牝馬のダービー挑戦

2016年06月24日(金) 18:00


◆地方競馬では牝馬が勝つこともそれほどめずらしいことではない

 先週行われた関東オークス。単勝オッズでは中央4頭が2〜4倍台で、地方馬はもっとも人気になったポッドガゼールで47.1倍という偏った人気になった。中央馬はいずれもダート2勝以上という実績。対して地元南関東勢は東京プリンセス賞の上位馬が揃って1週前の東京ダービーに出走ということで、さすがに地方馬が3着以内に入るのは無理だろうと思い、筆者の予想でも中央4頭にしか印をつけなかった。

 しかし結果は、地方馬の中でも3番人気、単勝85.0倍のミスミランダーが2着に入る健闘を見せた。『交流重賞回顧』でも触れたとおり、レース中盤で14秒台のラップが4つ続くというスローペース。それゆえ好位で流れ込むことができたと考えることもできるが、勝ちタイムの2分19秒1は中央との交流になった2000年以降でもっとも遅いもの。今年の中央のダート3歳戦線は、ヒヤシンスSとユニコーンSでワンツーだったゴールドドリーム、ストロングバローズほか何頭かを除いて、全体では世代レベルが意外に低いのかもしれない。

 それで思ったのは、地方のこの世代の上位馬、モダンウーマンやリンダリンダが東京ダービーではなく関東オークスに出走していれば、もしかして勝負になったのではないかということ。

 日本ダービーともなると、牝馬が勝ったのは戦後では2007年のウオッカが唯一となっているように容易なことではない。しかし地方競馬の各地で行われている“ダービー”は、それぞれ層がそれほど厚くないこともあって、牝馬が勝つこともそれほどめずらしいことではない。今年のダービーウイークでも、九州ダービー栄城賞では上位3着までを牝馬が独占。ダービーウイークには入っていないものの、高知優駿でも牝馬のディアマルコが勝った。

 兵庫では今年、一冠目の菊水賞を牝馬のシュエットが制した。残念ながら兵庫ダービーへの出走はなかったものの、兵庫では一冠目の菊水賞から牝馬ののじぎく賞へは中5週、のじぎく賞から兵庫ダービーへは中3週と十分な間隔がとられている。このように地方競馬では、牝馬でも“ダービー”に出走しやすい重賞日程を組んでいる主催者も少なくない。

 余談にはなるが、今年のダービーウイークで兵庫ダービーだけが取り残される形で日程が分散してしまったのも、その間隔を確保するためというのが理由のひとつと聞いている(もちろんそれだけが理由ということではない)。

 南関東でも牝馬二冠目の東京プリンセス賞は牡馬一冠目(もちろん牝馬も出走できる)の羽田盃と同じ開催で行われ、東京ダービーまでは十分な間隔があるが、東京ダービーから牝馬三冠目の関東オークスに出走しようと思えば連闘になってしまう。

 ならば関東オークスを1週か2週うしろにずらせばいいじゃないかと思うかもしれないが、現在の日程では、関東オークスから中2週で3歳以上牝馬のスパーキングレディーCが、中3週でジャパンダートダービーが控えている。南関東ではいずれかの重賞を1週ずらそうとすれば、4場の開催ローテーションから組み替えなければならず、交流重賞の時期まで含めて相当に考えられた結果の現在の日程を変えるということもなかなかに難しい。

 それを考えると、世代トップクラスの牝馬にとっては、素直に牝馬路線に出走するのか、それとも牡馬に挑戦するのか、という選択は相当に悩ましい。ということを、今年の南関東3歳戦線では、あらためて思わされた。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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