人気が割れていたとはいえ、上位3頭が拮抗してのもので、それにしてもその3頭が揃って馬券圏内を外すという、近年まれに見る波乱の
帝王賞となった。
その予兆はスタートからあった。このメンバーならすんなりハナと2番手と思われた
カジノフォンテン、
ダノンファラオの行きっぷりがまったく悪い。結果的にこの2頭が前を取ったのだが、スタートして200m近くまで2頭ともがおっつけて行っている。直後の
オーヴェルニュ、
クリンチャー、
テーオーケインズらはほとんど馬なりのまま好位を取れた。中でも2頭より内枠だった
テーオーケインズはスタートもよく、軽く仕掛ければハナに行ってしまうのではという勢いだった。
600m通過35秒8、1000m通過60秒8は、この日の湿った時計の出やすい馬場とメンバーのレベルを考えればやや速めではあるもののオーバーペースではない。
カジノフォンテンが逃げて、2番手
ダノンファラオという展開は
川崎記念と同じだが、そのときは
カジノフォンテンが楽に単騎で行けたのに対して、今回は
ダノンファラオがクビ~半馬身ほどの差でぴたりとつけた。ハロンごとのラップは12秒台から一度も落ちることがなく、道中でまったく息の入らない流れは先行2頭にはいかにも厳しかった。
ダノンファラオは3コーナー過ぎから追い通しとなり、
カジノフォンテンは先頭で直線を向いたもののまったく反応がなく、9、10着に沈んでしまった。
そして直線、ラチ沿いからあっという間に突き抜けたのが
テーオーケインズだった。抜群のスタートから控え、向正面では先頭から4~5馬身ほどのところを追走。ペース的にはこのあたりが楽だったと思われる。それにしても1000m=60秒8というペースで流れて、レースの上り3Fが37秒3のところ、36秒8で上っての勝ちタイム2分2秒7は、掛け値なく素晴らしい。仮に有力3頭がベストパフォーマンスを発揮していたとしても、これを負かすのは難しかったのではないか。
テーオーケインズは、重賞初挑戦となった昨年末の
東京大賞典が6着。その着順からあまり目立つことはなかったが、スローに流れての直線瞬発力勝負で、勝った
オメガパフュームとは0秒2差だった。年明け、不良馬場の
名古屋城S、重馬場の
アンタレスSを、ともに直線後続を突き放しての完勝。そして今回も重馬場と、馬場状態も向いた可能性もあるが、この3連勝で4歳馬が急成長を遂げた。
9歳の
ノンコノユメが大健闘といえる2着。昨年も地元重賞で2着が2度あったが、ダート
グレードでは一昨年の
東京大賞典2着以来の好走。前が競り合っての直線末脚勝負は全盛時の走りを見るようだった。大井への転入2戦目だった
サンタアニタトロフィーでも4コーナーで最内を突いて直線抜け出したが、そのレースを思い起こさせる
真島大輔騎手の好騎乗。今回、直線では外に持ち出されて伸びた。気性難から4歳時に去勢されたが、それが結果的に息の長い活躍につながっているのかもしれない。
1、2着馬に共通しているのは、3~4コーナーでラチ沿いを回ってきたこと。前日から降ったり止んだりの梅雨のこの時期らしい天候で湿った重馬場は、この日前半から前残り傾向。逃げて粘った馬たちはほとんどラチ沿いを通っていた。この2頭は逃げて粘ったわけではないが、ラチ沿いの止まらない馬場が少なからず味方したと思われる。
一方で、大外枠から終始、外々を通ってきた
クリンチャーが3着。直線でも外から単独2番手に抜けたが、最後は外に切り替えた
ノンコノユメにクビ差とらえられた。芝を使われてきたこの馬に、タイムの出やすい締まったダートは向いていたかもしれない。
ミューチャリーは、4コーナーで
ノンコノユメと同じような位置からじりじりと伸びて4着。前走
大井記念では、早めに位置取りを上げて直線突き抜けたが、このペースではさすがに早め進出というわけにはいかない。それにしてもGI/JpnI挑戦は2歳時からこれで10度目。
ジャパンダートダービーでの3着が最高だが、掲示板内はじつに6回。GI/JpnIはともかく、メンバーの軽いダート
グレードなら勝てるだろうが、それには他地区への遠征や小回りコースへの対応がカギとなりそうだ。
4コーナーで
ミューチャリーと同じような位置にいた
オメガパフューム、
チュウワウィザードは直線で弾けることなく、5、6着。
オメガパフュームはここまで大井2000mでは7戦オール連対で注目されたが、これまで最速の走破タイムは、昨年の
JBCクラシックで
クリソベリルに2馬身半離されて2着だったときの2分3秒0。高速決着は向いていない可能性はある。
地方期待の
カジノフォンテンは、
川崎記念を勝ったあとの目標を地元の
かしわ記念としていた。仕上がり八分で臨んだ
京成盃グランドマイラーズを勝って、
かしわ記念も勝ちきった。大きな目標を達成したさらにその先のここまでベストパフォーマンスを望むのは酷だったかもしれない。
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