2017年05月31日(水) 12:00
◆ダービーに照準を絞っていた2頭による「2強対決」
いよいよ今週土曜日(6月3日)に開催が迫った、第238回英国ダービー(芝12F10y、エプソム競馬場)の展望をお届けしたい。
G1英二千ギニー(芝8F)を制したチャーチル(父ガリレオ)が、果たして2冠を目指して参戦するかどうかが1つの焦点となっていたが、当面はマイル路線を歩むことを選択し、27日にカラ競馬場で行われたG1愛二千ギニー(芝8F)に出走して快勝。ここは不参加となり、ブックメーカーの前売りオッズから判断すると、二千ギニーは当初から眼中になく、ダービーに照準を絞っていた2頭による「2強対決」の様相を呈している。
1頭は、チャーチルと同じエイダン・オブライエン厩舎のクリフスオヴモハー(牡3、父ガリレオ)だ。叔母にG3ベンディゴC(芝2400m)など豪州で2つの重賞を制したフランシスオヴアッシシ、祖母がG3デリンズタウンスタッド愛千ギニートライアル(芝8F)に勝ち、G1愛千ギニー(芝8F)、G1仏オークス(芝2100m)でいずれも3着となったクイーンクレオパトラという血統背景を持つクリフスオヴモハー。昨年10月にレパーズタウンのメイドン(芝7F)を制し、デビュー2戦目にして初勝利を挙げると、今季初戦となった5月12日にチェスターで行われたLRディーS(芝10F70y)も制し、シーズンオフを挟んで2連勝を果たしている。
ただし、勝ちっぷりがそれほど鮮やかだったわけではなく、ディーSを勝ってダービーに臨んだ馬で、勝利に結びつけたのは03年のクリスキン以来出現していないという、負のジンクスも存在する。
エイダン・オブライエン厩舎は、英国と愛国の二千ギニーをチャーチルで、英国と愛国の千ギニーをウィンターで制し、つまりは目下両国の3歳クラシックを4連勝している。英ダービー前日に行われる英オークスでも、ブックメーカー各社が2.0〜2.5倍のオッズを掲げて抜けた1番人気に推しているのは、オブライエン厩舎のG1英千ギニー2着馬ロードデントロンだ。
オークスも無事通過し、ダービーをも手中に収めれば、春の英愛3歳クラシック6連勝となり、英愛クラシック完全制覇という夢の大記録が見えてくるのだが、大きな関所となりそうなのは、やはりダービーである。クリフスオヴモハーが2強の1角を占めているものの、29日現在のブックメーカーのオッズは4.5倍〜5.0倍で、有力馬ではあるものの、全幅の信頼をおける存在ではないというのが、正直なところだろう。そういうわけで、この馬を含めて、オブライエン厩舎はダービーに7頭出しで臨む予定。物量作戦で、力押しでダービーをもぎ取ろうという態勢である。
2強のもう1頭は、ジョン・ゴスデン厩舎のクラックスマン(牡3、父フランケル)だ。仏国のLRソリチュード賞(芝1800m)を制したラデグンダの4番仔で、半兄にG3ソラルオS(芝7F)勝ち馬ファンタスティックムーンがいるという血統背景を持つ同馬は、馬主がアンソニー・オッペンハイマー氏で、主戦騎手がフランキー・デトーリだから、15年にG1英ダービーやG1凱旋門賞(芝2400m)を制して欧州年度代表馬となったゴールデンホーンと、全く同じチームが手掛ける1頭である。
2歳の10月にニューマーケットのメイドン(芝8F)でデビューし、見事に緒戦勝ちを果たすと、シーズンオフをはさみ、4月26日にエプソムで行われたダービートライアルS(芝10F17y)に登場。ゴール寸前でパーミアン(牡3、父テオフィロ)を短頭差差し切り、デビューから2連勝を飾った。
その後、ここで2着に退けたパーミアンが、ニューマーケットのLRニューマーケットS(芝10F),ヨークのG2ダンテS(芝10F88y)を連勝。パーミアンの評価が上がるにつれて、クラックスマンの評価も上昇することになった。ちなみに、ダービートライアルSで1.3/4馬身差の3着だったベイオヴポエツが、次走のLRディーSで、クリフスオヴモハーに1.1/2馬身差の2着となっている。クラックスマン自身は、出走を予定していたG2ダンテSが道悪になったために回避し、デビュー3戦目がダービーとなることになった。だが、トリッキーと言われるエプソムのコースを経験済みなのは大きなアドバンテージである。
同馬にとっての最大の敵クリフスオヴモハーの鞍上は、ライアン・ムーアになる公算大で、そうなると2強対決は、ムーアvsデトーリという名手同士の対決ともなるわけである。クラックスマンの父フランケルは、前日の英オークスには産駒の出走がない模様で、クラックスマンが、父にとって英国クラシック初制覇の使命を背負って走ることになりそうだ。
そして、その使命を共有するのが、オッズ7〜8倍の3番人気に推されているエミネント(牡3、父フランケル)である。G1フィリーズマイル(芝8F)3着馬ユールビーマインの2番仔で、祖母クオータームーンがG1モイグレアスタッドS(芝7F)勝ち馬という牝系出身のエミネントは、タタソールズ10月1歳市場にて15万ギニー(当時のレートで約2900万円)で購買されてマーティン・ミード厩舎に入厩。
2歳9月にニューマーケットのメイドン(芝8F)でデビュー勝ちを果たすと、シーズンオフをはさみ、4月20日に同じくニューマーケットで行われたG3クレイヴンS(芝8F)を連勝。3番人気に推されたG1英二千ギニーは、勝負どころで末脚が鈍って6着に敗れている。母は10F150yの準重賞で入着経験があり、祖母は英オークス、愛オークスでいずれも2着となっているから、スタミナの源泉となりうる牝系である。
今週末は、英国のクラシックにご注目いただきたい。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。
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