今年度のホッカイドウ競馬開催計画

2016年03月02日(水) 18:00

門別ナイター

内馬場の重賞もナイターで実施されることになった門別競馬場

2015年度も黒字を計上できる見込みであるホッカイドウ競馬

 昨年、ホッカイドウ競馬は台風や霧により15競走が中止されたものの、80日間で約169億円を売り上げ、概ね好調に推移し閉幕した。11月中旬以降は、他地区の地方競馬と中央競馬の受託発売を年度一杯(3月末まで)実施するため、最終的な収支決算はまだ先のことになるが、主としてネットによる購買層に支えられ、2015年度も黒字を計上できる見込みである。

 そうした好調な売り上げを背景に、2016年度のホッカイドウ競馬はいくつかの改善点がすでに発表されており、昨年オープンした内馬場にナイター照明が設置されることと、レース映像のHD化が実現し、それによって格段に高画質な実況映像が提供されるようになったことが、まず大きな改革点として挙げられる。

 内馬場の新設により、従来なかった千五、千六のレース実施が可能となり、番組がひじょうにバラエティに富んだ編成になった点は評価できるが、如何せん、昨年の実施初年度は照明設備まで用意できなかったために、内馬場の使用が太陽光線のある日中に限られるという制限付きであった。そのため、その日のメインである重賞が夕方に実施されてしまい、以後、最終レースまでいくつもの平場や特別が組まれるという主客逆転したような番組の日があった。そうした難点が今年は解消され、内馬場の重賞もナイターで実施されることになったわけである。

 また、従来、クオリティの低いことで不評だった映像もやっとHD化が実現し、今年からは格段に鮮明な映像が配信されることになる。この点も大きな改善である。

 さらに、賞金諸手当の改善もみられる。JRA認定競走数は昨年と同様の118レースを予定しているが、認定を除いた平場と特別の1着賞金が、それぞれ40万円から45万円に、55万円から65万円に増額される。加えて重賞競走への出走手当も8万円から10万円に増額となる。

 そして、今年度は3歳馬及び3歳以上の賞金諸手当も増やされる。まず、3歳に関しては、重賞を除いた条件戦の賞金比率が昨年度150方式だったものが、今年度は170方式に変更となり、重賞を含む条件戦及びJRA条件交流競走の出走手当も8万円から10万円に増額される。

 しかし、最も大きな注目点は、3歳馬による北斗盃、北海優駿、王冠賞の3冠路線にて、これらすべてを制した3冠馬には副賞2000万円が、また2冠馬に対しても250万円が贈呈されるという部分だ。

 3歳の重賞路線は、ホッカイドウ競馬に限らず、どこの地方競馬においても番組の大事な根幹部分だが、従来、2歳でデビューしても、シーズンオフに入ると多くが他地区へと移籍してしまい、そのまま3歳まで在籍し続ける馬が少なかった。そのために、3歳路線は層の薄さが顕著で、小頭数のレースが目につき馬券的な妙味の少ないのが大きな弱点となっていた。

 そうした点を改善するべく、北海道馬主会の協力のもと、2歳時においてホッカイドウ競馬に出走し、その後他場で出走した3歳馬が、再びホッカイドウ競馬に戻って出走する場合には、輸送費を補助するという新たな試みも実施される。ただし開催時期により、支給される補助金が異なり、またホッカイドウ馬主会会員か否かによっても金額がかなり異なる。最も高額なのは、4月20日〜28日までの第1回開催に出走した馬の場合で、岩手からだと10万円(会員)、関東で12万円(同)、それ以外(東海以西ということになろうか)が14万円(同)となっている。会員外はそれぞれこの金額より4万円ずつ減額される。

 これが第2回開催(5月3日〜12日)になると、会員で岩手8万円、関東で10万円、それ以外で12万円と各2万円ずつの減額になり、第3回及び4回開催(5月18日〜6月9日)になると、岩手6万円、関東8万円、それ以外で10万円と、さらにまた各2万円ずつ減額されるのである。

 つまり、開幕直後に、できるだけ多くの3歳馬を確保するための苦肉の策だが、本来、最も馬を集めるのに有効なのは、何より賞金を大幅増額することであろう。これら出走手当の増額や3冠馬へのボーナス、輸送費補助よりも、顕著に即効性の期待できるのは、賞金で釣る以外にない。

 しかし、それには、まだまだ十分な売り上げとは到底言えず、いくら前年比で発売額が増加したといってもたかだか169億円でしかない。全盛期には400億円も売っていたのがホッカイドウ競馬であり、回復への道のりは果てしなく遠いというのが実感だ。

 今年は4月20日より開幕である。これらの改善策がどの程度効果を上げるか、見極めたいと思う。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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