ホッカイドウ競馬閉幕

2016年11月11日(金) 18:00


◆ホッカイドウ競馬の復活は、門別単独開催という思い切った決断が転機

 早いもので10日の開催で今年のホッカイドウ競馬の開催が最終日を迎えた。個人的な感覚ではあるのだが、地方競馬では1年でもっとも盛り上がるJBCが終了して、その翌週、道営記念が終わると年末へむけてまっしぐらという雰囲気になる。

 4月20日に今年度の開催が始まり、80日間の開催での馬券の売上げ203億5501万円余りは、前年の169億13万円余りに対して120.4%。発売総額で前年比プラス計上は、門別単独開催となった2年目、2011年から6年連続。前年比で20%以上の大幅アップとなったのは、バブル経済崩壊後に売上が落ち込んで以降では初めてのこと。売上げが底を打った2010年の112億円余りから6年で倍近くとなり、200億円を超えたのはじつに18年ぶり。そして4年連続で黒字になる見通しとのことだ。

 こうした数字を並べてみると、一時は累積赤字が200億円を超えるまでになったホッカイドウ競馬の復活は、門別単独開催という思い切った決断が転機となったともいえる。

 開催最終日となった道営記念当日は陽が落ちると気温は氷点下まで冷え込んだ。とはいえほとんど風もなく、好天に恵まれたことから場内は熱気に溢れていた。

 現在の門別競馬場は、かつてはホッカイドウ競馬の調教専用の施設で、競馬場としてのオープンは1997年。しかし当初は開催日数が少なかったこともあり、馬券の売上げは本場以外の場外施設に頼るという想定でのスタートだった(当時、地方競馬ではまだ在宅投票はあまり一般的ではなかった)。ファンが利用するスタンドなどの施設はいかにも貧弱で、ともすれば「ファンの方はあまり競馬場に来ないでください」とも思えるような施設だった。

 それが門別単独開催になった頃から場内の施設も整え、現在では、グループや家族連れでも1日じゅう楽しめるような施設になった。

 開催最終日、最終レース終了後に行われる『ジョッキー交流会』も恒例となった。騎乗を終えた騎手全員が勝負服のままスタンド内に来て、ファンが自由に話したり写真撮影ができたりというもの。おそらくこれを楽しみに、最終日の門別競馬場に来場するファンも少なくないと思われる。冬季休催があるがゆえに実現できているイベントでもある。

ジョッキー交流会での記念撮影

 施設は小さいなりに充実した門別競馬場だが、売上げアップの原動力となっているのは、やはりネット・電話投票の拡大だ。ホッカイドウ競馬の今年度の場内・場外(つまり実馬券)での発売額は、前年比で97.1%。つまりネット・電話投票での売上げの伸びがそのまま全体の伸びとなっていて、売上げ全体に占めるネット・電話投票の割合は、実に76.8%にまでなっている。

 今年度(4〜9月)の地方競馬全体の実績で、売上げ全体に占めるネット・電話投票の割合は61.3%。主催者別でその割合がもっとも大きいのが高知競馬で82.7%、ホッカイドウ競馬は高知に次いで2番目。南関東などの大都市圏の地方競馬は別として、ローカルな地方競馬ほど、ネット・電話投票での売上げがそのまま全体の売上げに影響する時代になった。

 競馬場を訪れるファンのための施設改善ももちろん必要だが、今後さらにネット投票の割合が増えると、ユーザーの取り合いというような状況が起こることは間違いない(すでにそれは起きているともいえるが)。それは競馬だけの問題ではなく、ネットで映像が見られて投票までできるとなれば、まるでテレビのチャンネルを変えるように、賭ける対象の公営競技を選ぶことができる。そういう意味では、ネットをはじめとしたさらなる情報提供の充実は必要になってくるであろう。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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