2021年04月18日(日) 18:00 186
衰えを感じさせない大ベテラン、柴田善臣騎手(撮影:藤井真俊)
JRAでは現役最年長となる柴田善臣騎手(54)。昨年11月、今年2月と2度の骨折に見舞われながら、3月には史上6人目となるJRA通算2300勝を達成しました。今年でデビュー37年目。衰えを感じさせない大ベテランに、近況や自身の今後について話を伺いました。
(取材・文=東京スポーツ・藤井真俊)
※取材中は屋外でマスク着用、写真撮影時のみマスクを外していただきました。
※当記事は21年4月配信分の再掲です
──3月14日の中山6Rをユキノファラオで勝ち、JRA通算2300勝を達成されました。改めておめでとうございます。
柴田 ありがとう。まぁ長く乗ってる…いや、乗せてもらってきたからね。自分ひとりで築き上げた数字じゃなくて、色々な人の支えがあったからこその数字だと思います。
──1985年のデビューから今年で37年目。途方もない数字ですが、騎手を志した時に目標としていた勝ち星などはあるのですか?
柴田 いやいや。数字とかは意識したことはないね。ただ自分自身、レースで勝つことは面白かったし、自分が勝つことで周りの人や応援してくれるファンだったりがいい思いをできるのはうれしかった。この数字はそういう1個1個の積み重ねだと思うよ。記録っていうのは周りに聞かされたり、盛り上げてもらってから知ることの方が多いよね。
記録達成時には“レースが好き、1番の趣味”とコメントを残した(撮影:下野雄規)
──そういう中で昨秋から今年にかけて2度の大きな怪我がありました。改めて振り返っていただけますか。
柴田 昨年11月はパドックで馬が転倒してしまって左第5中足骨を骨折。当初は2週間くらい休めば体を動かせる予定だったんだけど、1度退院した後に血栓が見つかって再度緊急入院をすることになったんだ。で、長く休んでいた分リハビリもキツかった。長く体を動かさないと大変なんだよ。年も年だからさ(笑)。
──では専門のトレーナーをつけたりして懸命にリハビリに取り組んだんですね。
柴田 いや、そういうのは俺はしないの。自己流でストレッチとかするくらい。まぁでもあの時はやはり休みが長くなったからいつもより負荷を強めて体を動かしたけど。
──え? トレーニングは自己流なんですか?
柴田 うん。前にトレーナーをつけたことはあったけど、合わなくて逆に体を壊しちゃったんだ(苦笑)。まぁこれだけ長くやってるから馬乗りに必要な体というのは分かっているし、今までに学んだことを自己流にアレンジしてる感じだね。
──今年1月に復帰したのも束の間、2月6日に再び事故に遭いましたが、わずか2週間後に復帰されました。
柴田 ゲート内で足をぶつけて違う骨(左第五趾)を骨折しちゃった。まぁ痛いのは痛かったけど、馬に乗っちゃえば平気だったからね。ちょっと大きめのブーツを履いて乗ってたよ(笑)。
──その復帰週にはリュウノユキナで阪神のオープン・大和Sを勝ちましたね。まさに鉄人だと思いました。
柴田 いやいや、走るのは馬だから。自分は歩くのにもひと苦労だったけどさ(笑)。
──そんな善臣さんですが、今年も8勝を挙げて存在感を示されています。人気薄での勝利などもありましたが、会心のレースはありましたか?
柴田 会心のレース? そういうのはないな。例え勝てたとしても、細かい部分で「あの時こうしていればもっと楽に勝てたのに…」とか考えちゃうんだ。これは昔からそう。だから今までの全レースを振り返っても、きっと会心のレースっていうのはないと思う。自分が大きなレースを勝った姿を見たって「カッコわる~」とか思っちゃうもんね(苦笑)。
この取材後、14日の東京スプリントを優勝!(撮影:高橋正和)
──なるほど。では逆に昔の自分と比べて“変わったな”と思う部分はありますか。
柴田 昔よりも楽しんで馬に乗れるようになったよね。若い頃ってガツガツしてたっていうか、なんかギラギラしてたと思うんだ。「自分の気持ちで乗っていない」というか、「違う自分を作らされている」というか…。特にリーディングを取っていた頃なんかは、まさにそうだったよね。自分でリーディングを「取りたい」というよりも「取らなきゃ」っていう感じで。でも今は全然違う。本当に自分自身、楽しんで乗れているよ。
──いま「若い頃は…」というお話が出ましたが、若手の騎手との交流はあるんですか?
柴田 若手? う~ん…田辺(裕信騎手)とかかな。
──あの、田辺騎手はもう37歳なので…。
柴田 あ、そうか。う~ん…じゃあ、交流はあまりないかな(笑)。まぁでも無理はないよ。だって俺は孫もいるおじいちゃんだよ。若い子だって話しかけづらいでしょう。もちろん聞いてくれれば何でも答えるつもりはあるけどさ。
──善臣さん自身は若手の頃は先輩騎手たちにアドバイスを求めに行ったりはしたのですか?
柴田 いや、あんまりしてない(笑)。これは自分の性格的なものもあるし、あとは当時は「見て盗め」ってのをよく言われてた。騎乗フォームだったり、ステッキの使い方だったり、先輩たちのを参考にしてたかな。
──さっき名前の出た田辺騎手とは仲がいいんですか?
柴田 うん。色々と共通点が多いんだよね。お互いに犬を飼っていて、子供の年も近いし。家族同士でスキーとかも一緒に行ったりしたことがあるよ。
──でも最近は新型コロナウイルスの影響でなかなか遊びにも行けないんじゃないですか。
柴田 本当だよ! 俺なんかもう1年以上、外食してないよ。唯一、1回だけ行ったのが昼のラーメン屋さん。それも開店直後の誰もいない時間を見計らって行ったんだ。それだけ気をつかって頑張ってるのに、世間ではなかなか感染者数が減らなくて…。本当にもどかしいよね。
──競馬場にも少しずつ観客が入れるようになりましたが、まだ以前のようにたくさんのお客さんでにぎわう姿は戻ってきません。
柴田 残念だよね。ハッキリ言ってお客さんがいない競馬場なんて面白くもなんともないよ。お客さんがいて、盛り上げてくれてこその競馬なんだというのを、この1年くらいは本当に痛感したね。馬券が売れているんだからいいんだって意見もあるけど、個人的には全くそうは思わない。ファンがいて、声援があって、時にはヤジがあって(笑)、そういうのを全部ひっくるめての競馬だと俺は思う。
たくさんのお客さんでいっぱいの競馬場が戻ってきますように…(ユーザー提供:モエロウエクラさん)
──それでは最後に今後の騎手生活について聞かせてください。まさか引退なんて考えてませんよね。
柴田 もちろん。楽しく、そして怪我なくいられるうちは、少しでも長く馬に乗っていられればと思ってます。逆に自分自身でキツくなって、周りに迷惑をかけるようになったら、その時は辞めますよ。とにかく楽しく、怪我なく、ジョッキーを続けていきたいね。
(※文中敬称略)
netkeiba特派員
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