トレセンには“職人”とか“腕利き”と称される方が何人かいます。馬を創るのは人。コンマ何秒の世界を争う世界です。ガラスの脚と呼ばれる競走馬の心身は、ほんのちょっとした匙加減で爆発もするし凡庸に終わったりもします。職人や腕利きと呼ばれる方々は、その馬の持っている能力を引き出すのが上手い方々です。
そして、その職人さんたちの中でも、
ディアドラを担当する込山助手は職人中の職人。馬を仕上げる時の込山助手はいつも冷静。冷静に愛馬を少しでも高いポテンシャルへ持って行くために目の前の欲に走らず、生涯に渡るような長期の目標と、目の前のレースのような短期の目標に向けて、きっちり仕上げます。
さらにいうと、込山助手の話は評価が実に的確なんです。職人さんの中には腕はあるけどお話は苦手という方も多いのですが、込山助手のお話はいつも冷静で全体の伸びしろに対して現時点のレベルを評価し、かつそのレベルの中での状態がどうか、という話を教えてくれるのです。
その込山助手の
エリザベス女王杯での
ディアドラの評価は「
秋華賞の時も仕上がっていたので、いい意味で高いレベルでの平行線」でした。この評価は
秋華賞優勝の翌日に聞いた話と全く一緒。「想定どおり、ここまで来ている」とのことでめっちゃワクワクしています。
「心身ともに相当タフ。まだ全体的なレベルアップはあるとは思うけど、現時点でも一定レベルまで完成している」という
ディアドラ。それなら古馬にチャレンジする立場の今回こそが狙いごろ、と思うのは私だけではないはずです。
さて、話は変わって。日曜日は京都5レース・芝1800m戦で
シーザリオの仔・
シーリアがデビューしますね。馬体は約460キロとのこと。
そしてこの娘さん、上の
エピファネイアや
リオンディーズと比べるとタイプが違うそうです。
「お兄ちゃんたちはガンガンハミを持っていくタイプでしたが、それとは違って
シーリアは乗ってて素直過ぎるというか。
リオンディーズなんてデビュー前はゲートが開いたらどこへ飛んでいくか分からないようなところがあったのに、
シーリアは上に比べたら操縦性が良すぎて物足りなさを感じてしまうほどです」(辻野助手)
操縦性がいいというとプラスのイメージを持つ方も多いと思いますが、血統によってはガツンと来る部分が表に出たほうが競馬で結果を出せたりするものです。
「上からは“どこでスイッチが入るか分からない血統”という印象がありますね。動かそうと思えば動けるんですけどね」
ちなみに、騎乗予定のクリスチャン・デムーロ騎手は調教で跨った時に『まだ目覚めていない』と評価していたそうですよ。そういう話を聞くと、目覚めるのはまだ先なのかな?と思いつつ、やはり競馬場でゲートが開いた瞬間に“目覚めて”しまうことを期待してしまうのであります。
(取材・写真:花岡貴子)
2017/11/8 20:56
ディアドラがまた上がり最速でくるイメージができている