続けることの大切さ

2017年09月26日(火) 18:00


◆率先して社会貢献活動を続ける赤岡騎手ら高知のジョッキーに、「あっぱれ!」

 9月21日、園田プリンセスCの取材で訪れた園田競馬場で、「高知のお米・ファーストキッス配布」というイベントが行われていた。本サイトでも「園田で赤岡騎手らから“ファーストキッス”をプレゼント」というニュース(http://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=126509)として伝えられたとおり。

 第8レース終了後、1000円以上の確定前の馬券を提示した先着100名に整理券が配布され、最終レース終了後、園田プリンセスCへの騎乗で来場していた赤岡騎手や兵庫所属の騎手から、赤岡騎手が名付けたというお米“ファーストキッス”3合がもらえるというもの。ぼくもその列に並んで、最終レース後にお米をいただいた。

斉藤修

高知の騎手らが育て、赤岡騎手が名付けたお米“ファーストキッス”

 整理券の列を見ていて、おそらく80人以上が並んだが、その列もなくなって、どうやら先着の100名には達しない様子なのを確認してから整理券をいただいたので、念のため。

 主催者のイベントリリースだけを見ると、来場したファンにお米を配るだけのイベントかと見過ごしてしまいそうだが、そう単純なものではない。

 赤岡騎手をはじめとした高知の騎手たちによる、高知県南国市の農家であり、じつは馬主でもある吉本正仁さんの田んぼを借り、『高知市こども劇場』の子どもたちを招待して田植え・稲刈りの体験をしてもらおうという活動が、もう5年も続けられているという。これは『高知市こども劇場』のウェブサイト(http://www.npokgkochi.com)のブログでも伝えられている。

 この日、ファンに配られたのは、その活動で収穫されたお米だ。それが、高知競馬場ではなく、園田競馬場でファンにプレゼントされたということが、なんだかスゴイではないか。当日の最終レースには、『高知のお米・ファーストキッス賞』という協賛レースも組まれていた。

 高知の赤岡修次騎手は、2007年に出場したワールドスーパージョッキーズシリーズ(JRA阪神)で総合3位になったことで「人生が変わった」とみずから語るように、その後の騎手としての活躍はすばらしい。高知では不動のリーディングを何年も続けてきたことはもちろんだが、近年、南関東の期間限定騎乗では南関東のトップジョッキーと同じようなペースで勝ち星を挙げる。また毎週、毎日のように全国の地方競馬から指名がかかり、重賞レースにスポット参戦もしている。

 赤岡騎手の、近年のそうした騎手としての活躍は日本でもトップクラスと言えるものだが、冒頭にも紹介したように、騎手としてレースに騎乗する以外の活動でも、この10年で残してきたものは大きい。

 まずは高知競馬の通年ナイター開催が始まった2009年から毎年7月に行われている『夜さ恋フェスティバル』。初期の何年か、毎年のように武豊騎手がJRAの何人かの騎手と来場し、トークショーやさまざまなイベントに参加していたのは、赤岡騎手がワールドスーパージョッキーズシリーズに出場したときに武豊騎手と親交を深めたことによるもの。

 そして今年で第8回を迎えた重賞の福永洋一記念が行われるようになったのは、その夜さ恋フェスティバルがきっかけ。トークショーで福永祐一騎手が、「父(福永洋一元騎手)の出身地である高知で、記念レースのようなものをやりたい」と話したところから始まった。

 高知競馬と中央の騎手とのこうした親交が長く続いているのは、赤岡騎手の功績といえるだろう。

 また、今年は台風の影響で残念ながらレースが中止となってしまったが、今年で9回目を迎えるはずだった南関東との『UFOKKジョッキーズ競走』は、高知競馬の売上げが低迷していた時期に、なんとか高知競馬を盛り上げようと、赤岡騎手と川崎の今野忠成騎手が教養センター時代の同期だった関係から始まったもの。「UFOKK」は、「浦和・船橋・大井・川崎・高知」のことで、南関東4場と高知所属の騎手交流戦。このレースの賞金は児童養護施設に寄付されている。

 ちなみに今野騎手の話になるが、今野騎手は、自身が中学3年までを過ごした神奈川県藤沢市の養護施設・聖園(みその)子供の家に、騎手デビューして2年目以降、毎年クリスマスの時期に寄付を続け、2015年にはその総額が1000万円に達したことから、神奈川県から表彰を受けている。

 高知競馬は2008年度には売上げの1日平均が4000万円ほどにまで落ち込んだ。しかしその後、通年ナイター開催やJRA-IPATでの地方競馬の馬券発売などの効果もあってV字回復。2016年度には1日平均で2億4000万円近くを売り上げるほどになった。

 2012年10月にJRA-IPATでの地方競馬の馬券発売が始まって以降、地方競馬はほとんどの主催者で売上げを伸ばしているが、もともとの落ち込みが大きかったとはいえ、高知ほどの割合で売上げを伸ばし続けている主催者はほかにない。先にも触れたとおり、通年ナイターやJRA-IPATでの発売がうまく回ったこともあるが、10年に及ぶ赤岡騎手を中心とした高知所属騎手たちによるファンサービスや社会貢献など、レースに騎乗するだけではない活動の影響も、少なからず売上げアップにつながっているものと思われる。

 一度や二度なら勢いでできるかもしれないが、トップジョッキーとして社会貢献やファンサービスの活動を長きに渡って継続していることには、もちろん、あっぱれ!だ。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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