【大阪杯】馬の走りを邪魔しない、川田騎手ならではのブレない騎乗

2021年04月06日(火) 18:00 95

哲三の眼

無敗でGIのタイトルを手にしたレイパパレ(C)netkeiba.com

毎週木曜日更新だった当コラム、本日から毎週火曜日の更新になりました。元騎手、佐藤哲三氏による先週のレース回顧をより早くお届けしてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。今週は大阪杯を優勝したレイパパレ&川田将雅騎手をピックアップします!

(構成=赤見千尋)

道悪馬場でさらに光ったブレーキング技術

 大阪杯はレイパパレが無傷の6連勝で初のGI制覇を果たしました。レイパパレの能力の高さと馬場適性というところもあったと思いますが、先週の高松宮記念に続き、今週も川田(将雅)君は道悪馬場を上手く使った見事な騎乗でしたね。

 今回の馬場はどの人馬にとっても難しい条件だったと思いますが、 その中で川田君の騎乗フォームは、肩、肘、拳のラインが馬のクビの動きにしっかりマッチングした動きで、レイパパレにとってはすごく走りやすい状況に持っていってもらえたのではないでしょうか。この話は先週もしましたが、今回さらに目を引いたのが1、2コーナーの駆け引きです。

 1コーナーに入る手前では松山(弘平)君も好スタートを切っていました。川田君との横並びの中で、松山君は「ハナには行きたくないな」というニュアンスだったのではないかと。そこをしっかり確認して意識しているので、川田君は余裕を持って減速しながらコーナーに入っている。そうなると内の馬はしっかりブレーキを掛けないといけなくなるので、自然な流れの中で内側の馬によりキツイブレーキを掛けさせることが出来ました。

 その後のコーナリングもさすがで、1コーナーに入っていく時に減速するためにブレーキングしていくわけですが、コーナーの入りから1、2コーナーの頂点までと、頂点から2コーナーに掛けてのブレーキングの仕方が違っているんです。イメージ的な話になりますが、まず前半はしっかり抑えるというブレーキング、そして頂点からの後半は、少しづつ前に譲りながらのブレーキングに変えている。しっかり減速するところと、やや前に譲りながら減速するというところで、同じ減速といってもスピード感、スピードの乗りが違って来るわけです。

 特に道悪馬場なので、1歩目を先に出せるというのは重要。他の馬たちがコーナーの頂点に達する前に、自身はそこを抜け切って、減速はしているけれども少し前に出しているようなイメージ。そうなると自然に差は広がりますよね? そこを、差を広げるというよりも、スピードの乗りをキープしながら回ってこられた。同じような距離感であっても、前と後ろではスピードの乗りが違ってきますから、後ろからの馬たちにとってはかなりキツイ競馬になったと思います。

哲三の眼

後ろからの馬たちにとってはかなりキツイ競馬に…(C)netkeiba.com

 1、2コーナーを走る間にある程度勝負付けを済ませ、自分が優位になる流れを仕込めたのではないでしょうか。こういう駆け引きが面白かったですし、他のジョッキーたちにいい仕事をさせなかったですよね。

 4コーナーからの立ち上がりでは、自然に外に出ていて、パトロールビデオを見ても人馬共にブレていないんです。両サイドのハミが均等にしっかり掛かっているような感じがして、こういう騎乗は川田君ならではだと感じます。外に出す操作の中でも、ほとんど拳を横に開いたりしていない。極力横の動きはしない、騎手の上体をなるべく左右に振らない、という騎乗に見えました。

 僕自身、現役時代に道悪馬場で大事にしていたのが、左右の動きを極力少なくして、馬が走って行く方向の動き、縦の動きを大切にするということです。道悪だと脚元が不安定になりますから、馬の走りがブレないよう、なるべく横の動きをせずに、馬の走りの邪魔をしないことを心がけていて。もちろんその場その場で左右に操作する場面もあるわけですが、するならレースの前半で、疲れてくる後半は極力しないという風に考えていました。

 川田君の考えは僕と同じではないかもしれませんが、横の動きを極力少なくして、前に行く動きを大事にしているように見えました。レイパパレが道悪を上手く走れたということもあるでしょうが、上手く走れるようにフォローしてあげていると感じますし、それを周りには見えないようにしているところがさすがだなと。見た目では逃げて簡単に勝ったと感じたかもしれませんが、高い技術が詰まったレースでした。

 2着だったモズベッロの(池添)謙君は、川田君のスピードの乗せ方とは逆で、最初にしっかり受け止めてあげて、後ろから展開を突いてという競馬でしたね。直線ではモズベッロがバランスを崩しそうな場面もありましたが、ハミで支えるというより、馬の体に沿って騎手の重心移動でバランスを整えてあげていましたから、さすが謙君だなと思いました。

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佐藤哲三

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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