2016年03月28日(月) 18:01
(前回のつづき)
前回の当コラムでは、調教師定年制を扱ったが、去る人がいれば来る人もいる。3月から栗東で3人が新たに開業した。うち、橋口慎介調教師(40)は、定年で引退した橋口弘次郎・元調教師の長男で、1週目にいきなり3勝のロケットスタートを決めた。勝った3頭はいずれも父から引き継いだ馬。橋口調教師は3月1日に2014年の日本ダービー馬ワンアンドオンリーなど33頭を引き継ぎ、うち最高齢の8歳だったダノンマックインが翌2日に登録抹消。現在は32頭を管理している。
橋口調教師は16馬房でスタートしたが、父の弘次郎氏は2月の時点で24馬房だった。後で詳しく触れるが、各厩舎はトレセンの外にも管理馬を抱えており、頭数の上限は馬房数の2.5倍とされている。従って、父は最大60頭だったのに対し、慎介氏は40頭が天井。そんな事情もあってか、重賞勝ちのある3歳馬シュウジは須貝尚介厩舎に移籍している。
こうしたケースで実は「後継指名」が認められている。引退予定の調教師が、免許を取得した人の中から後継者を選ぶのだが、橋口慎介調教師は後継指名の形態を取らず、厩舎の建物も父の代とは別な場所という。「24馬房→16馬房」のため、居抜きで引き継ぐのは難しい面もある。弘次郎氏は引退直前の15年も29勝とバリバリの現役で、24馬房は標準的な厩舎の20馬房より多い。貸与馬房数の上乗せは、メリット制の適用を受けたためだ。
長い前振りになったが、本稿のキーワードは「メリット制」と「2.5倍」である。メリット制は各厩舎の成績に応じて、貸与馬房数を増減するシステム。2.5倍は、各厩舎の管理可能頭数を算出する際の係数である。現在は「貸与馬房数(原則として偶数)×2.5=管理可能頭数」だが、実は00年から係数を3倍とする措置(以下「3倍枠」)が取られていた。このメリット制と3倍枠は、中央競馬の厩舎事情、いや競馬自体のあり方を一変させたと言っても過言でない。・・・
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野元賢一
1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。
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