改めて感心したのはD.レーン騎手のたくましさ

2019年06月01日(土) 12:00

ある意味、貴重なものを見せてもらったダービーでした

 先週の日本ダービー、みなさんの首尾はいかがでしたか?

 サートゥルナーリアを信じていた方々にとって、あのスタートは悪夢のようなものだったでしょうね。競馬にそういうことは付き物とは言いながら、レースがレースだけに、相当悔しい思いをされたこととお察し申し上げます。

 もし同馬が勝っていれば、2005年ディープインパクトの1.1倍、1994年ナリタブライアンの1.2倍、84年シンボリルドルフの1.3倍に次いで、ダービー史上4位タイの”単勝低額配当ダービー馬”になっていた(91年のトウカイテイオーが1.6倍でそれに並ぶ)ところでした。

 ところが、勝ったのは12番人気のロジャーバローズで、その単勝は9310円もつきました。これは、1949(昭和24年)タチカゼの55430円に次ぐ史上2番目の高額配当。つまり、90歳を超えるような“超大ベテラン”の方を除き、ほとんどの競馬ファンがいまだかつて経験したことのなかった大波乱になったわけです。

 ちなみに、タチカゼは23頭立てのダービーを19番人気で制しました。今のダービーは18頭がフルゲートですから、この人気薄優勝記録は永久に(?)不滅です。

 いろいろ調べてみると、同馬を管理していた伊藤勝吉調教師は、ダービー当日、京都競馬場にいたとのこと。そう、調教師さんも勝てるとは思っていなかったようです。なにしろ、ダービー1週前に行われた東京のオープン戦(同馬にとっての“東上”初戦)で6頭立ての5着に敗れていましたからね。

 当時はテレビも日本短波放送(今のラジオNIKKEI)もなかった頃。タチカゼのダービー制覇を伝え聞いた伊藤調教師は、「ウソやろ、何かの間違いや」を連発、その知らせをすぐには信じられなかったそうです。

 そんな珍事に次ぐ出来事が起きたということは、今回は、ある意味、貴重なものを見せてもらったと言えます。オークスで1番人気馬が4年連続で優勝したと思ったら、ダービーは4年連続で1番人気馬が敗退。はたして来年はどうなるでしょう?

 ところで、改めて感心したのはD.レーン騎手のたくましさ。大本命のダービーでああいう負け方をしたというのに、直後の目黒記念でルックトゥワイスをしっかり勝利に導いたのですから、立派なものです。

 これを見て、2014年のダービーで1番人気のイスラボニータに騎乗した蛯名正義騎手を思い出しました。同騎手は、ワンアンドオンリーにわずかに及ばず、悲願のダービー制覇を逃してしまいます。さらに、次の第11レースでも1番人気馬を任されながら大出遅れして7着に惨敗。その心境はどんなものかと思っていたら、最終の目黒記念で8番人気のマイネルメダリストを見事に優勝させました。

 勝って驕らず、負けて腐らず。馬券も一緒ですよね。ダービーの馬券を当てた方も外した方も、また今週の競馬を楽しみましょう!

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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