オッズ10倍以下に4-5頭がひしめく混戦、チャンピオンハードル展望

2017年03月01日(水) 12:00


クイーンマザーチャンピオンチェイスには大本命馬が

 3月14日(火曜日)から17日(金曜日)まで、英国における障害競馬の最高峰といわれる「チェルトナムフェスティヴァル」が開催される。このコラムでは、今週と来週の2回にわけて、その主要競走の展望を行いたい。まずは、初日(14日)のメイン競走として行われる、ハードル2マイル路線の最高峰、G1チャンピオンハードル(芝16F87y,障害数8)から見ていきたい。

 このレースの15年の勝ち馬フォーヒーン(セン9、父ジャーマニー)、16年の勝ち馬アニーパワー(牝9、父シロッコ)が、いずれも故障で戦線を離脱。いささか小粒感を否めないメンバー構成となった。16年1月にG1愛チャンピオンハードル(芝16F)を制して自身7度目のG1制覇を果たした後、繋靭帯炎を発症して16年のチェルトナムフェスティヴァルを回避したフォーヒーン。蹄を負傷して今季の始動も遅れていたが、管理するウィリアム・マリンズ調教師が2月6日、フォーヒーンが右臀部の腸骨に圧迫骨折を発症したことを公表。2年続けてチェルトナムフェスティヴァルを欠場することになったものだ。また、1月24日の追い切り後に歩様が乱れたアニーパワーは、膝下の靭帯を傷めていることが判明。復帰までどれくらいかかるか、経過を観察している状況にある。

 そういうわけで、オッズ10倍以下に4〜5頭がひしめく混戦となった中、3.75〜4.5倍のオッズで1番人気に推されているのが、ビュヴェールデール(セン6、父クリロン)である。仏国産馬で、14年8月に祖国でデビュー。ナショナルハントフラットを2連勝した後、英国の名門ニッキー・ヘンダーソン厩舎に転厩。15/16年シーズンからハードルを跳び始め、このシーズンは4戦して、エイントリーのG1トップノーヴィスハードル(芝16F103y)を含む3勝をマーク。既定の路線にのっとって、今季はスティープルチェイスに転身し、ヘイドックとワーウィックでスティープルチェイスの一般戦を連勝したのだが、大駒離脱で上位陣が手薄になったのを見てハードルに舞い戻り、2月4日にサンダウンで行われたLRコンテンダーズハードル(芝15F216y)に出走。ここでも白星を挙げている。

 昨年のチェルトナムフェスティヴァルではG1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)に出走して3着に敗れているビュヴェールデール。このクラスの馬が1番人気に推されているあたり、今年のこのレースにまつわる「小粒感」を象徴しているとも言えそうだ。

 G1初制覇となった12月26日のG1クリスマスハードル(芝16F)を含めて、今季ここまで3戦3勝のヤンワース(セン7、父ノースダンサー)、12月29日のG1ライアンエアハードル(芝16F)、1月29日のG1愛チャンピオンハードル(芝16F)と、愛国のこの路線でG1連勝中のプティムーシュワール(セン6、父アルナミクス)の2頭が、4.33〜6.0倍のオッズで2番手評価。12月17日にアスコットで行われたG3ウェセックスユーストラストハンディキャップハードル(芝15F152y)で重賞初制覇を果たしたブレインパワー(セン6、父カラニシ)が、7.5〜9倍のオッズで続いている。

 続いて、開催2日目(15日)のメイン競走として行われるスティープルチェイス2マイル路線の最高峰、G1クイーンマザーチャンピオンチェイス(芝15F199y,障害数13)の展望に移ろう。

 今年のチェルトナムフェスティヴァル4日間のメイン競走の中で、最も固い本命がいるのがこのレースだ。ブックメーカー各社がいずれも1.33倍を切るオッズを掲げて圧倒的1番人気に支持しているのがドゥーヴァン(セン7、父ウォークインザパーク)である。

 仏国産馬で、14年5月に祖国でハードラーとしてデビュー。2戦目に初勝利を挙げると、14/15年シーズンから愛国の名門ウィリアム・マリンズ厩舎に転厩。そのシーズンは4戦し、G1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)を含む4連勝を果たした。15/16年シーズンからスティープルチェイスに転身し、そのシーズンは6戦して、G1アークルチャレンジトロフィー(芝15F199y)を含む6連勝。そして迎えた今季も、ここまで3戦し、2月5日のG2タイドコテージチェイス(芝16F)を含む3連勝。すなわち、14年6月にデビュー2戦目で初勝利を挙げて以降、14連勝中なのがドゥーヴァンなのだ。その間、2着馬に付けた着差の平均が、なんと10馬身強。チェルトナムのコースも2戦2勝で、ちょっと付け入る隙の見当たらない大本命と言えそうだ。

 ブックメーカー各社が3〜6倍のオッズを掲げて2番人気に支持しているのが、アルティオール(セン7、父ハイチャパラル)だ。ナショナルハントフラットで3戦1勝の成績を挙げた後、15/16年からハードルを跳び始めたアルティオール。このシーズンは5戦し、G1シュプリームノーヴィスハードルを含む5連勝。そしてスティープルチェイスに転向した今季、ここまで4戦し、G1ヘンリー8世ノーヴィスチェイス(芝15F119y)を含む4連勝と、この馬もまた目下9連勝中という快進撃を継続中である。そしてこの馬も、チェルトナムは2戦2勝と、コース適性も実証済みだ。

 管理するリッキー・ヘンダーソン師は、アルティオールについて常々「良馬場がベター」とコメント。実際には重馬場でも勝ってはいるのだが、チェルトナムフェスティヴァルは不良馬場になることも珍しくなく、そのあたりが、ブックメーカーによって倍率にばらつきがある要因となっている。ヘンダーソン師は更に、アルティオールがG1クイーンマザーチャンピオンチェイスではなく、フェスティヴァル初日のG1アークルチャレンジトロフィーに回る可能性もあるとしている。

 昨季のチェルトナムフェスティヴァルではG1アークルチャレンジトロフィーでドゥーヴァンの3着に入り、昨年11月にはチェルトナムのG2ザチェルトナムチェイス(芝15F199y)を9馬身差で快勝しているフォックスノートン(セン7、父ランド)、昨年のこのレースの2着馬で、1月28日にチェルトナムで行われたG1クラレンスハウスチェイス(芝16F62y)で6度目のG1制覇を果たしたアンデスコー(セン9、父デンハムレッド)の2頭が、7〜9倍のオッズで続いている。

 チェルトナムフェスティヴァル3日目(16日)のメイン競走G1ステイヤーズハードル(芝23F213y、障害数12)、4日目のメイン競走G1ゴールドC(芝26F70y、障害数22)の展望は、来週のこのコラムでお届けしたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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