忘れられない名勝負 アジュディミツオーvsカネヒキリ/帝王賞

2016年06月28日(火) 18:01

JRAダート王・カネヒキリを撃破

 6月29日(水)、大井競馬場で行われる『第39回帝王賞』は、春シーズンのダート戦線を締めくくる大一番。1997年にダートグレード競走になって以来、JRA所属馬が11勝を挙げているのに対し、地方所属馬も8勝と大健闘。実は帝王賞は、数あるダート重賞の中でも地方馬の活躍が目立つレースなのです。

 コンサートボーイ、アブクマポーロ、メイセイオペラ、マキバスナイパー、ネームヴァリュー、フリオーソと地方の名馬が制してきた数々の戦い。今回はその中でも地方競馬史に残る名勝負を演じた、アジュディミツオーvsカネヒキリの2006年『第29回帝王賞』を振り返りたいと思います。

 1番人気カネヒキリは単勝1.6倍。2005年3歳時、ユニコーンS、ジャパンダートダービー、ダービーグランプリ(盛岡)、ジャパンカップダートと次々に重賞を制し、この年のJRA最優秀ダートホースに選出されます。翌2006年はフェブラリーSを勝利したあとドバイワールドCに出走して4着。帝王賞は遠征後の初戦でした。

 対するアジュディミツオーは2番人気で2.2倍。2004年の東京ダービーをデビューから無敗の4連勝で制すると、その年の東京大賞典を3歳で制覇。2005年には地方所属馬として史上初の海外遠征、ドバイワールドCに挑戦して6着。その後、東京大賞典を連覇すると、2006年は川崎記念、マイルグランプリ(大井)、かしわ記念と重賞3勝の快進撃で帝王賞を迎えます。

 ここまで2頭の対戦は2005年の武蔵野S・ジャパンカップダートと2006年のフェブラリーSで、カネヒキリが3戦すべて先着(うち2勝)。いずれも舞台はJRA・東京競馬場でしたが、4戦目の帝王賞は大井競馬場。南関東の競馬場で「アジュディミツオーの逆転なるか?」に注目が集まっていました。

 パドックに登場した2頭。

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▲パドックに登場したアジュディミツオー、その姿は王者の風格(撮影:高橋正和)

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▲前年のJRA最優秀ダートホースに輝いたカネヒキリ(撮影:高橋正和)

 筋骨隆々で迫力ある馬体のアジュディミツオー。その姿は王者の風格を漂わせ、見る者を惹きつける魅力に溢れていました。気性が荒く、肉食獣のような性格はちょっと怖いほど。

 一方のカネヒキリはピカピカの栗毛が輝く美しい馬。こちらも500キロを超える大型馬で、どっしりとした馬体は迫力満点です。

 レースはアジュディミツオーがスタートから先頭に立ち、カネヒキリも3番手から2番手と徐々に位置を上げていきます。4コーナーを回り、最後の直線は文字通りの一騎打ち。

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▲逃げ粘るアジュディミツオー(左)に、襲いかかるカネヒキリ(右)(撮影:高橋正和)

 逃げるアジュディミツオー、追い詰めるカネヒキリ。鞍上の内田博幸騎手と武豊騎手の叩き合いも大迫力。激戦の末、ゴール前でアジュディミツオーがもう一度伸びてゴール!! 勝ちタイム2分2秒1は当時のコースレコードでした。

 これぞ2頭のライバル対決。最後まで食らい付くカネヒキリ、抜かせないアジュディミツオー。激戦を演じた2頭に、スタンドからは惜しみない歓声と拍手が送られました。

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▲2頭の大激戦で、当時のコースレコード2分2秒1を記録(撮影:高橋正和)

 目の前で繰り広げられた最高に力のある馬同士の戦い。「これこそ頂上決戦、こういうレースが見たかった!」と、あの日の競馬を見た誰もがそう感じたことでしょう。良いレースは人の心を動かします。忘れられないベストレースです。

 すべてを出し切って戦った2頭。両雄がその後たどった道は…。これはまた長くなるので、ぜひ別の機会に綴りたいと思います。

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▲2007年7月放牧中のアジュディミツオー(撮影:荘司典子)

アスカノロマン、悲願のビッグタイトルを

 さあ、お待たせしました。それでは今年の帝王賞の注目馬を枠順にそって見ていきましょう。

 1枠1番アスカノロマン。去年の秋以降、一戦ごとに力を付け、今年に入って東海Sと平安Sを制覇。特に前走・平安Sでは逃げて5馬身差の圧勝劇を演じ、一躍注目を集める存在となりました。大井競馬場を走るのは初めてですが、去年の船橋・ダイオライト記念で3着という成績があります。

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▲前走の平安Sで5馬身差の圧勝、鞍上の太宰啓介騎手と悲願のビッグタイトルを(C)netkeiba.com

 2枠2番ノンコノユメ。大井競馬場の2000mは去年のジャパンダートダービーを制した舞台。水が浮くほどの不良馬場をものともしない目の覚めるような末脚での快勝は、強烈なインパクトがありました。次世代を担う4歳馬。JpnIを制した舞台で、前走・かしわ記念(4着)からの巻き返しを!

 3枠3番コパノリッキー。前走・かしわ記念を快勝してここへ。一昨年の帝王賞、東京大賞典で2着、昨年のJBCクラシックを制した走り慣れた舞台。ダート界を牽引してきた実力馬、6歳の充実期を迎えてますます元気一杯。今回も武豊騎手を背にどの位置取りでレースを進めるかにも注目。

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▲前走のかしわ記念快勝、一昨年2着のリベンジを今年こそ(撮影:高橋正和)

 4枠4番アムールブリエ。エンプレス杯(2015年・2016年)、ブリーダーズゴールドC、名古屋グランプリと、ダートグレード競走4勝をマーク。半兄アウォーディー、半弟ラニとともに大活躍中の血統で、怖い存在の牝馬です。

 6枠7番サウンドトゥルー。昨年暮れの東京大賞典でホッコータルマエを破りGIホースの仲間入り。充実期を迎えた6歳馬。前走・かしわ記念は5着でしたが、東京大賞典で経験済みの2000mで再度戴冠を狙います。

 7枠10番ホッコータルマエ。1月に川崎記念を3連覇して史上初のGI・JpnI10勝の偉業を達成しました。昨年、ドバイワールドC遠征後初戦で帝王賞を制覇。今年も同じローテーションですが、もともとは使いつつ良くなるタイプ。現在の状態がどうかだけが鍵となります。

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▲川崎記念で史上初のGI・JpnI10勝目。ドバイ遠征帰りがどう出るか?!(撮影:高橋正和)

 8枠12番クリソライト。2013年のジャパンダートダービー1着、去年の帝王賞2着と大井での実績は十分。とはいえJpnIの舞台ではワンパンチ足りない印象がありますが、宝塚記念を快勝した半妹マリアライトに続いてあっと言わせる走りを見せてくれるかもしれません。

 地方所属馬からはまず7枠9番ユーロビート。去年のマーキュリーCでダートグレード競走初制覇。今年に入っても重賞で馬券圏内を外していない走りを見せています。これまで強豪たちと戦ってきた経験は十分で、昨年(4着)以上の走りを見せてくれる可能性も。

 8枠11番ナムラビクター。ホッカイドウ競馬に移籍して2戦は案外な成績でしたが、もともとはJRA所属時代に2014年のアンタレスSを制した重賞ウイナー。去年の東京大賞典でも5着と掲示板を確保しています。

 出走馬12頭中11頭が重賞ウイナー(地方重賞含む)。そのうちGI・JpnIホースが5頭も揃った好メンバー。今年からJRA所属馬の出走枠が7頭に拡大され、現在考えられるほぼベストメンバーが揃ったと言っていい高いレベルでの混戦模様です。

 今年はどんな名勝負が生まれるのか、見応え十分の戦いが予想されます。ダートの頂上決戦、帝王賞をスパッと当てて気持ち良く夏を迎えたいですね!

※次回の更新は7月5日(火)の18時。川崎競馬場で行われる「スパーキングレディーC」のコラムをお届けします!


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【ダートグレード競走とは】
中央競馬・地方競馬の交流を促進し、ダート適性のある実力馬の出走機会の拡大を図るため、全日本的な見地から体系づけられたダート交流重賞競走の総称。

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荘司典子

埼玉県出身。フリーアナウンサー。競馬好きが高じてこの世界へ。2001年から15年間、グリーンチャンネルで「中央競馬全レース中継」のキャスターを務める。2016年度から「グリーンチャンネル地方競馬中継」のコメンテーターとして出演。さらに全国各地の競馬場のトークイベントに参加するなど、中央競馬・地方競馬の垣根を越えて活躍中。

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