慎重に鍛錬を重ねるウインバリアシオン

2014年11月27日(木) 18:00


 先日、神戸にある馬頭観音妙光院にて初代担当厩務員だった鈴木さんと一緒にシゲルスダチ号のお弔いを行いました。美浦の伊藤正徳厩舎でもお弔いはされたのですが、一般の方はトレセンには入れません。鈴木さんが「普通に誰でもスダチに会いにいけるように」とこちらの院を選び、わたしが細かな段取りをしました。

 このお弔いでは、全国にいるスダチのたくさんのファンの方々からたくさんの御花や御供物、御手紙をお預かりしました。スダチの好きだったにんにく味噌や、徳島産のすだちも送っていただきました。本来であれば一人一人に御礼をするべきですが、数も多くしばらく出来そうにありません。とりいそぎ、この書面にて御礼にかえさせていただければと思います。本当にありがとうございました。

トレセン密着

トレセン密着

神戸の馬頭観音妙光院

 先週、復帰した後藤騎手からも御花をいただきました。その御礼もかねて、後藤騎手とゆっくりお話をしました。

 後藤騎手は24日、復帰後3日目にカボスチャンでひさしぶりに勝ちましたね。

「3日間開催の3日目、やはり最初の開催で勝ちたかったのでとても嬉しかった。しかも、その馬の名前はカボスチャンでしょ? 改めて、スダチとの縁の深さを感じたよ」

 スダチとカボスはよく似た柑橘系の果物ですよね。スダチは徳島産、カボスは大分産。どちらもユズの近縁種で、サイズと産地は違えどまるで兄弟のような品種です。

「カボスチャンにはレースで初めてまたがったんだけど。瞬発力があって、まだまだ良くなる余地がじゅうぶんあった。先が楽しみだよ」と期待を寄せていました。

 同じ復帰でも、今回と前回とではまったく心構えが違ったそうです。

「前回は『さぁ、やるぞ!』と単純に復帰を喜んでいたんです。まさか、その先にまた怪我をするなんて考えていませんでした。でも、さすがに今回はいろんなことを考えましたね。前回もしっかり体づくりをしてから復帰したけれど、今回はさらに慎重に慎重を重ねて復帰の時期を決めました」

 昔から彼を知るわたしとしては、騎手としての復帰は嬉しいけれど無事に引退して欲しいという気持ちのほうが強いです。だから、「ごっちゃん、笑って元気に引退してね!」とお願いしました。今回、スダチとの別れはあまりにも突然でしたから…。競馬なので、命の際で凌ぎ合う戦いの場なので、いつ大きな事故に逢うか、わからないのが現実です。

 これにはさすがに後藤騎手も即答はしませんでしたが…。

「落馬事故は突然巻き込まれることもあるし、自分の馬がおかしくなることもある」

 その現実に常に向き合わなければいけない騎手という仕事は、心身ともにとてもハードなもの。とにかく、元気に、無事に。毎週、毎週、そればかりを願ってしまいます。

 もちろん、まだまだ後藤騎手には頑張ってもらいたい。だからこそ、少しでも古傷が悪さをするようなことがあったら、慎重に少し休んで欲しいな、と思います。そのほうが長くいいプレーも見れるでしょうから。今後のご活躍をお祈りしています。

 金鯱賞を目指すウインバリアシオンの様子も見てきました。栗東は今週2日連続で雨が降ったこともあり、ひじょうに馬場が悪いのです。それにともない、ウインバリアシオンの1週前追い切りは木曜から金曜に延期になりました。

「馬場が悪いと、その分脚元に負担がかかりやすい。屈腱炎を再発させないためにも慎重に慎重に」と中山助手。金曜の朝一番、馬場がいちばんいい状態のときに追い切るそうです。無事にクリアして欲しいですね。

 バリの腰にマイクロレーザーを当てながら、竹邑厩務員は「有馬記念、出たいなぁ」とつぶやきます。わたしもウインバリアシオンが二度目の有馬記念に出走する姿がみたいです!そのためにも越えなくてはならないハードルはまだまだたくさんある。脚元に爆弾を抱えてはいますが、元気はいいしカイバもしっかり食べていますし。このまま無事、出走にこぎつけて欲しいです!

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ウインバリアシオン

「金鯱賞ではプラス1桁台くらいの体で出走できそう」(竹邑厩務員)とのこと。そんな太め感のあるからだではないのでご心配なく。

 バリはスダチのようにガーッと気持ちで走ってしまうタイプではなく、どちらかというと慎重派。調教でもレースでも、少しでも脚元がおかしいと思ったら自分からレースに対して消極的になります。だから、スダチのようなタイプの馬より大怪我に至る可能性が低い。だからその分、安心して見守れます。

 繰り返しになりますが、突然の別れは本当に悲しい。いつか、バリくんが無事に第二の人生に旅立っていく姿、笑顔で見送りたい。

 そして、そのために日々慎重に鍛錬を重ねていく姿は実に凛々しく美しいです。

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花岡貴子

デジタルレシピ研究家。パソコン教師→競馬評論家に転身→IT業界にも復帰。競馬予想は卒業したが、現在も栗東トレセンでニュースやコラム中心の取材を続けている。“ねぇさん”と呼ばれる世話焼きが高じ、AFPを取得しお金の相談も受ける毎日。公式ブログ「ねぇブロ」(http://ameblo.jp/takako-hanaoka/)

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