2022年02月17日(木) 12:00 42
先日、競馬場で1年ぶりくらいに会ったカメラマンを後ろから見ると、ハゲが進行していた。彼は私と同年配だ。同じ弱みを持つ者として、以前より親近感が増した。望むと望まざるとにかかわらず、時間は流れ、人は年を取る。
今週末のフェブラリーステークスにミューチャリーを送り込む船橋の矢野義幸調教師は71歳だ。JRAの調教師は70歳で定年を迎えるが、地方競馬はルールが異なる。最近の例でいうと、浦和の宇野木数徳元調教師は、昨年3月末に引退したとき78歳だった。南関東各場の最年長調教師は、川崎の岩本洋調教師が77歳、浦和の牛房榮吉調教師が74歳、船橋の渡邊薫調教師が73歳、大井の柏木一夫調教師が71歳となっている。
長く調教師をつづけられる秘訣はあるのだろうか。地方競馬情報サイトで、最年長の4人の先生方の写真とデータを見て、ある共通点に気がつき、愕然とした。みな、髪の毛がフサフサなのだ。
ネタとしては逆だったほうが面白いのだが、こう考えることもできる。毎朝早起きする規則正しい生活をし、生き物を慈しむ気持ちを持ちつづけることが毛髪にいいのではないか、と。若いころは馬に乗っていただろうから、体重も一定に保っていたはずだ。
ストレスがついて回るのは、私やカメラマンと変わらないか、それ以上だろう。私も、何でもストレスのせいにせず、調教師的な生活リズムを意識して、育毛に励みたい(シャレじゃありません)。
さて、東西の金杯から始まった今年のJRA重賞は、先週の共同通信杯を終えた時点で1番人気が16連敗になった。
去年は年明け最初の重賞である中山金杯をヒシイグアス、一昨年は9戦目のアメリカジョッキークラブカップをブラストワンピース、2019年は2戦目の京都金杯をパクスアメリカーナ、2018年と17年は中山金杯をそれぞれセダブリランテスとツクバアズマオーが勝ち、早々に1番人気による重賞勝利を挙げている。
さらに5年遡ってみるとどうだろう。2016年は年明け11戦目重賞の根岸ステークスをモーニン、2015年は8戦目の東海ステークスをコパノリッキー、2014年は3戦目のシンザン記念をミッキーアイル、2013年は2戦目の京都金杯をダノンシャーク、そして2012年は6戦目の日経新春杯をトゥザグローリーが1番人気で勝っている。
過去10年を振り返ると、これだけ1番人気が勝てない年は滅多にないということがよくわかる。この流れを断ち切るのはどの馬か。
土曜日の京都牝馬ステークスで1番人気になりそうなギルデッドミラーかスカイグルーヴか。それともダイヤモンドステークスのヴェローチェオロかレクセランスあたりか。日曜日までもつれ込んだとすると、小倉大賞典のアリーヴォかヴァイスメテオール、フェブラリーステークスのカフェファラオかソダシということになるのだろうか。
今年のフェブラリーステークスは、どの馬が1番人気になるかを予想するのも難しいが、どんな結果になるか、楽しみだ。
コロナワクチンの3回目の接種券がようやく届いた。来週、大手町の自衛隊大規模接種会場でモデルナのワクチンを打ってもらうことにした。
首相官邸のサイトを見ると、全体の79パーセントがワクチンを2回接種していることがわかる。ワクチンに感染予防効果がないのなら、ワクチンを2回打った人の感染者に占める割合もそのくらいになるはずだが、実際は、ずっと少ない。早くから認められていた発症予防効果だけではなく、感染予防効果もあると見ていいのではないか。仮に、さほど感染予防効果がなかったとしても、ウイルスが体内でもっとも多くなるのは発症前後で、それはもっとも人にうつしやすい時期となるわけだから、「人にうつしづらくする効果」は間違いなくあるわけだ。
前々から、反ワクチンを主張している人は知り合いにも何人かいるのだが、先日、GIの観戦記を読んで、名文家だと思っていた競馬記者もそうだと知って驚いた。と同時に、残念に思った。
1、2回目はファイザーだったので、モデルナとの交互接種でどんな副反応が出るか。それとも何も起きないか。次回、報告したい。
島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆~走れ奇跡の子馬~』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。
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