ヤングジョッキーズシリーズ

2016年11月18日(金) 18:00


◆またひとつ中央と地方の交流が進んだといえそう

 16日、地方競馬全国協会およびTCK大井競馬から、『ヤングジョッキーズシリーズ』開催についてのリリースがあった。

 来年4月〜11月に全国地方競馬11場で行われる“トライアルラウンド”に、地方・中央から各5〜6名の若手騎手が出場。その成績上位者によって、年末の大井(12月27日)および中山(12月28日)で“ファイナルラウンド”が行われるというもの。

 まず画期的なのは、現在開催が行われている地方競馬の全場(主催者が盛岡と同じ水沢は除く)が舞台になるということ。

 ここ十数年で、地方から何人もの騎手が中央へ移籍し、その何人かはリーディングを争う活躍を見せているのはご存知のとおり。一方で中央から地方へという流れはなく、中央で騎乗機会に恵まれない若手騎手には期間限定などで地方で騎乗する機会を与えてもいいのではないか、ということはさまざまなところで言われてきた。期間限定での騎乗とはならないものの、このシリーズはそのひとつの答えといえるのではないだろうか。

 若手騎手限定とはいえ、年間でこれほどの回数の騎手交流競走が行われることも画期的だ。というのも近年では、馬の遠征が伴わない騎手だけの交流競走は年間での回数が限られている。それゆえ、通算2000勝以上の騎手によるゴールデンジョッキーC(園田)、佐々木竹見Cジョッキーズグランプリ(川崎)、全日本新人王争覇戦(高知)など、歴史を重ねたもの以外に騎手交流競走を開催しようと思えば、地方競馬の主催者同士で綱引きになるような状況もあった。

 また過去には、JRA所属騎手は騎手交流競走以外の、いわゆるエキストラ騎乗はJRA側の意向によって制限されることもあった。もう10年以上も前だったと思うが、高知の全日本新人王争覇戦の当日、JRA所属騎手が新人王争覇戦以外のレースにも騎乗が予定され、実際に枠順まで発表さたものの、当日になってすべて地元騎手へ騎乗変更されるというようなこともあった。

 そうしたことを思えば、年間を通じて、しかも地方競馬の全場を巡ってということでは、またひとつ交流が進んだといえそうだ。

 中央の若手騎手にとっては、さまざまに形態の異なる地方の競馬場で経験を積むことができる。一方で地方の若手騎手にとっては、ファイナルラウンドで中央の競馬場で騎乗できるとなれば、モチベーションも上がるだろう。

 といったところで今回のリリースでは、詳細についてまでは発表がなかった。地方競馬全国協会に問い合わせたところ、出場資格、ひとりの騎手が何戦に出場するのか、ポイント制なのか、などのルールについてはまだ決まっていないとのことだった。

 若手騎手にとって、普段とは違った様々な環境で騎乗することで得られる経験はもちろん大きいが、同時に、こうした交流レースによって繋がる人脈も貴重なもの。何がブレイクのきっかけになるかわからない。

 全国を巡るトライアルラウンドはもちろんだが、年末に大井・中山で行われるファイナルラウンドがどんな盛り上がりを見せるのか、今から楽しみだ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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