JRAブリーズアップセール・後篇

2017年05月03日(水) 18:00


どんな活躍をみせてくれるか注目して行きたい

 先週に引き続いて、JRAブリーズアップセール(以下、BUS)について書かせて頂く。セール当日の段階では、69頭中67頭の落札で、売却率97.1%となっていたが、その後、翌日になり、FAXによる入札を受け付けた結果、残っていた2頭も無事に行き先が決まり、今年も結論としては売却率100%が実現した。

 このセールは日高で開催されている市場とはずいぶん様相が異なり、主催と販売者はどちらも同じJRAなので、どういう形でもありということになる。日高の市場では、上場された馬に誰からも声がかからなければ主取りになり、その後、個別にその馬を値引きした金額で欲しいという落札希望者が現れた際にのみ、「再上場」の措置がとられる。

 BUSでも、49番の上場が終わった段階で中間の再上場タイムになり、そこで前半に主取りとなった5頭が改めて上場され、それぞれ初回のお台付け価格より値引きしたところから再びセリにかけられた。日高のサマーセールやオータムセールでは、再上場となると、いきなり価格が半分程度まで下落することが多いが、ここでは、初回の上場時のお台付け価格を上回る金額で落札される馬も出た。

 結局、初回の上場では、69頭中、14頭が主取りになり、そのうちの8頭が再上場で落札された。残りはこの時点で6頭となった。

 日高の市場と異なるのはここからで、BUSでは、購買者からの再上場の希望がない馬でも、出てくるのである。鑑定人が「これより、再上場の声はかかっていませんが、皆さまにもう一度ご覧頂いて、もしご希望に沿う馬がいればぜひ一声かけて頂きたいと思います」と場内に告げ、残りの6頭が若い番号順に次々に登場したのであった。

 すると、その中の3頭に声がかかり、7番が150万円、14番が300万円、66番が280万円(いずれも税抜き)で、それぞれ落札されたのであった。

 6頭中3頭がこうして落札され、いよいよ残りは3頭である。すると、二度目のこの上場でも声がかからなかったうちの1頭に、再々上場の希望が寄せられ、三度目の上場で33番が350万円で落札されることになった。かくして、いよいよ2頭だけが残る結果になったわけである。

 その2頭も翌日、FAX入札によって購買者が決定したのは前述の通り。JRA育成馬は、来年もう一度チャレンジすることができないので、可能な限りここで全馬を売却しておきたい事情がある。そのためには、価格を思い切り値引きしても、まず売却し在庫をできるだけ残さないようにすることが優先される。

 それでも、今年は全82頭のうち、13頭が欠場してしまった。これらのうちの9頭は、今月23日(火)に札幌競馬場で開催される北海道トレーニングセールの最後に、改めて上場される予定である。

 ところで、全馬完売になったことで、売り上げ総額も変わり、6億7834万8000円となり、平均価格も983万1130円という結果となった。前年比では上場と落札頭数が3頭減、総額で約4223万円の減少、平均価格も17万6870円の微減であった。

藤田菜々子騎手も騎乗供覧で3鞍に騎乗した

藤田菜々子騎手も騎乗供覧で3鞍に騎乗した

 最高価格馬は、牡馬が20番ハンターズマークの15(父ノヴェリスト、社台ファーム生産、セレクトSにて1080万円で購買)の4212万円(税込)。落札したのは李柱坤氏。また牝馬では、28番ルドラの15(父オルフェーヴル、矢野牧場生産、セレクションSにて1296万円で購買)。落札者は吉冨学氏。

最高落札価格馬20番落札場面

最高落札価格馬20番落札場面
最高価格牝馬28番落札場面

最高価格牝馬28番落札場面

 今年のBUSは、騎乗供覧の時計が昨年よりも平均して速い印象で、供覧の走破タイムが午後からのセリ価格に影響していたようだ。最高価格の20番ハンターズマークの15は、2ハロンを11.5秒、11.6秒の計23秒1にまとめ、これは今年の2番時計であった。同じ23秒1(11.8秒-11.3秒)を出した39番サンダークラップの15(牡、父アドマイヤオーラ)も、価格が上がって2484万円(税込)で永井啓弐氏に落札されていた。

最高価格馬20番騎乗供覧

最高価格馬20番騎乗供覧

 騎乗供覧最速は22番エリモエポナの15(牡、父エンパイアメーカー)と、41番ジーントウショウ(牡、父ヨハネスブルグ)の出した2ハロン23秒0で、それぞれ、1620万円、2862万円で落札されていた。また、終いの1ハロン最速タイムは、38番ヴィエナトウショウの15(牡、父ディープブリランテ)、47番エフテーストライクの15(牡、父サウスヴィグラス)、52番ジョウノナンシーの15(牝、父エンパイアメーカー)の3頭が出した11.1秒であった。

騎乗供覧を見守るJRA関係者

騎乗供覧を見守るJRA関係者
最高価格牝馬28番落札場面

藤田菜々子騎手が騎乗した28番ルドラの15

 ここ3年ほど、BUS出身馬は割に地味な印象が強く、今のところ重賞を勝つまで出世した馬がいない。今年の2歳世代がどんな活躍をみせてくれるか注目して行きたいと思う。中央競馬の新馬戦は6月3日よりスタートする。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

関連情報

新着コラム

コラムを探す