今こそばんえいをアピール

2016年05月13日(金) 18:00


◆ひと世代前の活躍馬や人気馬の産駒が続々とデビュー

 昨年度(2015年4月〜2016年3月)の地方競馬は、全体で1日あたりの売得金額が前年比111.6%と好調だった。ばんえい競馬もほぼ同じ伸び率で1日あたりの前年比は111.7%。地方競馬のなかでもばんえいだけIPATでの発売が行われていないことを考えれば、かなりの健闘といってもいいだろう。

 ばんえい競馬の昨年度の総売得額145億円余りは、2007年度に帯広単独開催となって以降の最高を記録した。もっとも落ち込んだのが2011年度の103億円余りで、それを考えると相当な回復だ。ようやく年間の総売得額では4市開催最後の2006年度とほぼ同じ水準に戻った。当時より開催日数は減っているため、1日平均では2006年度が8964万円余りだったものが、昨年度は9648万円余りとなった。

 ただ昨年度、ばんえい競馬以外の地方競馬で1日平均の売得額がもっとも低かったのが佐賀競馬の1億5千万円余り(ほかに1億6千万円台が笠松と金沢)だけに、それに比べるとやはりばんえい競馬はまだまだ厳しい状況にあるといえそうだ。

 さらにばんえい競馬には、以前にもこのコラムで指摘したと思うが、重種馬の生産者および生産頭数の減少という問題もある。そんななか、ちょっと気になったのは、熊本地震の影響で、熊本にある馬肉生産業者にもかなりの被害があったというニュース。馬肉の流通が減ることで、さらに重種馬の生産が減少してしまわないかということも心配だ。

 とはいえ明るい話題も、もちろんある。ばんえい競馬でも4月23日から2歳新馬戦が始まっていて、ひと世代前の活躍馬や人気馬の産駒が続々とデビューしている。

 ばんえい記念2勝を含め、ばんえい競馬では最多記録となる重賞21勝を挙げたカネサブラック、その同期でライバルだったナリタボブサップらの産駒は、今年の2歳が最初の世代だ。

 カネサブラックの産駒では、デビューから2連勝を飾ったジェイワン(その母ウィナーサマーも重賞勝ち馬)、新馬戦を勝ったウィナーボルトと、早くも産駒が活躍を見せている。重賞12勝を挙げ人気も高かった牝馬・フクイズミとの間に生まれ、注目されていたイズミクィーンも5月9日にデビュー予定だったが、出走取消となったのはちょっと残念だった。一方のナリタボブサップの産駒では、ホクショウゼウスが新馬戦で2着に19秒4という大差をつけて圧巻のデビューを飾った。現役時代に、実力も人気もあった、この2頭の産駒の活躍はかなり楽しみだ。

 そしてばんえい競馬でいま、もっとも注目されているのが、4歳のセンゴクエースだ。父はばんえい3歳三冠馬にして、現在ばんえいサイヤーランキングでダントツのウンカイ、母はばんえいオークス&ダービーを制するなど重賞13勝のサダエリコという血統。センゴクエース自身も2歳シーズンに三冠を制し、3歳シーズンは残念ながら一冠目のばんえい大賞典で除外となったものの、その後の二冠は制した。

 センゴクエースが何よりすごいのは、4歳の今季初戦となった初戦、古馬オープンのスプリングカップを制したこと。サラブレッドでは4歳になれば立派な古馬だが、ばん馬の4歳はまだまだ子供。4歳になったばかりで歴戦の古馬オープンと互角に張り合える馬など、歴史的に見てもそうはいない。

 これほどのスターホース(候補も含めて)が揃っている今のばんえい競馬は、そのことがもっとアピールされていいと思う。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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