岩手と北海道の施策

2016年02月26日(金) 18:00


◆『岩手競馬グレード制』の導入、ホッカイドウ競馬のナイター設備と三冠ボーナス

 地方競馬の各主催者から、2016年度(2016年4月〜2017年3月)の開催日程や重賞予定がリリースされはじめた。

 ひと昔前であれば3月も下旬になってようやく新年度の日程を発表するという主催者もめずらしくなかったのが、近年ではダービーウイークやグランダム・ジャパンなど全国的に連携したシリーズものが注目を集めるようになり、また主催者間の広域場外発売や地方競馬IPATでの発売があるなど、早くから日程の調整が必要になってのことだろう。早めに日程が発表されるのはファンにとってはありがたい。

 今回は、すでに発表された中から岩手競馬とホッカイドウ競馬の新たな取り組みについて紹介する。

 岩手競馬では、新年度から中央との交流重賞を除く重賞に、M1、M2、M3という『岩手競馬グレード制』が導入される。リリースでは特に言及されていないが、“M”はおそらく“みちのくグレード”ということなのだろう。

 詳しくは岩手競馬のサイトをご覧いただきたいが、3(4)歳以上のM1は1着賞金500万円以上(牝馬戦は400万円以上)、3歳のM1は同500万円以上(牝馬戦は300万円以上)、2歳のM1は同400万円以上(牝馬戦は300万円以上)などというように、賞金によって明確な格付けが行われることなった。2015年度から重賞の賞金額にはほとんど変更がないため、すでに設定されていた賞金を岩手競馬グレードとして追認した形だ。

 岩手競馬では、地方競馬IPAT導入後の2013年度以降、特別から格上げする形で重賞競走が一気に増えた。今回のグレード制でM3に格付けされたレースは、おおむねその際に重賞に格上げされた“旧特別戦”という点でもわかりやすい。

 一方のホッカイドウ競馬では、昨年新設された内回りコースに待望のナイター設備が完成。昨年は日没前にしかレースを組めなかった内回りの1500、1600メートル戦が、今年から時間帯を問わず組めるようになった。特に1600メートルでは7戦も重賞が組まれていただけに、その意味は大きい。

 重賞日程で大きな変更はないものの、注目は『3歳三冠賞』の創設。北斗賞(1600m)、北海優駿(2000m)、王冠賞(1800m)の3歳三冠にボーナスが設定された。三冠を達成すると2000万円、二冠なら250万円が与えられる。各重賞の賞金額についてはまだ発表がないのだが、ダートグレードを別とすれば、ホッカイドウ競馬の重賞の最高賞金が道営記念の1着1000万円(2015年)ということを考えると、三冠ボーナスの2000万円がいかに大きなものかわかるだろう。

 レベルの高い2歳戦が行われているホッカイドウ競馬だが、その強い2歳馬たちはシーズンが終わると(馬によってはシーズンが終わる前に)、中央や南関東などに移籍してしまい、明けて3歳戦の層が薄くなってしまうというのが課題だった。2000万円という高額ボーナスには、2歳シーズンの終了後にも強い馬を引き止めたいという意気込みが感じられる。

 昨年、北海優駿のスタートでの落馬で惜しくも三冠を逃したオヤコダカは、2歳時にはJpnIIの兵庫ジュニアグランプリで2着と好走があり、3歳時は中央や南関東に移籍してしまってもおかしくなかったほどの実力馬。二冠を制したばかりでなく、3歳馬ながら瑞穂賞2着など古馬の一線級とも互角に戦える実力を示した。今年新たに創設された3歳三冠賞は、まさにそうした実力馬を引き留めようということなのだろう。

 ホッカイドウ競馬はかつて累積赤字が200億円を超え、存続すら危ぶまれることもあったが、2014年度からは2年連続で黒字の見通し。2歳馬だけではない全体的なレベルアップを目指す姿勢からは、見事に立ち直ったという好調ぶりがうかがえる。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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