2023年05月31日(水) 12:00 12
今週金曜日(6月2日)に英国のエプソムダウンズで行われる古馬のG1コロネーションC(芝12F6y)を展望したい。
コロネーション(戴冠式)が行われた年に施行されることで、例年以上に注目されているのが、今年のこの一戦だ。5月27日に設けられていた登録ステージで、9頭が登録を行なっている。
ブックメーカー各社が2.5倍~3.0倍のオッズを掲げて1番人気に推しているのが、愛国調教馬のウエストオーバー(牡4、父フランケル)だ。
海外競馬ファンならば先刻ご承知のように、昨年のG1愛ダービー(芝12F)を7馬身差でぶっちぎった馬である。しかし、続いて出走したG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)では、古馬の壁に跳ね返されて5着に敗退。秋のG1凱旋門賞(芝2400m)も6着に終わり、竜頭蛇尾の成績で3歳シーズンを終えた。
同馬の今季初戦となったのが、3月25日にメイダンで行われたG1ドバイシーマクラシック(芝2410m)で、ここでは「今、世界一強い」と言われるイクイノックスから3.1/2馬身差の2着に好走。今季の欧州古馬12F路線を担う1頭として、大きな期待を寄せられている。
大手のコーラルやラドブロークスがウエストオーバーと横並びの1番人気に、他社は3.25倍前後のオッズで僅差の2番人気としているのが、牝馬のエミリーアップジョン(牝4、父シーザスターズ)である。
デビューから無敗の3連勝で臨んだ昨年のG1英オークス(芝12F6y)で、チューズデーの短頭差2着に敗れて初黒星を喫した同馬。その後、ウエストオーバー同様にG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSに駒を進め、こちらも6着大敗という屈辱を味わっている。
そこから3カ月をかけて立て直しが図られ、戦線復帰を果たしたのが10月のG1英チャンピオンズフィリーズ&メアズS(芝11F211y)で、エミリーアップジョンはここを3馬身差で快勝してG1初制覇を果たした。
同馬も当初は、3月のドバイシーマクラシックが今季の始動戦と言われていたが、仕上がり途上との判断からドバイを回避。ここが今季初戦となる。
さらに、4倍~5倍のオッズで3番人気を争っているのが、ハリケーンレーン(牡5、父フランケル)と、ポイントロンズデール(牡4、父オーストラリア)の2頭だ。
3歳だった21年、G1愛ダービー(芝12F)、G1パリ大賞(芝2400m)、G1英セントレジャー(芝14F115y)という3つのG1を制したのがハリケーンレーンだ。ところが、4歳となった昨季、緒戦となったロイヤルアスコットのG2ハードウイックS(芝11F211y)で圧倒的1番人気を裏切り3着に敗れると、続いて出走したG1サンクルー大賞(芝2400m)でも精彩を欠き8着に大敗。立て直しを図るべく、シーズン後半は全休することになった。
5歳を迎えた今季の初戦となったのが、4月22日にニューベリーで行われたG3ジョンポーターS(芝12F)だったが、ここでもハリケーンレーンは7頭立ての7着に敗退。ファンの間からは、この馬はもう「終わってしまった」という声が聞かれた。
そのハリケーンレーンが中1週で出走してきたのが、5月5日にニューマーケットで行われたG2ジョッキークラブS(芝12F)だった。同馬にとっては背水の陣だったここで、かつてのハリケーンレーンが甦った。同馬はここを6馬身差で快勝。1年8カ月ぶりの重賞制覇をモノにしたのである。
ハリケーンレーン同様、今季に入って「復活」を果たしたのが、3番人気を争うもう1頭のポイントロンズデールだ。
2歳だった21年、5戦してG2フューチュリティS(芝7F)、G3タイロスS(芝7F)の2重賞を制した他、G1ヴィンセントオブライエンナショナルS(芝7F)で2着に入り、22年のクラシック候補の1頭としておおいに期待されたのがポイントロンズデールだ。
ところが、3歳初戦となったG1英2000ギニー(芝8F)で10着に大敗。レース中に負った故障が尾を引き、以降は3歳シーズン終了まで、競馬場でその姿を見ることはなかった。
1年ぶりの復帰戦となったのが、4月16日にカラで行われたG3アレッジドS(芝10F)で、久々、初距離、極悪馬場など様々な困難を克服して、ポイントロンズデールはここを1.1/2馬身差で快勝。さらに、5月12日にチェスターで行われたG2ハクスリーS(芝10F70y)も制し、2連勝を飾った。
シーズン序盤のカードとしては、実に興味深い顔合わせとなったコロネーションCの模様は、同日に開催されるG1英オークス(芝12F6y)ともども、6月3日にグリーンチャンネルで放送される「ALL IN LINE~世界の競馬~ 英国ダービー生中継(夜9時~10時)」の中で、録画放映される予定だ。エプソムダウンズを舞台としたG1の数々を、皆様もぜひご堪能いただきたい。
合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。