名物アナウンサーの殿堂入り

2014年06月28日(土) 12:00


◆いっそのこと入場門のあたりに吉田勝彦さんの銅像を建てちゃうとか…

 今週、アメリカに野球と競馬(ハーネスレース=繋駕競走)を見に行ってきました。

 で、今回は、まず野球の話をさせていただきます。観戦したのは、現地時間23日夜にシアトルで行われたマリナーズ対レッドソックス戦。2007年に、今回と同じカードで、運よく松坂(メジャー移籍初年度)とイチローの対戦を見て以来、久々のセーフコフィールドでした。それから7年も経っているので当然と言えば当然ですが、球場とその周辺のあちこちがリニューアルされていました。

 内野スタンド1階に新設(?)されていたのが、マリナーズのホールオブフェイム(殿堂)とシアトル周辺の野球の歴史を伝えるミュージアム(博物館)。その中に、“ヴォイス・オブ・マリナーズ”と呼ばれたデーヴ・ニーハウス氏に関する展示を見つけました。

 同氏は、1977年から2010年まで、マリナーズ戦のラジオ実況に携わった名物アナウンサー。全米の実況アナにとっての殿堂入りにあたる「フォード・C・クリック賞」も受賞しています。04年にイチローがシーズン最多安打記録を塗り替えた試合も同氏が喋っていましたし、2010年11月に同氏が亡くなった翌年の11年シーズンには、マリナーズの選手が追悼のエンブレムを付けてプレーしていたので、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。

 さらに、センター後方の外野スタンドには、同氏の功績を讃えるモニュメントもしつらえられていました。放送席でスコアブックを付けながら実況している姿の銅像で、誰でもその隣に座って記念撮影できるようになっています。もちろん私も写真を撮ってもらいましたが、そこまでうやうやしく崇め奉られているニーハウス氏が、同業者としてなんともうらやましく思えてきました。

 そして同時に、ある人物のことが頭に浮かびました。そう、兵庫の吉田勝彦さんです。吉田さんのキャリアの長さがギネスブックに認められた、という話は前にも書きましたが、ニーハウス氏の展示やモニュメントを目の当たりにして、それだけじゃダメ、という思いを一層強くした次第です。

 だって、ギネスはあくまで第三者からの認定でしょう? 吉田さんほどの人なら、ニーハウス氏のように、そもそも地元の競馬場がその功績を讃えなきゃいけないはず。セーフコフィールドをまねて、園田競馬場に「兵庫県競馬殿堂」を作って殿堂入りさせるとか、いっそのこと入場門のあたりに銅像を建てちゃうとか、思い切ったことをすべきだと思うのですが。

 実際、アメリカの競馬場でそういう例を目にしたことがあります。ニューヨーク州フィンガーレイクス競馬場のゴール前にあった名物実況アナウンサー、故ロス・モートン氏のメモリアルプレートです。全米をくまなく探せば、ほかにもそういうものがあるかもしれません。園田競馬場にも、吉田さんの功績を讃える何かを作ってもらえませんか?

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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