セレクションセール

2015年07月22日(水) 18:00

セレクションセール展示風景

セレクションセール展示風景

前日の比較展示から、大変な賑わいであった今年のセレクションセール

 7月21日(火)、北海道市場にて「セレクションセール」が開催され、総売り上げ、売却率ともに近年では出色の数字を叩き出した。231頭(牡177頭、牝54頭)が上場され、166頭(牡131頭、牝35頭)が落札された。

 今年の1歳馬がいつになく好調に推移していることは、二週間前の八戸市場でもすでに兆しがあったわけだが、その翌週のセレクトセールでも、1歳市場は空前の活況を呈し、さらに今週のセレクションセールでも、良い流れが持続している。

 前日の比較展示から、大変な賑わいであった。市場は午前10時に開場し、正午から比較展示が始まったが、その頃には、駐車場が満杯になるほど多くの人々が詰めかけ、それぞれ名簿を片手に単独で、あるいは数人のグループで熱心に上場馬を見て歩く姿が見られた。

展示風景

前日の展示風景

 よく晴れた青空の下、からりとした北国の夏らしい爽やかな気候にも恵まれて、活況であった。

 目当ての馬の歩様をチェックしたり、四肢を触ったりする購買関係者が大勢いる中、「今年はやたら人が多い」「かなり混雑していて驚いた」「駐車場が満車になっていた」などの声があちこちで聞かれた。これほどの賑わいはいつ以来だろうと思いながらも、多くの人々が行き交うのを眺めながら、期待が膨らんできた。

 当初、曇りのち雨の予報だったが、セリ当日も何とか午前中は好天に恵まれた。セリ開始は午前10時。予想していた通り、今年はいきなり1番の馬から、ヒートアップする競り合いが展開した。通常、日高のセリでは、まず模様眺めの空気が支配的で、盛り上がって来るまでやや時間を要する。従来は、冒頭からいきなりどんどん売れて行くということが少なく、徐々にエンジンがかかってきて中盤あたりにヒートアップする傾向が強かったが、今年は違った。1番「クイーンナイサーの2014」(父スペシャルウィーク、牡黒鹿毛、タイヘイ牧場生産・上場)から活発な競り合いとなり、1600万円まで価格が上昇した。

1番「クイーンナイサーの2014」

1番「クイーンナイサーの2014」の落札場面

1番「クイーンナイサーの2014」

1番「クイーンナイサーの2014」の立ち姿

 その後も、次々に声がかかり、売れて行く。最初の“ピーク”は、20番目「ルタンデスリーズ2014」(父ゴールドアリュール、牡鹿毛)にやってきた。800万円からスタートした競り合いは複数の購買者がお互い譲らない展開になり、2700万円でようやく決着した。落札者は石川達絵氏。生産者は(有)嶋田牧場。飼養管理者は(有)浦河育成センター。

「ルタンデスリーズ2014」

「ルタンデスリーズ2014」の落札場面

「ルタンデスリーズ2014」

「ルタンデスリーズ2014」の立ち姿

 その直後の30番「キトゥンブルーの2014」(父ルーラーシップ、牡鹿毛)もまた2200万円まで行った。落札者は後藤進氏。(有)本間牧場の生産で、飼養者はNYS(新冠)。

「キトゥンブルーの2014」

「キトゥンブルーの2014」の落札場面

 多くの馬が1000万円を超える。そして、より注目度の高い上場馬は、すぐに2000万円台にまで価格がつり上がる。次々に高額落札馬が出て、途中からはどの馬が最高落札価格馬なのかはっきりと分からなくなるほどであった。

 今年のセレクションSは、順番に関係なくどの場面からでも高額馬が出て、最後の最後まで気の抜けない市場であった。上場番号240番の、名簿上では一番後になる「ミステリアスオーラの26」(父キングズベスト、牡鹿毛)が上場された際にも、800万円からスタートし、複数の声が交錯する中、2300万円までせり上がった。

「ミステリアスオーラの26」

「ミステリアスオーラの26」の落札場面

 その結果、売却率は昨年よりも9.76%増の71.86%に達し、税込ながら、総売り上げも20億5858万8千円と、初めて20億円の大台を突破した。また平均価格も、前年より36万8951円上昇し、1240万1133円となった。

 最高価格馬は71番「ルビウス2014」(父ディープブリランテ、牡鹿毛、生産・販売申込者・乾皆雄氏、飼養管理者・浦河育成センター)と、188番「ハートオブクィーン26」(父キングズベスト、牡黒鹿毛、生産・販売申込者・飼養管理者・木村牧場)の2800万円(税抜き)。

「ルビウス2014」

「ルビウス2014」の落札場面

「ルビウス2014」

「ルビウス2014」の立ち姿

 昨年や一昨年のような4000万円超の高額馬こそ出なかったものの、まんべんなく2000万円台の落札馬が多数出て、全体としてはかなり売れた印象が強い。503頭の申込頭数(牡348頭、牝155頭)の中から選抜された牡177頭、牝54頭であり、牡で二倍、牝で三倍の競争率を勝ち抜いてきた1歳馬たちだから、売れて当然とはいえ、これで文字通り「セレクションセール」らしくなったと言える。

 市場を振り返り日高軽種馬農協の木村貢組合長は、ホッとした表情を浮かべながら「90点はつけられる結果です。今年は新種牡馬(キングズベストやルーラーシップなど)の産駒も多く、ひじょうに売れたセリでした。今回、ご購買頂けなかった方々はぜひまた来月下旬のサマーセールに足をお運び下さい」とコメントした。

「ハートオブクィーン26」

「ハートオブクィーン26」の落札場面

「ハートオブクィーン26」

「ハートオブクィーン26」の立ち姿

 景気が戻っているのだろうか。株価上昇などによって資金のできた新たな購買層が参入してきているのか、この好調の要因は様々考えられるが、日高の生産地にとっては嬉しいニュースで、来月のサマーセールではさらなる活発な取引を期待したいところだ。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

関連情報

新着コラム

コラムを探す