POG取材スタート

2015年04月01日(水) 18:00

吉澤ステーブルでの取材風景

吉澤ステーブルでの取材風景

競馬媒体、とりわけ紙媒体はどこも苦戦が続いている由だが、このPOG本に関しては相変わらず“堅調”

 先週より、生産地ではPOG取材が始まっている。24日(火)は下河辺牧場とノルマンディーファーム、25日(水)はビッグレッドファームとコスモビューファーム、そして26日(木)は浦河の吉澤ステーブルにて、それぞれ合同で取材が行われた。

 競馬媒体、とりわけ紙媒体はどこも苦戦が続いている由だが、このPOG本に関しては相変わらず“堅調”だという。週刊、月刊の雑誌を刊行する媒体はその中で特集を組んだり、あるいは別冊子を発行したりして需要に応えているし、またPOG本を単行本のように独自で発行する媒体もある。

 取材の基本は、立ち写真撮影と、各馬の近況や特徴についてのコメント、そして個別データ(血統、馬体重、厩舎、馬主など)を育成牧場から聞き取りする作業になるが、その際に最も重要視されるのが、「だいたいいつ頃からデビューできそうか」ということと「将来的に成績を出せそうか」という点である。とりわけ、POGの場合は、周知の通り2歳戦が始まってから翌年のダービーまでの1年間を対象にしている場合が多いので、使い出しがどの時期になりそうか、というのはとても大きなポイントだ。

 できれば夏デビューし、早い時期に勝ち上がってくれて、休養をはさみながら2勝目、3勝目と確実にステップアップして行って、春のG1に駒を進めて欲しい、というのがPOGファンの願いである。しかし、実際はなかなかその通りにことが運ばず、多くの場合、勝ち上がれないままだったり、長期間の休養に入ったり、メンバーが強化してくる秋以降になると伸び悩んだり、と思うようにならない。

 そんなことを織り込みながら、5月〜6月にかけて、“所有馬”を指名するために、あれこれPOG関連本を繰って検討するのがファンの大きな楽しみになる。POGは、数人の競馬仲間や職場単位でもできるし、あるいはもっと大掛かりなグループもあるのだろうと思われるが、誰でもどんな形でも独自のルールで楽しめる点が最も大きな特色だろう。

 育成牧場スタッフの間でもPOGはかなり浸透している。ちょっとした規模の育成牧場ならば、「牧場で手掛けた馬」限定のPOGを実施しているところもあるし、それとは別に自分の経験と技術を生かして違うグループのPOGサークルに参加している人もいる。

 そうした多くのPOGファンに資料を提供するのが、各媒体の役目だ。各育成牧場にとっては、調教が徐々に佳境に入ってくるこの時期に、煩わしい対応をお願いすることになるが、幸いにも、POGの認知度は高く、概して取材には好意的である。

 もちろん、だからといって各社バラバラに押し掛けるようなことになると、同じ対応をその都度強いられることになるわけで、いかにも負担が大きい。そのため、近年は大手の育成牧場ほど「合同取材」の形をとるようになってきた。

 あらかじめ、取材日がいついつ何時と決められ、それに合わせて各社が人員を派遣して取材する。ただし、新馬戦の前倒しによってPOG関連本の刊行も以前より早まっていることから、取材日程もそれに応じて早めになってきている。ピークは3月最終週と4月第一週あたりで、その実質二週間程度の間に日程が集中してしまう。

 さて、浦河の吉澤ステーブルでは、計28頭もの推奨馬が登場した。この地区きっての大手ということもあり、名血馬が続出した。ディープインパクト産駒も7頭いるし、キングカメハメハ、ハーツクライ、ワークフォースなどの産駒もいる。毎年のことながら、ここの育成馬は質の高さを感じる。

 ウオッカの3番仔も登場した。父シーザスターズの牝馬で、馬体重524キロとこれも大柄だが、馬体そのものは引き締まっており、「走れる体」になってきているとのこと。ひとつ上の全姉ケースバイケースは、もう少しで勝ち上がれそうな雰囲気だし、この妹にも期待がかかる。ともあれ、注目度はひじょうに高い。

ウオッカの2013

ウオッカの3番仔(父シーザスターズ)

 この時期の北海道は、冬と春の気候を行ったり来たりする不安定な時期で、先週は前半から半ばにかけて、寒い日が続いた。まだどうかすると雪の舞うこともあり、天候急変によって撮影が中止になる場合もしばしば。そうなると、後日改めて日程を組み直すことになるが、その分だけ後半のスケジュールが窮屈になってくる。また複数の牧場の取材日が重複してくることも多く、各媒体は人員のやりくりに苦慮することになる。

 しばらくの間、気の休まることがなさそうだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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