【日本ダービーSP(4)】キーファーズ松島正昭代表「僕の夢は凱旋門賞を勝つことじゃない――“武豊”へ捧げる純真のエール」

2022年05月29日(日) 18:03 305

今週のface

▲キーファーズ松島正昭代表のインタビュー、最終回 (撮影:桂伸也)

いよいよ今週末に迫った日本ダービー。ドウデュースを所有するキーファーズ松島正昭代表の特別インタビューも、今回がいよいよ最終回です。

ラストのテーマは「松島オーナーの人生にとって“競馬”とは?」。松島オーナーの夢は「武豊騎手で凱旋門賞を勝つこと」と様々なメディアで報じられてきましたが、真意は違うのだと言います。松島オーナーが友人である武豊騎手に捧げる、心からのエールとは?

(取材・構成=不破由妃子)

エイダン・オブライエンにもクールモアにも直談判

──所有馬が初めてターフに登場してから、間もなく8年。海外にも馬を持ち、GIも制し、今週はドウデュースが優勝候補の一角としてダービーに出走します。実績も話題性もうなぎ上りといったキーファーズですが、今、松島オーナーにとって“競馬”というのは、人生においてどんな存在ですか?

松島 そうやなぁ…プレッシャー、重圧やね。勝った負けたの感情もあるし、お金のやりくりも大変やけど、それ以上に喜びもある。とにかく土日が重圧ですよ。

──人生のスパイスのような?

松島 そうですね。刺激と重圧。まぁここまでくると、重圧を感じられるのもいいもんやなと思います。なんせ今の世の中には刺激がないですもん(笑)。

 2、3頭持って楽しんでいればよかったのに、今や海外にいる馬にまで目を向けなアカンから大変やけど、競馬のおかげで楽しい重圧を味わわせてもらってますよ。

──繁殖牧場を開くこと以外に、馬主としての野望はありますか?

松島 野望ねぇ。ドウデュースのような馬にもう一度出会いたいと思いますけど、なかなかああいう馬には出会えないからね。野望といっても、僕は大金持ちじゃないから、バランスというものがあるじゃないですか。これ以上できない…みたいなところまで行ってしまったらアカンから、考えながらやってますよ。

 たとえどんなにお金があっても、夢を叶えることは絶対にできない。そこに情熱とかいろいろな思いがあって初めて夢は叶うものであって、気持ちが入ってへんお金で夢を叶えてもうれしくないしね。難しいですね。

──そんなオーナーの情熱の矛先は、やはり武豊騎手で凱旋門賞を勝つこと。

松島 あれはね、そもそもは作ったものなんです。別にマスコミにぶち上げたわけじゃないけど、そんな話をしていたら人伝に表に出てしまってね。僕の夢は凱旋門賞を勝つことじゃない。“武豊”が凱旋門賞を勝つことなんです。でも、それじゃあ記事にならんから(笑)。

 だって、自分でも馬を持っているのにおかしいでしょ? だから、「豊くんに乗ってもらって凱旋門賞を勝つのが夢です」って言うようになったんです。

──なるほど。本当は、馬主としての夢ではなく、松島オーナー個人の友人としての夢だった。

松島 そうです。最初はね、豊くんの夢のお手伝いができたらいいなって言うたんです。実際、エイダン・オブライエンにもクールモアにも、そうやって交渉したんですよ。「僕の夢は武豊が凱旋門賞を勝つことやから、僕に馬を譲ってくれ」ってね。つたない英語で、「マイドリーム、タケズ、ウイン」言うて(笑)。

今週のface

▲「つたない英語で“マイドリーム、タケズ、ウイン”言うて(笑)」 (撮影:桂伸也)

松島 昔から競馬は大好きやったけど、凱旋門賞なんて、豊くんに話を聞くまでよう知らんかったしね。まぁ実際に行ってみたらすごかったです。馬主としてはフランスしか行ったことがないけど、海外と日本の競馬はホンマに全然違いますね。まず、馬主に対するリスペクトが違う。

──日本の競馬は欧州と違って、ギャンブルとして繁栄してきた歴史がありますからね。

松島 そうなんだよね。フランスで自分の馬が走るときは、ちゃんと馬主ごとに部屋があって、バトラーもついていてね。凱旋門賞のときは、クールモアの部屋でみんなでご飯を食べながら競馬を見たんだけど、日本はそういう感じではないじゃないですか。僕も馬券は大好きやけどね。でも、もっともっと競馬のステイタスを上げていかないと。このままでは競馬後進国のままですよ。

どうしようもないことは、ドーンと構えていたほうがいい!

──今なおコロナの影響が影を落としている世の中ではありますが、こういった時代において前向きに生きるための秘訣など、オーナーの持論があれば教えてください。

松島 僕はね、あんまり何とも思ってないんです。だって世の中、いろんなことがあるじゃないですか。コロナが今世紀最大、人生最大の危機とも思わないしね。これまで仕事でも大変なことがいっぱいあったから、コロナのせいで大変やとか嘆いたりもしない。むしろ現状を受け入れて、逆手に取るくらいのつもりで利用したると思います。結局ね、心の持ち方ひとつですよ。

──強いですね。

松島 強いです、僕は。だって、コロナどころじゃない苦しいことがいっぱいあったから。もちろん、飲食や観光などはかわいそうやなと思うし、うちも飲食をいくつかやっているからわかるけど、どうしようもないもんね。どうしようもないことは、ドーンと構えていたほうがいい。競馬もそうです。ドーンと構えて一喜一憂しない。僕は感情の起伏が激しいから、若い頃は一喜一憂ばかりしとったけどね。でも、それはよくないと人生のなかで学んだんですよ。

──今日は本当にありがとうございました。最後になりますが、ドウデュースをはじめ、松島オーナーの馬たちを応援しているファンのみなさんにメッセージをお願いします。

松島 高い馬が走るとは限らないので、毎週もどかしさや重圧に押しつぶされそうになりますが(笑)、なんとか頑張って競馬を盛り上げていきたいと思っていますので、これからも応援よろしくお願いします。

(文中敬称略、了)

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