セレクションセール2017

2017年07月19日(水) 18:00

セリ会場風景

セリ会場風景


日高のセリで耳慣れている価格帯を大幅に超える落札金額が連続した

 18日(火)、新ひだか町静内の北海道市場にて開催された「セレクションセール」は、八戸市場、セレクトセールと2週連続で続いた好況の波に後押しされるように、史上最高の数字を残して大盛況のうちに幕を閉じた。

 前夜、市場内の待機馬房が折からの豪雨によって浸水する寸前までいったと聞くが、幸いにも雷雨は一時的なもので収まり、当日は曇りながら冷涼な気温で推移して、しのぎやすい一日であった。

 前日の月曜後に比較展示が実施されていたため、この日のセリ開始は午前10時。直前まで多くの購買関係者が名簿片手に目当ての上場馬の待機馬房まで行き、熱心にチェックする姿があちこちに見られた。

上場馬を熱心にチェックする購買関係者

上場馬を熱心にチェックする購買関係者

「今日は売れるだろう」という事前予想の声をずいぶん耳にした。ディープインパクト産駒こそいないものの、キングカメハメハやハーツクライ、ダイワメジャーから、オルフェーヴル、ロードカナロアなど、人気種牡馬の産駒が勢ぞろいしている。多くの申し込み馬から234頭に厳選してのセールであり、牡馬の方が圧倒的に多いことも大きな「売り」である。巷では「今年の1歳世代はやや品薄傾向になってきている」と言われており、このセールでも関係者の期待が高まっていた。

外のパレードリンク

外のパレードリンク
上場を前に通路で待機

上場を前に通路で待機

 予想通り、今年は、冒頭からいきなり競り合いがヒートアップした。軒並み1000万円以上の取引が続き、ほとんど主取りが出ないままどんどんセリが進行した。8番「ルドラの2016」(父ロードカナロア)が、牝馬ながらさっそく2100万円(税抜)で落札されたと思ったら、ほどなく上場された11番「チリエージェの2016」が、ハクサンムーンの半弟という血統背景もあり、4400万円まで価格が上昇した。

 それ以後も、好調の波は途切れることなく、最後まで続いた。かつては2000万円台の落札馬はほとんど市場取引馬のベスト5くらいにはランクインしていたものだが、今年は総じて相場が急上昇した印象で、これはという上場馬は簡単に3000万円台まで到達する。もちろんセレクトセールとは比較にならないものの、日高のセリで耳慣れている価格帯を大幅に超える落札金額が連続した。

 通常、セリは大きな流れというかバイオリズムがあり、スタートは模様眺めの気分が支配的だし、途中にも「中だるみ」するような時間帯が必ず訪れる。しかし、今年は、ずっと同じようなムードのまま、後半になっても、勢いが衰えることがなかった。「いったいどうなっちゃったの?」と訝しく感じるくらいの盛り上がりであった。

 途中からは、最高価格馬こそ覚えていたものの、次点の馬がどれなのかも分からないほど3000万円を超える落札馬が続き、頭が混乱してきたくらいだ。場外に設置された取引結果を示すモニターを何度となく確認に行ったが、売却率はずっと8割をキープしたままであった。

 今年に限っては、上場順による有利不利はほぼなかったと思われる。最初と最後はなるべく避けて欲しいというのが生産者心理だが、今年はそんな順序など関係なく、競り上がる馬はどんどん価格が上昇した。

 そのあおりを受けたのがJRAで、購買リストに挙げていた上場馬が、想定以上に高騰してしまったため、やむなく落札を断念するケースがずいぶんあった。今回もまたJRAは再上場で1頭落札していたし、通常は手を出さない(と言われる。なぜならば予算上の制約もあり確実に落札できるかどうか確証がないからである)はずの名簿上の一番最後に記載されている上場馬も落札したあたりに苦心の跡が見られる。

 結局226頭(牡161頭、牝65頭)が上場され、184頭(牡138頭、牝46頭)が落札された。売却率81.42%は前年比7.89%の上昇。また総売り上げは31億1061万6千円(税込、以下同)に達し、こちらも前年を5億8471万円余上回り、1頭当たりの平均価格も1690万5521円と前年よりも247万1785円の大幅増となった。これらの数字はいずれも同セール始まって以来のレコードである。

 最高価格馬は前述の11番「チリエージェの2016」の4752万円で落札者は(同)雅苑興業。販売申込者は(株)白井牧場。また牝馬では、35番「ゴーファイトウィンの2016」(父キンシャサノキセキ)の3024万円が最高価格馬であった。落札者は(有)ビッグレッドファーム。販売申込者は(有)岡田牧場。

セレクション最高落札価格馬チリエージェの2016

セレクション最高落札価格馬チリエージェの2016
落札価格2位同位トウカイポピーの28

落札価格2位同位トウカイポピーの28
落札価格2位同位セルリアンブルー2016

落札価格2位同位セルリアンブルー2016
牝馬最高落札価格馬ゴーファイトウィンの2016

牝馬最高落札価格馬ゴーファイトウィンの2016

 昨年よりも64人多い538人が購買登録し、良質馬であればあるほど活発な競り合いを展開したことが好結果を生んだ一因だが、それだけ「良い馬を手に入れたい」というムードが高まりつつあるということだろう。

昨年よりも64人多い538人が購買登録し活発な競り合いを展開した

昨年よりも64人多い538人が購買登録し活発な競り合いを展開した

 セール結果について主催者の日高軽種馬農協・木村貢組合長は「生産者の努力とレポジトリーの充実、購買者にご来場して頂くための様々な努力の結果かと思います。セリのために良かれと思いやってきたいろいろなことが実を結んだようにも感じています。このところのセリの結果が上昇傾向にあり、生産者が繁殖牝馬にも投資をするようになったこと、そして種付け料の高い種牡馬の産駒も数多く出てきたのも好結果をもたらしました。市場取引馬が2歳戦で活躍していることにも後押しされました。何より若い世代の後継者が希望を持って生産に取り組んでもらえる良い材料になったとも考えています」とコメントし、恒例の“採点”は「100点と言いたいところですが細かな運営面での改善点もあり、98点としておきます」と結んだ。

 牡馬に限ると、実に売却率は85.71%、平均価格も約1823万円である。これは驚異的な数字で、セレクションセールが今後も盛況であり続けるためにも、ぜひこの中から大活躍する取引馬が誕生することを願うばかりだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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