【角田大河騎手】梅干しを力に変えて! ウメムスビとルーキーイヤーに挑むGI舞台

2022年12月11日(日) 18:02 61

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▲ウメムスビとGIの舞台へ挑む角田大河騎手(撮影:大恵陽子)

今年3月にデビューし、初騎乗初勝利を挙げた角田大河騎手。父はダービージョッキー・角田晃一調教師、兄は大和騎手と競馬一家に育ったルーキーは、デビュー日に早速2勝目も挙げて早くから頭角を現しました。

そんな彼に巡ってきたGI初騎乗のチャンスが朝日杯FSでのウメムスビ。勝負服が梅干しおにぎりを彷彿とさせるデザインもまた人気の馬です。「この馬と一番コンタクトを取っているジョッキーは僕」と自信を持って挑む大舞台への思いを伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「調教から馬の後ろに入れる練習をしていた」ゆえの収穫

──ウメムスビにはデビュー前の追い切りから乗っていて、坂路で好タイムを出していました。どんな印象でしたか?

角田 最初に見た時は小さいな、と思ったんですけど、乗ってみたらぎゅっと締まったような筋肉がありました。「こんなに動く子なんだ」と思いましたし、小柄なわりにスプリントを走る能力があるのかな、と感じました。

──デビュー戦からスタートが良かったですね。

角田 センスが良かったですね。2着に負けはしましたけど、全然悲観するような競馬ではなくて、いいポテンシャルを持っていると感じました。

──2戦目は小倉芝1200m。開幕週ではありましたが、前半600mが32.5秒と速いペースでした。

角田 ペースが速かったんですけど、開幕週ということもあって、減量も生かした中で最後まで残ってくれたかなと思います。道中は「速いなあ」と思いながらも、ウメムスビに任せてついて行っていて、あんまり上手くは乗れなかったレースですけど、なかなかこのペースで残れる馬はいないですから、しっかりウメムスビが応えてくれました。ホント、競馬のセンスがよくて、賢い子だなと思います。

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▲2戦目で初勝利!(C)netkeiba.com

──続くフェニックス賞では初めて逃げましたけど、この馬の戦法としてはどうですか?

角田 結果的に逃げて失敗しました。ゲートが良すぎるのが裏目に出てしまって、枠も自分では上手くできない枠でした。ペースを落としたいって気持ちがずっと先走っていて、ウメムスビも結構力んで折り合いを欠いてしまいました。一番下手くそに乗ってしまったレースで、逃げるレースはダメだな、と反省しました。

──それもあって小倉2歳Sは中団に控える競馬をしたんですか?

角田 調教の段階から馬の後ろに入れる練習をしていて、そこでスッと馬の力が抜けてくれる感覚があったので、小倉2歳Sでもそういうレースができればいいなと思っていました。ちょうどいい外枠も当たって、スタートから出たなりで行ったら、上手く馬の後ろに入ることができました。

──最終週で馬場の外を通る馬が多い中、4コーナーでは内を選びましたね。

角田 小倉2歳S当日の9レースが同じ芝1200mで、エイシンスポッターで内目から勝たせてもらいました。それで、トラックバイアス的にも内は悪くないのかな、と感じました。外枠だったので外々を回される形になりますから、もし内に行けるなら、ちょっと思い切って行ってみようかなと思いました。ウメムスビの操縦性が高いのでできたことです。結果としては残念でしたけど、収穫のあるレースでした。

──直線では一瞬、勝てるんじゃないかと思う場面もありました。

角田 僕も「おぉ!」と思いました。13頭中7着という真ん中の着順でしたけど、大きくタレたわけではないです。その後のカンナSは菅原先輩が乗って勝ったんですけど、新谷先生から「あの小倉2歳Sがなかったら、力んでいたと思う」と言っていただけて嬉しかったです。

──2番手外で前に壁がない状態でしたものね。しかしながら、自分が乗れないことへの悔しさも多少なりともあったのではないですか。

角田 悔しさは…少しはあったんですけど、僕としては小倉2歳Sは納得できるような競馬でした。その後のカンナSでは乗り替わりになることを事前に新谷先生が伝えてくださいましたし、本来なら放牧に出すところを、メンバー構成なども考えられて中山へ行ったレースだったと思います。菅原先輩はテン乗りにもかかわらず上手く乗られていましたし、これまでのことが実った感じがして、むしろ勝ったことは嬉しかったです。それに、また今回こうして再び僕にチャンスを与えてくださって、ありがたいです。

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▲悔しさは少しあったけど…勝ったことは嬉しかった!(撮影:下野雄規)

オーナーの梅干しは「疲れた時にいいですね」

──1年目にしてGI初騎乗です。決まった時はどんな気持ちでしたか?

角田 本当に乗れるんだ! と思いました。オーナーはウメムスビが個人所有の1頭目で、新谷先生も開業3年目と若い調教師で、そして新人ジョッキーの僕と、縁があると思いました。

──そういえば、細川陽介オーナー(馬主名義は株式会社紀州ほそ川飼料)からは自社の梅干しをいただいたとか。

角田 はい、嬉しいです。美味しくて、疲れた時にいいですね。Twitterでは、ファンの方がオーナーのお店で「梅干を買いました」という投稿をされているのも見ました。

──さて、2022年も残りわずかとなりましたが、1年目を振り返っていかがですか。

角田 デビューの時とはほんの少しではありますけど、レースに対して余裕が持てるようになったのかな、と思います。ですけど、やることは変わらないと思いますし、今まで以上に頑張らないといけない場面もあるんじゃないかなと感じています。

──デビュー当初から新人ジョッキーらしからぬ落ち着いた印象がありましたが、現在ご自身ではどう感じていますか?

角田 誰しもが「落ち着いている僕」を見て乗せようと思ってくださるわけではないですし、新人騎手なので一生懸命がむしゃらに乗ってほしいという場合もあると思います。デビュー時から大事なことの一つとして「誰にでも信頼される」ということを掲げていますから、そういった面ではまだ足りないのかな、と感じます。デビューした時はそう思っていなかったんですけど、月日が経つにつれて、自分を客観的に見てそう思うようになってきました。だからといってガラッと大きく変わることはないんですけど、変えていかないといけない場面もあるのかな、と思っています。

──さて、ウメムスビはデビューしてから一貫して1200mを使われてきましたが、朝日杯FSでは1600mに延びます。その点も含めて意気込みを聞かせてください。

角田 ウメムスビとこれまで一番コンタクトを取っているジョッキーは僕ですから、自信を持って臨みたいと思っています。2週前の火曜日に乗って、今まで通り元気いっぱいだと感じました。1600mに距離が延びて、折り合いが一番の課題になるので、そこだけ気を付けて乗りたいと思います。僕自身は、GIに乗せていただけること自体が嬉しいことなので、いつも通り平常心で納得する競馬をして、なおかつその中でいい結果が出せればいいなと思っています。

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▲ウメムスビと、自信を持って臨みたい(C)netkeiba.com

(文中敬称略)

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