【ハイセイコー物語】中央へ /第9話

2025年12月02日(火) 12:00

■前回まで

新冠の武田牧場で生まれ、大井の伊藤正美厩舎に入厩したハイセイコーは、3歳だった1972年7月のデビュー戦から11月の青雲賞まで無傷の6連勝を遂げる。そのすべてが圧勝だった。4歳になった1973年、中央にトレードされることが決まった。(馬齢は旧馬齢)

 競馬好きの作家で、「馬家(バカ)」を自称する石川喬司は、ゴールドイーグルに10馬身差をつけてレコード勝ちしたゴールドジュニアーを見てハイセイコーに惚れ込んだ。これがデビュー4戦目だった。

 ゴールドイーグルは古馬になってから中央に移籍し、大阪杯やマイラーズCなどを勝つ強豪だ。

 石川は、つづく5戦目の白菊特別を、競馬評論家の大川慶次郎とともに観戦した。

「元返しでしょうが、ここに来た証拠として単勝馬券を買いましょう」という石川の提案に大川が乗った。

「いいね。じゃあ、記念にそれにサインをして交換しよう」

 ハイセイコーが7馬身差で勝利をおさめ、それらは当たり馬券となったのだが、もちろん、2人とも換金しなかった。

「こいつは中央に来ても絶対に活躍しますよ」

 石川が興奮して口にした言葉が、やがて現実のものになろうとしていた──。

 ハイセイコーは多くのメディアで取り上げられ、・・・

続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

登録済みの方はこちらからログイン

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

島田明宏

作家。1964年札幌生まれ。「Number」「優駿」「うまレター」ほかに寄稿。著書に『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ブリーダーズ・ロマン』。「優駿」に実録小説「一代の女傑 日本初の女性オーナーブリーダー・沖崎エイ物語」を連載中。

関連サイト:島田明宏Web事務所

関連情報

新着コラム

コラムを探す