地方競馬売上更新なるか

2021年12月21日(火) 18:00

総売得額は初の1兆円超えに期待

 今年も残すところあと11日。地方競馬ではコロナ感染の影響で、佐賀競馬では5月に2日間、金沢競馬では8月に4日間の取止めがあったが、まずは無事に競馬開催が行われてきた。昨年度(2020年4月~2021年3月)は、コロナ感染拡大による巣ごもり需要と思われる要因で、地方競馬全体の売上が前年度比で130.1%と大きな伸びを見せた。

 果たして今年度はどうか。4月~11月まで8カ月の開催成績では、前年同期比で107.8%。長く開催自粛が続いた笠松以外、すべての競馬場で、総額でも、1日平均でも、前年度比で100%超となっている。

 地方競馬の総売得額で最高を記録したのが1991年度の9862億円余りで、昨年度は9122億円余り。いよいよ今年度はその記録更新と、初の1兆円超えが期待されている。しかしこのまま108%程度の伸びとなると、記録更新は微妙なところ。それでもどん底だった2011年度が3314億円余りだったことを考えると、そこから10年で3倍近い伸びとなっているのはすごい。

 コロナ感染の第5波が収まり、12月になってから、いよいよ夜の街がコロナ以前と同じような賑わいになってきたように感じる。経済がちゃんと回るのはいいことだが、そうなると、特に地方競馬はナイター開催の時間帯のネット投票の売上がどうなるのか、ちょっと気になるところではある。

 さて、この時期になるともうひとつ気になるのが、NARグランプリの表彰馬だ。今年度は地方馬の活躍が目立ち、ここまでJpnI勝ち馬が3頭。川崎記念、かしわ記念とJpnI・2勝がカジノフォンテンで、ジャパンダートダービーを逃げ切ったのがキャッスルトップ、そして地方馬として初めてJBCクラシックを制したミューチャリー。いずれも船橋所属馬だ。

 3頭とも東京大賞典に登録(12月20日現在)があるが、カジノフォンテンは、チャンピオンズC出走(10着)直後の話では、東京大賞典には出走せず、川崎記念が目標とのことだった。年度代表馬の行方は、東京大賞典の結果次第となることは間違いない。

 残念だったのは、12月15日に地方競馬全国協会理事長、塚田修氏の訃報が伝えられたこと。

 もとは大井競馬の主催者である特別区競馬組合の事実上のトップ(副管理者)で、その時代からさまざまに新しい企画を打ち出してこられたが、地全協のトップになってからもそれは変わらなかった。

 僕が直接話を聞かせていただいたことでは、2018年のJBC京都開催では、実現のためJRAとの折衝でかなり苦労されたようだった。さらにその後、JBCにできるだけ多くの地方有力馬の出走を促すような企画もいくつも提案され、すぐに実行されていた。

 個人的に思い出されるのは、昨年10月20日に行われたJBC20周年記念イベントでのこと。『JBC20周年の軌跡』と題されたパネルディスカッションで、僕はパネラーとして参加させていただいたのだが、2歳のダート戦を充実させようという話題の中で、その場の思いつきで、「2歳のダートグレード、JBC2歳優駿、兵庫ジュニアグランプリ、全日本2歳優駿を、2歳三冠としてボーナス賞金を設定してはどうか」と提案した。するとイベント終了後、塚田理事長が僕を見つけ、「2歳三冠、いいね」と喜んでおられた。

 そしてそれは今年、すぐに現実のものとなった。しかも2歳ダートグレードの三冠ボーナスを設定しただけでなく、従来行われてきた地方重賞の『未来優駿』シリーズと連携して、『2歳チャンピオンシリーズ』が実施されることになった。

 67歳という若さゆえ、地方競馬の売上が右肩上りというなかでは、まだまだやりたいことはあったと思われる。ご冥福をお祈りいたします。

 さてこのコラムは、年末年始お休みをいただき、次回掲載は1月11日となります。では、良いお年を。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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