2022年08月24日(水) 12:00
今週末、日本の競馬ファンの目は、ステイフーリッシュ(牡7、父ステイゴールド)が出走するG2ドーヴィル大賞(芝2500m)が行われるフランスに向きがちだとは思うが、同様にして絶対に見逃せないのが、27日(土曜日)に北米ニューヨーク州のサラトガ競馬場で行われる開催だ。1日に1競馬場で、5つのG1を含む6重賞が組まれているという、超豪華なプログラムなのである。
中でもメイン競走として行われるのが、“ミッドサマーダービー”の異名をとる、3歳馬による総賞金125万ドルのG1トラヴァーズS(d10F)だ。
中心視されているのは、スティーヴ・アスムッセン厩舎のエピセンター(牡3、父ノットディスタイム)である。
春は、フェアグラウンズでG2リズンスターS(d9F)、G2ルイジアナダービー(d9.5F)を連勝。G1ケンタッキーダービー(d10F)で1番人気に推されたが、ここは伏兵リッチストライク(牡3、父キーンアイス)に足をすくわれ2着に惜敗。続く2冠目のG1プリークネスS(d9.5F)も2着に終わった後、3冠目のG1ベルモントS(d12F)はスキップして、春のキャンペーンを終えていた。
7月30日にサラトガで行われたG2ジムダンディS(d9F)で2カ月ぶりに戦線に復帰すると、エピセンターはオッズ2.1倍の1番人気に応えて、ここをきっちりと勝って3度目の重賞制覇。春は無冠に終わったものの、能力的には世代屈指の存在で、ここで待望のG1初制覇を目指している。
G2ジムダンディSで、オッズ2.85倍という差のない2番人気に推されていたのが、チャド・ブラウン厩舎のアーリーヴォーティング(牡3、父ガンランナー)だった。
今季初戦となったアケダクトのG3ウイザーズS(d9F)を制し、デビューから2連勝で重賞初制覇を達成したのがアーリーヴォーティングだ。続くG2ウッドッモリアルS(d9F)で、後にG1ベルモントS(d12F)を制するモードニゴール(牡3、父アンクルモー)の2着に敗れて連勝が止まったが、G1ケンタッキーダービーをスキップして臨んだG1プリークネスS(d9.5F)を制し、G1初制覇を果した。
G2ジムダンディSでも持ち前の先行力を見せて馬群を引っ張った同馬だったが、2カ月の休み明けが響いたか、直線で失速して4着に敗退。デビュー5戦目にして初めて、連対を外している。
そのG2ジムダンディSでエピセンターから1.1/2馬身差の2着に入ったのが、アーリーヴォーティングと同じくチャド・ブラウンが管理するゼンダン(牡3、父アップスタート)だった。
春は、G2リズンスターSでエピセンターの3着になった後、キーンランドのG1ブルーグラスS(d9F)を制しG1で重賞初制覇を果したのがゼンダンだ。続くG1ケンタッッキーダービーはリッチストライクの3着に終わると、春の残る2冠はスキップ。3カ月ぶりの出走だったG2ジムダンディSでは、2番手追走から一旦は先頭に立った後、エピセンターに差されて2着となっている。
7月23日にモンマスパークで行われたG1ハスケルS(d9F)を勝っての参戦となるのが、ブラッド・コックス厩舎のサイバーナイフ(牡3、父ガンランナー)だ。
春は、オークローンパークのG1アーカンソーダービー(d9F)を制し、G1で重賞初制覇を果たしたのがサイバーナイフだ。続くG1ケンタッキーダービーは、18着に大敗。3冠の残り2つは回避し、ベルモントSの翌日にチャーチルダウンズで行われたG3マットウィンS(d8.5F)に回ってここで2度目の重賞制覇。G1ハスケルSでは、東海岸から遠征してきたテイバ(牡3、父ガンランナー)との頭差の接戦を制し、2度目のG1制覇を果している。
G1ケンタッキーダービーを、オッズ81.8倍の最低人気で制したのが、エリック・リード厩舎のリッチストライク(牡3、父キーンアイス)だ。
2歳9月に、現在の馬主に3万ドルでクレイミングされたという、異色の経歴を持つ同馬。ケンタッキーダービーはギリギリまで除外の対象で、最終投票の締め切り直前に回避馬が出て出走枠に滑り込んでいる。半マイル通過が45秒36という超ハイペースとなった中、18番手追走から一気に末脚に賭けるというのは、人気がなかったからこそ出来た競馬だったと、その勝利をフロック視する声も聞かれなくはない。G1プリークネスSを回避して臨んだG1ベルモントSは6着に敗退。ここはそれ以来、2カ月半ぶりの出走となるが、リッチストライクにとっては試金石となる一戦だろう。
春の3冠は不出走だった組では、7月29日にサラトガで行われたLRカーリンS(d10F)を4.3/4馬身差で制しての参戦となる、チャド・ブラウン厩舎のアルトリウス(牡3、父アロゲート)が、上がり馬として注目されている。
ジャドモントによる自家生産馬で、母はG1マディソンS(d7F)など2つのG1を制したポーラスシルヴァーライニングという良血馬がアルトリウスだ。トラヴァーズSは、父アロゲートが重賞初挑戦にしてぶっちぎりの圧勝を演じたレースである。
なお、7月2日にベルモントパークで行われたG3ドワイヤーS(d8F)を23馬身差で制した後、ここを目標に調整されていたトッド・プレッチャー厩舎のチャージイット(牡3、父タピット)は、蹄の炎症のため回避が決定。回復が早ければ、9月24日にパークスレーシングで行われるG1ペンシルベニアダービー(d9F)に向かう予定だ。 11月5日にキーンランドで行われるG1BCクラシック(d10F)で、3歳世代の旗頭を務めるのがどの馬かを見極める上でも、トラヴァーズSは見逃せない1戦となりそうだ。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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