【平地障害1000勝】熊沢重文騎手(1)『表彰式での熊ちゃんを見て涙が出そうに』

2016年06月10日(金) 18:01

ノンフィクションファイル

▲5月29日にJRA史上30人目の通算1000勝を達成した熊沢重文騎手、ここまでの半生を振り返る

ダービーデーの5月29日。京都4Rをメイショウヒデタダ号で勝利した熊沢重文騎手が、JRA史上30人目現役13人目となるJRA通算1000勝を達成。障害勝利数も208と伸ばし、田中剛元騎手(現調教師)を抜き、歴代3位現役1位の記録となりました。遡ること1年前、2015年3月28日に障害通算200勝を達成。netkeibaではこの時にもインタビューさせていただき、1000勝の節目で再びのご登場をお約束していました。騎手生活31年目。思い出のレースやステイゴールドなどの馬たちとの秘話、そして熊沢騎手を支える関係者からの祝福メッセージを交えながら、ここまでの半生を振り返ります。平地障害両方で活躍する、唯一無二のジョッキー“熊沢重文”――人知れず秘めてきた思いとは。(取材・文:不破由妃子)


(→障害通算200勝を達成時の熊沢騎手インタビューはこちら)

熊沢騎手を支える関係者からの祝福メッセージ

■南井克巳調教師(1000勝目のメイショウヒデタダを管理)

「落ちてもよく頑張ったよな。えらいもんだよ。今の時代はいいジョッキーにいい馬が集まって、メモリアル勝利とかよく挙げているけど、昔は勝てる馬なんかなかなか乗せてもらえなかったからね。熊ちゃんは障害も乗っていっぱいケガもあってさ。それで1000勝なんだからたいしたもんだよ。値打ちあるよね。ジョッキーになったのも、うちの地元の近くで、おやじさんとの繋がりがあってね。表彰式でインタビューを受ける熊ちゃんを見て涙が出そうになったよ。貴重な存在だし、これからも頑張ってほしいね」

■松永幹夫調教師(競馬学校の同期)

「1000勝達成、素直にうれしいです。自分も入っていてなんだけど、僕らの同期、1000勝したのは僕、ノリ(横山典)、クマと、これで3人目。すごい誇らしいことですよね。ここまで乗っていることもすごいし、若いころから苦労して頑張っているのも知っているからね。これからもケガに気をつけて頑張ってほしいですね」

■大橋勇樹調教師(オークス優勝のコンビ)

「熊ちゃんには開業のときからずっと手伝ってもらっているし、結果はともかく、競馬も一戦一戦全力投球で乗ってくれるのはありがたいよね。あの年齢になっても謙虚だし、そういった姿勢は若手の見本になるんじゃないかな。助手のころ、コスモドリーム(オークス優勝)のころからの付き合いだけど、あのころから人間的にも変わらないもんね。乗れる間は乗り続けてほしいと思っている。微力ながら応援させていただきます」

■池添兼雄調教師(厩舎の馬に数多く騎乗)

「あの年齢まで平地と障害で乗って、しかも1000勝を達成するなんてすごいのひと言だよ。本当に感動した。気性が悪くて、こちらが申し訳ないなと思うような馬でも、熊ちゃんは嫌な顔をせずに一生懸命に乗ってくれるからね。本当にまじめだよ。競馬に行っても、バテて脚がなくなっても最後までしっかり追ってくるし、こんな一生懸命に乗ってくれるジョッキーはいない。歳をとるとケガの治りが遅くなるもんだけど、熊ちゃんは次の日にはケロッとした顔で出てくるからね。競馬界の鉄人だね。こんなジョッキーは二度と出てこない。これで一区切りできたから、ポンポンと勝つようになると思うよ」

■安里真一さん(10年来の担当騎乗仲介者)

「熊沢さん、1000勝達成おめでとうございます。多くを語らない職人気質の人ですが、中山大障害での(有馬記念との)両グランプリ制覇と、1000勝という数字は、相当こだわっていたように感じていました。ここ数年はケガも多かったので、どちらも達成できて本当に良かったです。手応えのない馬でも積極的に勝負に出て、叱咤してゴールまで持たせるのが熊沢さんの真骨頂。それがスタイルなのは承知していますが、まずは無事に完走して、ケガのないように帰ってきてもらえればと思います。せっかくここまで来たのですから、星野忍さんの254勝も塗り替えてください!」

■平田修調教師(助手時代にダイユウサクを担当)

「競馬学校の厩務員過程に自分が入った時にクマは騎手課程の2年生で、その後もトレセンに入ってから内藤厩舎でも一緒で、もう30年以上の付き合いになるかな。当然その間にはいろんなことがあって。というか、いろんなことがありすぎてとても語り尽くせないけど、改めて、30年ジョッキーを続けていること、1000勝を積み上げたことはすごい立派だと思う。ただ、最近は心配もしてる。昔は落馬をしても大きな怪我にはならなかったのが、最近は怪我が多くなってきた。これはずっと前から言ってることだけど、早く調教師になってほしい。当然応援しているんだけど、何より無事にステッキを置いてほしいと思ってる。そして、俺のとこに来い! 俺の厩舎に来い! 厩舎の仕事をそこで覚えて、調教師になってほしい。そんなふうに思ってるよ」

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▲南井師の声掛けで開催された1000勝パーティーで、NOB会(旧内藤繁春厩舎スタッフ)代表の平田師から花束をもらう熊沢騎手


決して平坦ではなかった、どちらかといえば凸凹道だった

──このたびは1000勝達成、本当におめでとうございます!

熊沢 ありがとうございます。あとひとつになってから、だいぶ時間が掛かっちゃったけどね。自分よりも周りが「まだか、まだか」と(苦笑)。注目してもらえるのはありがたいことなんだけど、逆にちょっとつらいところがありましたね。

──すみません。私も「今か、今か」と待ち構えておりました(笑)。以前、「1000というのは確かにすごい数字ではあるけれど、記録はあくまでオマケだから」とおっしゃっていましたが、実際に達成された今、改めて“1000”という数字にはどういった思いがありますか?

熊沢 もう周りへの感謝しかないですね。大した騎手じゃないのに、ずっと乗せてくれる馬主さん、調教師さんがいてね。本当にありがたいことです。

──今回も、熊沢さんゆかりの関係者の方々から、たくさんの「おめでとうメッセージ」が届いています。そのなかで南井師が「表彰式でインタビューを受ける熊ちゃんを見て涙が出そうになった」と。1000勝目となったメイショウヒデタダも南井師の管理馬でしたね。

熊沢 南井先生とは本当にご縁がありますよね。そもそもこの道に引っ張ってくれたのも南井先生ですからね。・・・

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