2019年10月08日(火) 18:00 11
前々回の本欄で、地方競馬で10月にデビューする4名の新人騎手を紹介したが、早くもそのうち2名が初勝利を挙げた。
10月5日(土)のデビュー初日に勝利を挙げたのが佐賀の金山昇馬騎手。この日6鞍目となった最終レースで、騎乗したアンジーは2番人気。3コーナー過ぎから1番人気のビューティフルキイと馬体を併せての追い比べとなったが、直線でこれを競り落としての勝利となった。
もうひとりは岩手の関本玲花騎手。デビューして3日目の10月7日(月)盛岡第2レース。単勝1.2倍の断然人気となったスカイルークで、抜群のスタートを決めて単騎で逃げると、そのまま2着に5馬身差をつけての圧勝となった。
さて、今年のこのコラムでは新人騎手や若手騎手を取り上げることが多いが、それだけ活躍が目立っているということ。2017年から始まったヤングジョッキーズシリーズの効果なのかどうかはわからないが、とにかくここ2、3年の新人騎手の活躍は目覚ましく、それは年を追うごとに目立ってきている。
今年4月にデビューした新人騎手の10月7日現在の成績は以下のとおり。
小野楓馬(北海道) 435戦38勝
福原 杏(浦和) 404戦35勝
多田羅誠也(高知) 320戦30勝
塚本涼人(岩手) 418戦27勝
兼子千央(金沢) 305戦18勝
妹尾将充(高知) 256戦13勝
木本 直(兵庫) 238戦11勝
大木天翔(大井) 193戦9勝
濱 尚美(高知) 212戦7勝
東川 慎(笠松) 165戦6勝
木本直騎手はデビュー直後に怪我をして約1カ月の休養があり、東川慎騎手は現在負傷療養中なので、この2人の数字は割り引いて見る必要がある。それにしてもデビューから約半年で30勝台が3名というのもすごいし、ほとんど勝てない騎手がひとりもいないということもすばらしい。
もちろん騎手本人の努力もあるのだろうが、地方競馬教養センターでの訓練のレベルも上がっているのだろうし、また厩舎関係者のサポートもあってのことだろう。
北海道の小野楓馬騎手は、このコラムでも取り上げたとおり、ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドが行われた8月21日の門別で1日5勝をマークし、さらに29日には2歳牝馬の重賞・リリーCをプリモジョーカーで制し、デビューから約4カ月で重賞初制覇を果たしている。
浦和の福原杏騎手についても、7月24日の浦和で1日4勝を挙げたことを取り上げた。それにしても激戦区の南関東で、デビューから約半年で35勝というのはすごい。
南関東でデビューする新人騎手の1年目の勝鞍は一桁でも普通だが、2009年以降に新人として南関東でデビューした騎手の初年度の勝利数でもっとも多かったのは、2013年デビューの笹川翼騎手(大井)の43勝。次いで2016年の保園翔也騎手(浦和)の33勝となっている(いずれも南関東のみの勝利数)。
福原騎手は、この原稿を書いている8日にも2勝を挙げて37勝(最終レースまでにさらに勝利を重ねているかもしれない)。残り3カ月弱で、笹川騎手の初年度の勝利数を超える可能性はかなり高いといえそうだ。
NARグランプリの優秀新人騎手賞は、「前々年の3月31日以降に新規に免許を取得した騎手の中から」とあるから、デビュー2年目までの騎手に資格があり、勝利数だけでなく、収得賞金、勝率、重賞の成績などが総合的に評価されて選ばれる。
2018年は、デビュー2年目で64勝を挙げた笠松の渡邊竜也騎手が受賞したが、今年デビュー2年目の騎手では、岩手の岩本怜騎手が今年だけですでに69勝を挙げており、さらに重賞初勝利も達成(6月2日盛岡・早池峰スーパースプリント)している。NARグランプリ・優秀新人騎手賞の争いも、ますますレベルの高いものになってきている。
斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。