2025年12月03日(水) 12:00
英国における馬の街ニューマーケット競馬場で、11月25日から29日まで「タタソールズ・ディセンバー・フォール・セール」が行われた。
総売り上げは前年比12.9%ダウンの3789万3400ギニー、平均価格は前年比13.3%ダウンの5万8659ギニーという市況となった。
これだけ見ると、マーケットの大幅な縮小に見えるが、昨年のこのセールが記録的大盛況で、今年の数字を一昨年と比較すると、総売り上げが27.0%アップで、平均価格が31.5%アップとなる。
また、今年の中間価格3万0500ギニーは、大盛況だった前年比で1.7%のアップで、このセール歴代最高をマークしたから、マーケットとしては底堅い需要があったと言えよう。主取り率は21.7%で、前年の21.8%とほぼ同等の数字となっている。
最高価格馬は、28日(金曜日)に上場番号882番として登場した、父フランケルの牡馬だった。ドーヴィル競馬場のG3リューレイ賞(芝1600m)勝ち馬クラウディドーンの3番仔となり、近親にG1ムーランドロンシャン賞(芝1600m)勝ち馬グレイリラや、仏国3歳牝馬二冠馬ゴールデンライラックらが出ているファミリーを背景に持つ。
激しいビッドの応酬の後、最後はクールモアとジャドモントという、欧州の超名門同士の一騎打ちになった末、クールモアのM.V.マグナー氏が115万ギニー(約2億5518万円)で購買に成功した。この価格は、ヨーロッパの当歳セールで購買された牡馬としては、歴代3位となる高額だった。購買後にマグナー氏は、同馬がエイダン・オブライエン厩舎に行くことになるだろうとコメントしている。
高額馬の上位3頭は、いずれもフランケル産駒で、マーケットを牽引したのは明らかにフランケルだった。
一方、若手種牡馬でマーケットの評判が高かったのが、ネイティヴトレイル(父オアシスドリーム)、シャルディーン(父フランケル)だった。
現役時代はゴドルフィンの所有馬として、G1ヴィンセントオブライエンナショナルS(芝7F)、G1デューハーストS(芝7F)、G1愛2000ギニー(芝8F)を制したのがネイティヴトレイルだ。24年に愛国のキルダンガンスタッドで種牡馬入りし、初年度の種付け料は1万7500ユーロだった。
その初年度産駒の1頭で、上場番号747番として登場したのが、母グレイミステールの牡馬だった。今年10月のG1デューハーストS勝ち馬で、来春の3歳クラシックの有力候補となっているギワンの半弟にあたる同馬は、50万ギニーというセッション6番目の高値でエース・スタッドが購買した。
一方、現役時代はジャドモントの所有馬として、G1デューハーストS・G1英2000ギニー(芝8F)を制したのがシャルディーンだ。24年に英国のバンステッドマナースタッドで種牡馬入り。初年度の種付け料は、2万5千ポンドだった。
タタソールズ・ディセンバー・フォール・セールには、27頭のシャルディーン初年度産駒が登場。このうち25頭が平均価格10万7440ギニーと、種付け料の4倍以上の価格で購買された。
日本人関係者によると見られる購買は、13頭が確認されている。
中でも最も高額だったのは、上場番号809番として登場した、父スーネーション・母ダンシングレベルの牡馬。香港でG1香港スチュワーズC(芝1600m)やG1クイーンズシルヴァージュビリーC(芝1400m)などを制したワイククの甥にあたる同馬は、23万ギニーで購買されている。
スキャットダディの直仔で、2歳G1フェニックスS(芝6F)を制しているスーネーションの産駒は、日本人によると見られる購買馬の中に、もう1頭いる。上場番号741番として上場された、母レストレスエンデヴァーの牡馬で、3連覇を果たしたG1モーリスドゲスト賞(芝1300m)を含めて6つのG1を制したムーンライトクラウドの近親にあたる同馬は、6万5千ギニーで購買されている。
ニューマーケット競馬場では今週、タタソールズ・ディセンバー・メア・セール(牝馬セッション)が行われている。ここには、当歳セッションよりは遥かに多くの日本人購買者が参加しており、どのような牝馬が日本にやってくるか、おおいに楽しみである。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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