金沢グルメは世界館と宇宙軒にあり

2017年09月12日(火) 18:00


◆由緒正しき公営競技場のギャンブルフード「トンバラカクニ」!

 月に一度のお楽しみ。喜怒哀楽の“楽”。競馬場の楽しみといえば、食べ物。というわけで今回の競馬場グルメは金沢競馬場から。

 金沢競馬場の取材は、少し前までは年に1度、行くか行かないかという程度だったのが、ここ2、3年は取材の機会が増えた。グランダム・ジャパン2歳シーズンには昨年、金沢シンデレラカップが新設され、さらに今年はダービーシリーズの石川ダービーが始まるなど、シリーズ競走が増えたからだ。

 たまにしか行けない金沢競馬場のお楽しみといえば、必然的に場内に2軒ある寿司屋のどちらかということになるのだが、それゆえ未開拓の店も少なくない。そういうわけで今回の未知との遭遇は、パドック奥に軒を連ねる中から『世界館』というお店。

 のれんをくぐって、まずは壁一面に貼ってあるメニューに圧倒される。

壁一面に並ぶメニュー

 正直、ぱっと見で、何があるのかがわからんでしょ。ひとつひとつ読み解いていくのだが、さすがにこの中から、今自分が一番何が食べたいのかを探すのは難しい。そういうわけで、カウンターの中にいるおばちゃんに、何がオススメかを聞いてみた。すると一瞬困ったような表情で、「そうねえ、なんでもおいしいから、どれがオススメかと言われてもねえ……」と。さらに困った。すると店の奥からご主人が、「今日は、トンバラカクニかな」。

 おお!トンバラ。それでここがあらためて金沢であることを思い出した。豚肉の「豚バラ」は、「ぶたばら」と言うのが一般的だと思うのだが、なぜか金沢では「とんばら」と発音される。

 ここでいきなり話は横道に逸れるが、金沢には『宇宙軒食堂』という街のちょっとした有名店があり、そこの看板メニューが「とんバラ定食」なのだ。ちょい飲みにも対応できて、とにかくメニューは豊富なのだが、昼どきともなるとほとんどの客が、名物の「とんバラ定食」を注文する。常連さんなどは「バラ定」とも言うようだ。豚バラの薄切り肉を鉄板で焼いてタレをからめ、キャベツの千切りと一緒に出されるという、きわめて簡潔な定食ではあるのだが、秘伝とされるタレが人気の秘訣であるらしい。気になる方は「宇宙軒食堂 金沢」で検索してみてください。

 金沢競馬場、世界館の豚バラ角煮に戻る。そういうわけで、(トンバラといえば宇宙軒食堂だよなあ)などと逡巡していると、ご主人から「普通はこの値段じゃ食べられないよ」という追い打ちが。コレで決まった。「じゃ、その定食を!」

 なるほど。よくよく店の入口近くを見れば、「本日のサービスメニュー」というのが掛かっていて、そこに、
 豚バラ角煮定食 700
 豚バラ角煮入りカレー 700
とあるではないですか。

本日のサービスメニュー、当日は豚バラ角煮定食などがあった

 ところで、一番下の「いか姿焼き」も含め、それぞれの先頭についているアイコンのようなものは何を意味しているのだろう。お店にいるときは特に気にならず、あらためて写真を見直してみて気づいた。再訪の機会があれば、このアイコンは何を意味しているのか聞いてみたい。

 で、ドン!とカウンターのテーブルに出された豚バラ角煮定食がコレ。

口の中でトロリと溶ける豚バラの角煮定食、700円也

 おお!おおおっ!見事なまでに茶色の物体。これぞ由緒正しき公営競技場のギャンブルフード。そしてデザートの役目を果たすのだろう、ヤクルト状の乳酸菌飲料(あくまでもヤクルトではない)が泣かせるではないですか。

 何時間煮込まれたんだろう、という豚バラの角煮。見た目のとおり、脂身だった部分は口の中でトロリと溶け、真っ黒になった赤身の部分はホロホロと崩れる。そして当然のように味は濃い。この一皿の1/3くらいの量で、どんぶり飯一杯いけますゼ。

 というわけで、残しちゃ申し訳ないので、がんばって全部食いましたが、五十過ぎのおっさんにはボリュームが許容範囲を超えていて、帰りの新幹線まで胃袋は120%満たされたままだったという。

 濃い味付けの肉塊をがっつり食いたいという若者には激しくオススメ。そんな盛りを過ぎたというおっさんたちには、2〜3人でシェアしてちょうど心地よいかなという、世界館の豚(トン)バラ角煮定食、700円也。

 それにしても市内にあるのが『宇宙軒食堂』で、競馬場内にあるのが『世界館』て……、どんだけ金沢はスケールがデカいんだ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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