2016年02月05日(金) 18:00
◆それなりの出走馬のレベルは確保すべき
先週行われた川崎記念は、中央枠が昨年までより1頭多い6頭となった。昨年12月に発表のあったとおり、今年から地方で行われるダートグレード競走で、次のとおり、中央枠が拡大されている。
●マイルチャンピオンシップ南部杯、帝王賞、ジャパンダートダービー、東京大賞典(外国馬の出走馬がない場合):6頭→7頭 ●かしわ記念、川崎記念:5頭→6頭 ●JBC:フルゲート12頭以下の場合=5頭、同13〜14頭の場合=6頭、同15頭以上の場合=7頭 ●エンプレス杯、名古屋大賞典、かきつばた記念、兵庫ジュニアグランプリ、サマーチャンピオン:4頭→5頭
2014年12月19日付の本コラムで取り上げたように、昨年からJRAの選定方法に変更があり、古馬のJpnIIおよびJpnIIIでは近走で結果を残している馬も出走しやすくなっていた。さらに今年からは上記のとおりの中央枠の拡大。特筆すべきは古馬のすべてのGI/JpnIで中央枠が拡大されたことで、GI/JpnI出走馬の質をアップする意図があったと思われる。
交流重賞が始まった当時、地方で行われるダートグレードは、岩手やJBCなどごく一部のレースを除いて中央枠はフルゲートの1/3以下に制限されていた。その中央枠の少なさについては、このコラムのみならず以前から指摘してきたが、ようやくここまで来たかという感じがする。
中央枠が増えることで地方馬の活躍機会が限られてしまうという意見もあるかもしれないが、グレード競走であるからにはやはりそれなりの出走馬のレベルは確保すべきであろう。地方のダートグレードでしばしば見られるように、中央馬はすべて単勝オッズ一桁台で、地方馬はすべて万馬券という極端な状況は、馬券を売る興行として健全とはいえない。
ダートを主戦場とする中央馬にしてみれば、あまりに限られた出走枠ゆえ出走機会が巡って来ず、一定以上の能力があってもそれを発揮する機会に恵まれないままという馬も少なからずいたことだろう。
一方、地方馬はといえば、2014、2015年と2年連続でGI/JpnI勝ち馬がなく、ともに唯一のJpnII勝ち馬がNARグランプリ年度代表馬になったという、対中央ということではなかなかに厳しい状況。とはいえ新たな期待もある。
NARグランプリ2015で、4歳以上最優秀牝馬に選ばれたサンバビーン、最優秀短距離馬のポアゾンブラックは、ともに北海道の所属。これまでホッカイドウ競馬といえば全国区の活躍はほぼ2歳馬に限られていたが、古馬から地方を代表する活躍馬が出たことは評価すべきだろう。両馬とも中央オープンから活躍の場を求めての移籍で、グレードタイトル獲得には至らなかったものの、それに近い結果を残した。
また岩手では生え抜きのラブバレットがJpnIII(クラスターC)で3着に好走し、地方全国交流の笠松グランプリを制した。岩手競馬は2006年度末に廃止の危機に直面したり、その後の大震災などで在籍頭数が減るなど、レベル的にもかなり落ち込んだ。ラブバレットの笠松グランプリ勝利は、2006年にパラダイスフラワーがエーデルワイス賞(旭川)を制して以来、じつに9年ぶりとなる他地区での重賞タイトル。かつてメイセイオペラやトーホウエンペラーで中央相手のGIをいくつも制した菅原勲騎手が調教師となっての管理馬ということでは、偶然ではないのだろう。
2歳時に続いて2度めの年度代表馬となったハッピースプリントは今年もGI/JpnIのタイトルを狙っていくとのことで、中央枠が拡大されたダートグレードにあっても、さらなる地方馬の活躍にも期待したい。
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斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。
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