2021年05月18日(火) 18:00 73
JRA通算1500勝を達成した幸英明騎手 (C)netkeiba.com
16日の中京12レースを制した幸英明騎手。1番人気のサンキューユウガとともに臨んだこの一戦を、今回は「追い方」に焦点を当てて解説します。
また、先週のNHKマイルカップで落馬した藤岡佑介騎手のレースにも注目。騎乗について「強い気持ちを感じた」と語り、自身の経験も振り返っています。
(構成=赤見千尋)
先週の競馬でまずお話ししたいのは重賞ではないのですが、日曜日の中京12レース。1番人気サンキューユウガに騎乗した幸(英明)君の勝ち方が目を引きました。注目していただきたいのは直線に入って2着馬と接戦になりそうだというところで、追い方を変えているところです。
稍重で馬場が良くない状態だったので、基本的には起こして前に押すような形で追っているんですが、ゴール板100mくらい手前あたりから準備をし始めて、重心を一回変えている。そこから左肘をちょっと上げるような形で拳を前に置いて、馬がクビを出しやすいように手綱がきつくならないような形で追っているんです。
同じ「追う」と言ってもいろいろな種類があって、重心の掛け方や拳の位置で、馬の前の軌道が動きやすくなったり、伸びやすかったりします。今回の幸君は道悪で有効な追い方から、「接戦になりそうだ」と感じて少しでも前に出やすい追い方に変えて勝つという、技術の高さ、技を見せてくれました。
ただただがむしゃらに、ずっと同じ形で強く追えばいいというわけではなく、その場その場に合わせた追い方というのがあるわけです。(武)豊さんもよくこういうことをするんですけど、騎手それぞれで乗り方は違っていて、幸君らしいやり方だなと感じました。
レースを振り返り「幸君らしいやり方」と哲三氏 (C)netkeiba.com
もう一人触れておきたいのが、NHKマイルカップでスタート直後に落馬した(藤岡)佑介です。改めて週が変わってどんな騎乗を見せてくれるかなと思っていたら、1鞍目である土曜日の中京2レースを9番人気メイクマイデイで逃げ切りました。
メイクマイデイは昨年8月に新馬戦を使って以来のレースで、今回は長期休養明け。逃げたこともなかったわけですが、スタートはそんなに早くなかったけれどもハナに行って勝ち切ったというところに、馬の頑張りと佑介の強い気持ちを感じました。
僕もラガーレグルスの皐月賞で、中山競馬場でああいう形になった時、あえて関西ではなく東京に行って、人気薄の馬で勝ったことがありました。あの時はいろいろな気持ちがあって、その中でもファンの皆さんにいいアピールがしたいという想いが強かったです。
今回佑介がどういう思いだったかはわからないけれど、僕にはそういう想いが見えました。もともと応援していましたが、またこれからも応援したいなという気持ちにさせてくれる騎乗でした。
9番人気メイクマイデイとともに勝利を飾った藤岡佑介騎手 (C)netkeiba.com
最後に、ヴィクトリアマイルは1番人気グランアレグリアが完勝でしたね。クリストフ(・ルメール騎手)は相変わらず巧いですし、自分の馬の持ち幅、やれること、やってはいけないことをしっかりわかっているなと。もう強いとしか言いようがないですね。
佐藤哲三
1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。