函館名物といえば、まず頭に浮かぶのはイカだろう。ピチピチ跳ねる活イカは、口の中でかむたびに甘みが広がる。コ
ロナ後、外食自粛を続けていた記者にとって、初の夜の外食は函館のイカだった。コ
ロナ感染に気を付けての外食で、久々に気分がスカッとした。イカでスカッと。ベタではあるが、本題は
クイーンSの
イカットだ。
上村厩舎の近藤助手は「昨年、今年と北海道に来るたびにイジられます」と白い歯を浮かべる。
イカットの由来はイカとは何の関係もないインドネシアの伝統的な織物のことで、動物や幾何学模様をモチーフに魔よけ、子孫繁栄等を願い手作業で作られる。豪華な織物を織るように、近藤助手は手間を惜しまず
イカットを育ててきた。
「最初に乗らせてもらった時、フワッと雲の上を進んでいるようで、これがディープ(インパクト)産駒かと感激した。
イカットは当歳時、頸椎の骨折があった影響でセレクトセールにはかからなかったんだけど、本来ならかなりの高値がついた馬だと思うんです。先生の期待も大きい馬なので何とか結果を出してほしい」
おとなしくて手がかからないが、入厩時からカイ食いが悪く、体が小さいのが悩みの種だった。そこで3歳夏、上村調教師が北海道シリーズへの参戦を決断。これがズバリとハマった。水が合うのか、食欲が出てどんどん大きくなり、当地で未勝利を脱すると、その後、札幌の1勝クラスを3→1着と2戦で勝ち上がり。そして今夏も函館4→1着で2勝クラスを勝ち上がった。
「ディープ産駒は当初はあまりカイバを食わない牝馬が走ると聞いていたけど、噂は本当でしたね。食欲が出て体がしっかりするに従って、調教で激しい負荷をかけられるようになった。体重は(デビュー時の)440キロ台から今は470キロ前後に。このあたりがこの馬のベストだと思っています。中1週続きで使うことになるけど、馬自体の疲れはなく、感触はいいですよ」
28日の最終追い切りは鞍上が思った以上の時計が出ており、状態は絶好調だという。
「格上挑戦になりますが、函館の1800メートルはそんなに時計が速くならないと思うので、馬群の中でしっかり我慢できれば面白いと思う」
北の大地で才能を開花させた
イカットの格上撃破なるか、ひそかに注目している。
(函館の本番は週末野郎・垰野忠彦)
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