【宮下瞳騎手・引退会見3】「今は女性騎手が同等に戦えると思います」競馬の世界にも「産休があれば」

スポーツ報知

2025年11月27日(木) 22:30

現役最後の騎乗を終え、ファンに挨拶をする宮下瞳騎手(カメラ・内尾 篤嗣)

 国内の女性騎手で歴代最多の通算1382勝を挙げた宮下瞳騎手=名古屋=が11月26日、名古屋競馬場で現役最後のレースを終え、引退セレモニーが行われた。20日に令和7年度第2回調教師免許試験に合格したことがNAR(地方競馬全国協会)から発表され、12月1日付で調教師に転身する。騎乗後に引退会見が行われ、思いを語った。今回は後編。

 ―男性の多いこの業界です。騎手としてデビューした1995年当初は。

 「当初は女性に差別ではないけど、そういう面がありました。レースでは鼻差で負けたりしたら、『だから女性はダメなんだ』『すぐ乗り役を替えてくれ』と言われて、乗り替えをさせられることがすごく多かったです。今の時代だと女性騎手は恵まれているというか、(昔と違って騎手の人数が少ないため)チャンスをたくさんいただけるので。皆さん、頑張っているのですけど、もっともっと女性騎手を広げていって、もらえたらと思います」

 ―時代が変わってきたという手応えはあるか。

 「ありますね。今は女性騎手が同等に戦えると思います。JRAの女性騎手も増えてきて、活躍している姿を見ると、そう感じます」

 ―結婚、出産など女性としての人生のライフイベントがあったなかで、騎手として頑張ることの難しさは感じたか。

 「騎手なので、勝たなければ何も意味がないというか。勝ってこそ騎手であり、勝たないと認められません。悩む時期もたくさんありましたけど、私の場合は出産して子どもたちのために頑張ろうと。子どもたちの応援があるから、頑張れた自分がいました」

 ―周囲の方々との関わりについて。

 「私は周囲に支えられたからこそ、頑張ることができました。復帰してからも続けられたので感謝しています」

 ―この業界で女性が活躍していくためには。

 「一般社会だと産休が認められていますけど、競馬の世界では認められていません。産休があると、今の女性ジョッキーが出産しても戻りやすいのかなと思います。そういう体制を私がサポートして、広げていける部分があるといいなと思っています。自分が今から厩舎を持つうえで、女性厩務員さんを入れる機会を増やしたいです。女性ならではの馬との接し方、女性特有の優しさを、競馬や厩務員の仕事に生かしていけたらと思っています」

 ―高知競馬所属で出産を控える浜尚美騎手が、25日のレディスジョッキーズシリーズで名古屋競馬場に激励に来ていた。どんな話をしたか。

 「浜騎手は『私は瞳さんみたいに出産して乗りたい』という話を常々してくださっていました。『応援しています。何かサポートできることがあれば、いつでも手伝います。頑張ってください』という言葉をかけさせていただきました」

 ―調教師として、どんな仕事をしたいか。

 「人が集まるような明るい厩舎をつくって、名古屋競馬場を盛り上げていけるような強い馬づくりをしたいなと思っています」

 ―目標。思い描いていることは。

 「宇都先生のような、厩舎づくりをしたいな思っています」

 ―今後の予定について。

 「12月1日に免許が交付されますが、厩舎の整備が整っていなくて、馬を入厩させられるのは12月の終わりぐらいだと思います。1月中旬ぐらいに初出走できればいいなと思っています」

 ◆宮下 瞳(みやした・ひとみ)1977年5月31日、鹿児島市生まれ。48歳。95年10月に名古屋でデビューし、11年8月に引退。男児2人の出産を経て16年8月に現役復帰。24年春に女性騎手初の黄綬褒章を受章。25年秋に園遊会の招待を受けて出席。女性騎手で国内最多の地方通算1382勝(他に韓国で56勝)。夫は元騎手の小山信行さん。

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