「日本には帰らない方がいい」評価急上昇の4年目・大久保友雅騎手 ニュージーランドで目覚めた22歳の今

スポーツ報知

2025年07月28日(月) 07:25

ニュージーランドで腕を磨いている大久保友雅騎手(本人提供)

 現実に絶望していた若者が自らの手で運命を切り開いた。ニュージーランドで腕を磨いているデビュー4年目を迎える大久保友雅騎手が7月5日に現地のテラパ競馬場で3勝の固め打ち。日本でわずか3勝しか挙げられなかった22歳は、24年から南半球で始まった先の見えない旅で生まれ変わった姿を見せている。

 6月18日に遠征28戦目で初勝利を挙げると、徐々に騎乗数もアップ。着実に勝ち星も増えてきた。「初勝利の時にいい勝ち方ができて、そこから依頼が増えました。それぞれの競馬場に合わせた乗り方もできるようになりましたし、引き出しが増えましたね。初めは言葉も通じなくて大変でしたけど、いまでは馬に乗ることが楽しいです」と充実感が漂っている。

 ここまでは試練の連続だった。渡航を決断したタイミングが2024年1月。「1か月前に決断していたら違っていたのに…」この年からニュージーランドで騎乗するためのルールが変更された。ライセンスの交付条件として、現地で最低3か月以上の調教騎乗期間に加え、英語検定「IELTS」(アイエルツ)の基準スコア(英検の準1級〜1級相当)をクリアする必要があった。

 ニュージーランド北島の北西に位置するケンブリッジに拠点を置いた大久保は、受け入れ先のトニー・パイク厩舎で騎手ライセンスを得るために、早朝4時半から11時くらいまで多い時で20頭の調教をつけて、午後は語学学校へ。その後は厩舎作業の手伝いに勤しんだ。「このままじゃダメだ」と思って日本を飛び出した若者にライセンスが交付されて、ようやく現地デビューがかなったのが12月27日だった。

 日本では通算3勝。実績もない日本の若手がすぐに乗れるほど甘くないことは自身も分かっていた。信頼を得るためにも、まずは日本からの課題でもあったアスリートとしての体づくりに神経と時間を注いだ。関係者と4人によるシェアハウス生活では、食生活はすべて自炊。昼はオートミールとプロテイン、夜は鳥のササミなど低脂肪中心のメニューで、体重は55キロから52キロにシェイプアップ。「日本食が恋しい」と思いながらも、ひたすら自分を磨くことに力を注いだ。

 すべては待望の初勝利をつかんだ5月31日が転機となった。記念すべき馬はチャーマー。「絶対勝てよ!」と騎乗前日にオファーされたパートナーだった。依頼主はこれまで一度も依頼がなかった同じケンブリッジを拠点にするベン・フット調教師。「僕の仕事ぶりなどをずっと見てくれていたんだと思います」。乗り鞍が少なくても、真剣に競馬と向き合う日本の若者をずっと見守り続けていた人間が手を差し伸べてくれた。

 一日3勝の活躍により、現地での評価は急上昇している。JRA所属の騎手であるため、免許更新などで日本に帰らなくてはいけない。「周囲からは、日本には帰らない方がいい、と言われていますし、このままいけば来シーズンは見習騎手のチャンピオンも狙えると言われているので」。いまのところ9月にはヤングジョッキーズシリーズ(YJS)など日本で騎乗するために帰国する予定。「G1を取るまでは日本に帰らない、とまでは言いませんが、そのくらいの覚悟です」。日本での自分に失望していた若者の声は、いまでは希望にあふれている。自分を見つめ直し、異国の地に飛び込んでから1年半。自力で道をこじ開けてきた22歳の未来は明るい。(中央競馬担当・牧野博光)

大久保友雅(おおくぼ・ゆうが)2003年6月1日、滋賀県生まれ。父は新谷厩舎の裕章調教助手。祖父は大久保正陽元調教師。22年3月に栗東・池添学厩舎所属でデビュー。同5月15日の中京8RでJRA初勝利(デビュー49戦目)。23年4月にフリーへ所属変更。JRA通算283戦3勝。

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