2017年09月07日(木) 12:00
◆あせらずあわてず、時を待ってたどり着いた進境
静かに時を待つ人には、暖かい光を注ぐ。わがままな人情には流されることはないというのが自然の理。これを強く思い起こさせたタツゴウゲキの秋山真一郎騎手による夏の重賞連覇だった。
七夕賞から小倉記念、新潟記念とひと夏で重賞を3回も戦うほどに馬が充実していたということだが、「秋になったら影が薄くなると思うので、夏の間に元気なところを見せられ良かった」と皆を笑わせるあたりに、気負いのない純粋さがにじんで見えていた。あせらずにあわてず、よい時は必ず来ると待つうちにめぐってきたタツゴウゲキとの縁。そんな風に受け取りたい。
小倉記念当日に、騎乗予定のM.デムーロ騎手が落馬、急きょ出番がやってきた。依頼していただきありがたいと冷静なプレイで責任を果し、それによってめぐってきた引き続いての騎乗だったが、この日ただ一回のレースだったにもかかわらず、返し馬でコースの状況をつかんでレースに反映させていたあたりに、冷静で沈着な秋山騎手の人柄をうかがわせ、どういうところに幸運がもたらされるのかを思い知らされたのだった。
また、この夏の時期に頭角をあらわす古馬には、どれにもそれなりの事情があるものだが、一年前のタツゴウゲキは500万条件をなかなか勝てないでいた。体質があまり強くなく、大きくくずれることはないものの勝ち切れない、続けてレースに出走させられない状況が続いていた。それが少しずつ馬体重が増え、体質がしっかりするようになって全能力を発揮できるようになったと鮫島調教師は語っていた。度々リフレッシュ放牧に出しながらこの日が来るのを待っていた陣営の思いにも暖かい光が注がれたのだとも言える。
夏の重賞を連覇して秋にGI馬になった例と言えば、少し前になるが、天皇賞馬オフサイドトラップの例がある。七夕賞と新潟記念を勝って3連勝で栄に浴したのだが、この記録を持ち出してみたくなるタツゴウゲキの進境ぶりだった。人馬ともに、ここまでどう力をたくわえてきたのか。時が来て事を成就させたのだから、そこに光を当ててみたい。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。
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