も多く、賑やかで明るい、普通の街だ。いつも見ている風景だけに、衝撃も悲しみも大きかった。
今週を含め、あと4週、東京開催があるので、私はそこを通る。
花を手向けることぐらいしかできないが、亡くなったお2人が安らかに眠り、被害に遭った児童と保護者のみなさんが一日も早く心の平穏を取り戻すことを祈りたい。
東京開催が終わると、長くつづいた花粉症のシーズンも終わる。
いつもこのエッセイでは、読者にとって役に立たないことばかり書いている。なので、今回は、ひとつ、かなり多くの人にとって有用なことを書きたい。花粉症対策である。といっても私のオリジナルではなく、テレビで見た方法だ。洟をかんだあと、鼻の穴のなかにワセリンを薄く塗る。それだけで、花粉症の症状が驚くほど緩和されるのだ。あくまでも私の場合であって、効果には個人差があることを申し添えておく。
私が使っているのは50グラムの白色ワセリンで、直径3.5センチ、高さ6センチほどの容器に入っている。ドラッグストアで300円ほどだったと思う。これでワンシーズン十分にもつ。
指で塗ることに抵抗のある人は、綿棒を使うといい。1、2度洟をかんでもワセリンは残るので、1日に4、5回塗りなおせばこと足りるはずだ。
花粉は鼻水などの水分に触れると表面が割れて、なかに入っていた別のアレルゲンが出てきて、それが症状を悪化させる。だが、ワセリンはベトベトしているので、付着した花粉は割れない。皮膚に花粉が直接触れるのを防ぐ効果もある。
雨の日のほうが症状がキツくなるように感じていたのは錯覚ではなく、花粉が割れてアレルゲンが飛び散るからなのだろう。
例年、私はエプソムカップぐらいまで、抗ヒスタミン剤を朝晩服用していたのだが、今年はゴールデンウィーク明けに飲まなくなった。それでも、ワセリンの塗布だけで症状を抑えられている。
これはイギリスで一般的なやり方なのだという。イギリスではあちこちに羊が放牧されており、その芝の花粉が症状を引き起こすらしい。
芝の花粉にも杉花粉にも効果があるということは、ほかの花粉にも効果が期待できるのではないか。
ただし、脂漏性湿疹、脂漏性皮膚炎の方は避けていただきたい。また、薬などでアレルギー症状を起こしたことのある人は、使用前に必ず医師や薬剤師に相談してほしい。
注意事項をもうひとつ。アングロサクソンは鼻が高く、鼻孔が下を向いている人が多いから気にしなくていいのかもしれないが、日本人は鼻孔がいくらか上向きになっているので、塗りすぎると、外から青っ洟のように見えてしまうことがあるので気をつけたほうがいい。
私がこの方法をやりはじめたのは、杉花粉が少なくなった4月中旬だった。ハイシーズンにどれだけ効果があるかは、来年にならないとわからない。来年は、症状が出はじめる1月末か2月頭からやってみようと思う。
花粉シーズンの終わり間際に「役に立つ」と言われても困るかもしれないが、来年、またリポートしたい。
毎年、ダービーが終わると気が抜けてしまう。が、花粉症と一緒に、五月病の季節も終わるというプラス面もあるのだから、それを大きくとらえて、6月も頑張ろう。
島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆~走れ奇跡の子馬~』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。
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