「虎ちゃん、おはよ。
ダノンベルーガ、やっぱり1週前にやり過ぎたのが良くなかったみたい。調教っていうのは難しいもんだな」
日本ダービーの翌週、いつものように美浦トレセンをぶらついていると、いつものように馬運車業者のX氏が無駄話? を振ってきた。
業界屈指の情報通の彼、早くも関係者から聞いてきたのか。でもまあ、そんなことは言われるまでもなく、堀厩舎担当記者の当方には分かっている。頂上決戦での4着とはいえ、あの走りは絶対に“ニセモノ”。なぜって
共同通信杯で後の
皐月賞馬
ジオグリフを子ども扱いしたパフォーマンスには程遠いものだったのだから…。
改めてダービー当時を振り返ると、1週前の南ウッドで6ハロン77.9-62.4-48.5-35.1-11.0秒という自動計測器導入後の“大レコード”を樹立してしまった。とんでもない走力を持ったサラブレッド。騎乗した川田も思わず? 気持ち良く走らせ過ぎてしまったのだろう。
やはりと言うべきか、その反動ゆえ、週末には追い切れずじまい。直前は南ウッド6ハロン83.7-66.5-51.6-37.6-11.4秒でお茶を濁す程度。
で、レースはというと案の定、これまでと違って勝負どころからの反応が悪く、直線でも内にモタれて本来の末脚を繰り出すことができなかった。
もっとも、そういった“事情”は数値化されない(=因果関係が明白とされない)だけに“なかったこと”で済まされてしまいがちだが、現場記者たる馬券野郎は看過しまい。
実際のところ、陣営は同じ轍を踏まないよう、今秋(
天皇賞・秋=30日、東京芝2000メートル)は慎重に段階を踏んで負荷を高めてきており、1週前はゴール前だけビシッと追われて南ウッド6ハロン79.5-63.8-49.7-35.7-11.2秒をマーク。これでも速いといえば速いが、現役トップ級なのだから“普通”の時計だ。さらに今回は週末も追い切れたように(坂路4ハロン58.9-42.5-13.6秒)反動は皆無。ダービー時と違って至って順風満帆なのである。
対して最大のラ
イバルたる
イクイノックスはノーザン
ファーム天栄から帰厩後は馬体が極端に減ってしまっており、1週前追い切りを終えた後のルメールも「
キタサンブラック産駒は3歳秋、そして4歳になって成長していく」との意味深なコメントを残した。そう、今もって速い時計を出せないように体質の弱さが残っており、初の古馬GIでの勝利は現実的には厳しかろう(3歳限定GIすら勝てなかったのだから)。
そしてまた有力馬として名を連ねている
パンサラッサ、
ジャックドール、そして
ジオグリフは12月の
香港カップが本丸のフシがあり、ここは目イチ勝負とはいくまい(とりわけ、
ジオグリフは調教時計がセーブ気味)。
ラ
イバルたちの現状を踏まえれば、順調度と勝負度合いがメンバー随一の感のある
ダノンベルーガの劇的Vがいとも簡単に成し遂げられそうな気がしてならない。
(美浦の確信野郎・虎石晃)
2022/10/26 18:13
いくらダノンベルーガを推しているからと言って、イクイノックスについて「3歳G1ですら勝てなかった」って失礼な言い方だと思います。