条件好転で完璧に乗ったアンジュデジール/スパーキングLC回顧(斎藤修)

2017年07月07日(金) 18:00

条件好転のアンジュデジールが直線で見事に抜け出し重賞初制覇(撮影:高橋正和)

 単勝1.4倍の断然人気支持されたホワイトフーガが4着に沈むという波乱の結果。まずは上位入線馬のレースのポイントを挙げてみる。

アンジュデジールは、距離短縮に斤量にも恵まれ、川崎1600mのコースを完璧に乗った。

ララベルホワイトフーガを負かしに行ってほぼ完璧なレースができたものの、勝ち馬に出し抜けを食らった。

タイニーダンサーは57kgでもきっちり自分のレースをした結果が3着。

ホワイトフーガは能力を発揮できず。

 以上、おしまい……では回顧にならないので、ひとつひとつ詳しく見ていく。

 トーコーヴィーナスは最内枠に入って当然のようにハナを主張し、ララベルが2番手というのは予想されたとおりの展開。アンジュデジールも互角のスタートから2番手の一線だったが、ララベルが譲らない構えだったため内目の好位4番手となった。ペースが極端に速かったり遅かったりしなければ、これは川崎コースでは絶好の位置取り。

 3コーナーからホワイトフーガが仕掛けて外から進出し、ララベルは当然ホワイトフーガを負かさないことには勝てないので、ハナを譲るまいと呼応して仕掛け、当然馬体を併せに行った。ここで追い出しを一呼吸待ったのがアンジュデジール。そのタイミングで、逃げていたトーコーヴィーナスが勢いをなくし、ホワイトフーガに併せに行ったララベルとの間が1頭ぶんだけ空いた。アンジュデジールは、4コーナーでその一瞬を突いて抜け出した。

 関東オークスからの距離短縮、そして3歳馬ゆえの52kgはかなりの条件好転。そして難しい川崎の4コーナーで内を突くスペースがあった。レースを見ていて思わずこのシーンで、「あっ、アンジュデジールにやられた」と声を出してしまった。ただ、トーコーヴィーナスに勢いがあって直線まで粘っていれば、アンジュデジールは3頭の外に持ち出さねばならず、そうなればララベルに粘られていたかもしれない。ただそのあたりの他馬の手ごたえは鞍上の横山典弘騎手がしっかりと見ていたのだろう。

 ララベルは、対ホワイトフーガということでは完璧なレースをした。あのパターンに持ち込んで、直線での追い比べに負ければ、それは単に力負けだったということ。ただ今回、ホワイトフーガとの勝負には勝ったが、相手は別にいたというだけ。あらためてダートグレードを勝てる能力は示した。陣営にとってはまことに悔しい敗戦だっただろう。

 タイニーダンサーは57kgを背負っていることもあって無理せず7番手から。直線でもしっかり脚を使い、今回も自分の競馬はした。ホワイトフーガが意外な凡走だったぶん、3着に食い込んだ。

 ホワイトフーガも4コーナーまでは理想のレース運び。内枠に入ったため、一旦下げて外に持ち出すというのも、おそらく想定していたのだろう。スタート後の直線では先頭からやや差はあったが、無理することなく前との差を詰め、向正面ではそれほど差のない5番手。力んで走っているような場面もあったが、この馬にしてみれば許容範囲内で折り合った。きちんとペースをつくる逃げ馬がいて、川崎のマイル戦はやはりこの馬に合っている。普通なら直線で突き抜けるパターンだが、まったく伸びず。敗因は、さきたま杯で牡馬と厳しいレースをした反動か、ノド鳴りの症状が出たか、そのあたりではないだろうか。おそらく58kgが敗因ではなく、とにかく能力が発揮できなかった。

 トーコーヴィーナスは、このメンバー相手に前半のペースもやや厳しいものとなって、5着はまずまずの好走。グランダム・ジャパンでは、一昨年の3歳シーズン、そして昨年の古馬シーズンに続いて、3年連続の女王に向け、きっちり5ポイントを稼いだ。

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