今週もまた競馬史が書き換えられた。
吉田隼人が騎乗する1番人気の
ソダシが第72回
阪神ジュベナイルフィリーズを制覇。史上初の白毛馬によるGI制覇をなし遂げた。
ゲートが開いた。大外18番枠から出た
武豊の
メイケイエールが最後方になった。1400mでも掛かるこの馬を武がどう乗って折り合いをつけるかが注目されていたが、ゆっくりと出して、他馬と並走しないようにする、というのが、武の出した答えだった。31年前の
桜花賞で、武は同じ大外18番枠を引いた
シャダイカグラを今回同様ゆっくりとスタートさせ、他馬を行かせて内に入った。ゲート直後にコーナーがあった当時の阪神芝1600mで「意図的な出遅れ」により、勝利をもぎ取ったのだ。
一方、
ソダシは好スタートを切り、好位4、5番手の馬群のなかで脚を溜めた。
「今日の前半の競馬を見ていて、このくらいの位置で前に壁をつくりたいと思っていました」と言う吉田が狙っていたとおりの形になった。
ソダシは抜群の手応えのまま3、4コーナーを回り、直線へ。
一度は、前の
エイシンヒテンの外に行こうとしたが、内に切り替えてスパートをかける。
「最後は馬場が悪かったせいか、思ったより弾けてくれませんでした」
吉田がそう話したように、なかなかエンジンが全開にはならなかった。
そのとき、外から
メイケイエールが凄まじい脚で伸びてきた。内の
ソダシらをまとめて呑み込みそうな勢いだ。
31年前の伝説がここで蘇るのか――と思われたが、ラスト200m付近から、
ソダシが驚異的な二の脚で盛り返す。
さらに
ソダシの内から
サトノレイナスが鋭く伸びてきた。
サトノレイナスが一気に突き抜けるかに見え、実際、
ソダシの前に出たのだが、そこから
ソダシは差し返し、最後の1完歩でハナ差だけ前に出てゴールを駆け抜けた。
「馬に助けられました。感謝です。人馬の信頼関係を築いていきたいです」
そう振り返った吉田は、直線で少しでも馬場のいい外に出しながら追い、名勝負で頂点に立った。華やかな白毛伝説は、これからもつづく。
(文:島田明宏)
2020/12/13 17:20
まるで漫画みたいな二の脚と接戦勝ち。白毛の話題だけでない強さ。
鞍上・吉田隼人というのもファンになってしまう魅力の一つだし、このまま一緒に戦い続け、シルフィードと森川駿。マキバオーと山本菅助みたいなコンビになってほしいです。