イギリスの競馬を見に行ってきました

2016年04月23日(土) 12:00


エリザベス女王の馬主経歴

 皐月賞の翌日から3泊5日でイギリスの競馬を見に行ってきました。目的は“未知の競馬場”の踏破と、“競馬場と駅の関係・海外編”の取材。前者に関してはご説明する必要はないと思います。後者は、去年、国内の調査結果をまとめて「週刊競馬ブック」に記事を寄稿したのが高じてしまったためのもの。今回は、世界のオークス、ダービー発祥の地、エプソムダウンズ競馬場と、そのアクセス駅との関係について、現地取材を試みました。

 この結果については、また別の機会にどこかでご披露するとして(もったいぶっているわけじゃないですよ。ほかにも調べたいことがあり、公表はそれが済んでからにしたいので)、今回は別の話題を取り上げます。

 私が帰国便に乗った21日は、エリザベス女王の90歳の誕生日でした。だからといって国民の休日になっているわけではなく、セレモニーもなし(祝賀行事は6月に開催するそうです)。意外に思ったのですが、「The Times」や「Daily Telegraph」などの主要新聞は1面全面に女王の写真を掲載。さらにかなりのスペースを割いて特集記事を載せていました。

 そんな中、イギリス唯一の日刊競馬情報誌「Racing Post」も「THE QUEEN AT 90」という見出しを付けて、見開き2ページの記事を掲載しました。それは、まる66年に及ぶ女王の馬主としての経歴をひとまとめにしたもの。その”栄光”が一目でわかる表も添えられていました。今回はこの話をご紹介しましょう。

 女王は、馬主だった両親の影響で幼い頃から競馬に関わりを持ち始めました。馬主デビューは王女時代の1949年。Astrakhanという馬で、当時の競馬界に絶大な影響力のあったアガカーン殿下から譲り受けたとのことです。

 初勝利は同年、障害競馬の大ファンだった母=当時の王妃と共同所有していたMonaveenが、フォントウェルパーク競馬場の障害戦でプレゼントしてくれました。同馬が翌年のグランドナショナルに2番人気で出走したときには両親共々観戦に訪れています。結果は残念ながら5着。ザ・チェアという名物障害での飛越ミスが敗因のようです。

 同馬の勝利以来、女王の持ち馬がイギリス国内で挙げた勝利は890に達しています。内訳はG1で14勝、クラシックで6勝、王室主催のロイヤルアスコットミーティングでは22勝。最初のクラシックウイナーはCarrozzaという馬で、1957年のオークスを名手レスター・ピゴットの手綱で制しました。

 この年と、その3年前の1954年にはイギリスのチャンピオンオーナーのタイトルも獲得。世界最高峰の英国競馬界でも“女王”に君臨したことがあるわけです。今から思えば、競馬の”古き良き時代”を象徴する実績と言えかもしれません。

 世界中を探しても、これほどの経歴を持つオーナーが90歳を迎えて今なお健在という例は珍しいでしょう。6月のロイヤルアスコットミーティングは大いに盛り上がりそうです。

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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