アプリ限定 2024年09月23日(月) 18:01
障害ジョッキーの白浜雄造騎手の奥様が、一昨年の夏の落馬から復帰を目指して奮闘する夫と家族のリアルな姿を描く連載コラム。
周囲からの薦めで、箱番(障害練習の手伝い)やウォーキングを始めた夫。やる気に満ちたリハビリは順調かと思いきや、1カ月が経ち行くことを渋るようになってしまいました。
そんな姿を見た鬼嫁は「自分の言葉に責任を持とうよ」とはっきり伝えます。険しい道のりが続く中、トレセンの方々から雄造騎手の“顔が暗い”という報告も。今度は気分転換のために、家族旅行へ連れ出します──。
朝晩のウォーキングと箱番、乗馬苑での作業がルーティンになり、夫は目に見えて体力がつき、ふら付いていた足取りもずいぶんしっかりとしたものに変化していきました。
順調に進んでいるリハビリに安心したのも束の間──1カ月ほど経過した頃から、「目がかすむ。ぼやけている。だからふら付く。競走馬のそばに行くのは危ないと思う。競走馬に迷惑は絶対に掛けられないから」と言い出し、箱番とウォーキングに行き渋るようになりました。
病院に行くよう勧めたのですが、行動に移さない夫を見るにつけ、「仮病なんじゃないか?」と疑い始めた私。脳に後遺症がない状態であれば、箱番やウォーキングはリハビリの超初期の段階で、復帰するためには、まだまだたくさんできるようにならなければいけないことがあると理解できたはずです。
ですが、順序立てて考えたり、状況を正しく理解することが難しい夫は、日々のリハビリをこなしさえすれば、復帰ができると思っていたようでした。
騎手にケガは付き物ですが、たとえ骨折したとしても、みなさん本当に復帰が早い。長くても3カ月くらいで復帰する方が多い印象です。夫もそんな感覚があったからなのか、1カ月間、箱番とウォーキングを続けても、競走馬に乗れない、復帰に近づいているわけでもない…という状況に嫌気がさしている様子でした。
夫の言う「危険」は、かなりの確率で仮病だろうと私は思いましたが、本人が「危険」と言っている以上、無理やり行かせることはできません。私は様子を見ることにしました。
以来毎日、「目が…」と言い、出掛けようとしない夫。自らの意志で行くことを決め、そんな夫のために騎手クラブの局長や栗田さん、JRAの担当職員さんなど、いろいろな方が動いて気持ちに寄り添ってくださった結果、実現した箱番とウォーキングのリハビリなのに…。
そして私も、諸々の調整をするため、自分の時間を割きました。たくさんの人のお世話になっていながら、わずか1カ月程度で行かないと言い出す。そして、その尻拭いをするのも私です。自分の言葉に責任を持てない様子に本当にがっかりし、とても腹が立ちました。
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白浜由紀子
1981年9月9日生まれ。2015年に障害騎手の白浜雄造と結婚。1男1女をもうける。結婚前は四位洋文調教師や福永祐一調教師(両名、当時騎手)らが所属していたマネージメント会社にてマネージャーを務め、TV番組収録やイベント等、様々な現場で騎手をサポート。福永調教師の引退までの16年間はバレット業務も兼任。福永厩舎開業後は経理兼秘書業務を担当予定。現在はオンラインサロン「福永祐一 競走馬研究所」の運営スタッフを務める傍らフリーランスとして活動中。新たな目標のアイシングクッキー講師としても活動すべく準備中。(旧姓は坪田、また戸籍上の表記は幸子)
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