東北・新潟地区代表に初の栄冠 第9回ジョッキーベイビーズ・後篇

2017年10月19日(木) 18:00

ジョッキーベイビーズ

未来のジョッキーが熱戦を繰り広げた、第9回ジョッキーベイビーズ


「将来は騎手になりたい」観客の盛んな声援に応え

 朝から好天に恵まれた東京競馬場。この日のメインは毎日王冠である。東京開幕週であり、秋のG1戦線に向け有力馬が顔を揃えたこともあって、この日は早い時間帯から多くのファンが競馬場に集まってきた。明らかに昨年よりも人の多いことが分かる。気温も高めで、半袖の人が大半だ。

 ジョッキーベイビーズ(以下JB)に出場する8人の集合時間は午後2時半。以前は、昼休みにJBが実施されていたため、朝の集合時間だったが、12レース終了後の時間帯にずれてからはスケジュールが大きく変わった。

 三々五々、競馬場にやってきた8人は、それぞれの家族や応援団とともに、メモリアルスタンド7階の来賓室にてレースを観戦したり、競馬場内のさまざまな施設を見学に出かけたりして過ごす。1人につき15人までの応援団の枠が設けられているので、この日は前日よりもずっと関係者の数が増えている。

 集合時間になった。事務所2階の会議室に8人と家族が集まる。そこで改めて当日のスケジュールが確認され、すぐに勝負服に着替え、その後乗馬センターにみんなで移動する。カラフルな勝負服に身を包んだ8人と応援団が揃って移動するので、ひどく目立つ。

 乗馬センターで、まず岡部幸雄氏からゼッケンを受け取り、激励を受けた。その名前入りのゼッケンを掲げて8人がエイエイオーと気勢を上げる。騎乗馬に馬装をして、最後の練習が始まる。勝負服を着用しているので、いよいよ本番の近いことが伝わってくる。スタンドの方角から毎日王冠の歓声が聞こえてくるが、8人にとってはもちろんのこと、応援団もまた近づきつつあるJBの方がより気になる。

ジョッキーベイビーズ

岡部幸雄氏からゼッケンを受け取り、気勢を上げた

 最終12レースの各馬が乗馬センターに近い4コーナーをドドドッと駈けて行く蹄音が聞こえてくる。太陽が西に傾いているのを見ながら、12レースの結果が出るのを待つ。そのまま確定すれば、いよいよ馬場入りは間近だ。

 午後4時35分。ビジョンにJBの文字が映し出され、サザエさんを先頭に8騎が本馬場の外埒沿いをゴール方向に向かって一列で進んでくる。北の高橋駈さんから南の小田大君まで1人ずつがMCの長谷川雄啓氏から紹介される。8騎は残り200m地点まで進み、そこでUターンして400m地点まで戻って行く。スタート地点にはコーンで枠が設けてあり、係員に引かれた8騎が輪乗りをしてスタートの時を待つ。スタンドにはまだかなり多くの人々が居残り、4コーナー方向を注視している。

 場内にG1ファンファーレが鳴り響く。スターター役の府中乗馬スポーツ少年団・重久桃子さんが台上から旗を振る。場内からうぉーっというどよめきが巻き起こる。カウントダウンが始まり、ほぼ揃って各馬がスタートするのがビジョンを通して確認できた。

 ゴール前でカメラを構えながら待つ。距離は400m、レースそのものは所要時間にしてわずか30秒ほどだが、いつもながら先頭の人馬が望遠レンズの射程距離に入るまでがひどく長く感じられる。

 まず(1)高橋駈さん・ハショウボーイが最内から飛び出し、(6)後藤蒼二朗君・ヒメがそれを交わして先頭に立つ。内外が大きく離れ、(2)加藤雄真君・栗姫、(3)佐藤翔馬君・オオタニハヤテは中ほどを遅れずに追走する。他の(4)木村暁琉君・ドリームスター、(5)高木蒼武君・エンベツクイーン、(7)源川京汰君・ゴット、(8)小田大君・銀次郎の4騎は後方からのレースになった。

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北海道代表の高橋駈さんとハショウボーイ

 残り100m付近で先頭グループに肉薄していた(3)佐藤翔馬君が少しずつ後退して行く。(6)後藤蒼二朗君が食い下がる(1)高橋駈さんにわずかの差をつけてそのままゴールするかと思った矢先、後藤君の内側から(2)加藤雄真君が必死に栗姫の手綱をしごいて、ゴール手前わずかのところで後藤君を交わし、先頭でゴール板を通過した。

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ゴール寸前で加藤雄真君(右)が後藤蒼二朗君(左)を交わした

 後藤蒼二朗君は、レース途中で鐙から脚が抜けるアクシデントに見舞われ、思うようにヒメを追えなかったという。それでも落馬せず、不利な体勢で一生懸命レースを進めていたのは、類まれなバランス感覚によるものであろう。

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不利な体勢でも、類まれなバランス感覚でレースを進めた後藤蒼二朗君

 結果は以下の通りとなった。

1着 加藤 雄真君 栗姫 31.7秒

2着 後藤 蒼二朗君 ヒメ 1馬身4分の1

3着 高橋 駈さん ハショウボーイ クビ

4着 佐藤 翔馬君 オオタニハヤテ 9馬身

5着 高木 蒼武君 エンベツクイーン 大差

6着 源川 京汰君 ゴット 7馬身

7着 木村 暁琉君 ドリームスター 5馬身

8着 小田 大君 銀次郎 6馬身

 加藤雄真君は、東北・新潟地区に初の優勝をもたらした。勝利騎手インタビューでは、「将来は騎手になりたい」とはっきりとした口調で語り、ウイナーズサークルを囲んだ多くのファンからの盛んな声援に応えていた。また、敢闘賞は、4着に敗れたものの、終始安定した低いフォームで騎乗していた佐藤翔馬君に贈られた。

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終始安定した低いフォームで騎乗した佐藤翔馬君が敢闘賞

 レース後、8人は、表彰式に臨み、その後、地下馬道を検量室前まで移動。岡部幸雄氏からパトロールフィルムを見ながら解説をして頂き、最後は横一列に並んでインタビューを受けた。8人中7人がはっきりと「騎手を目指します」と答える姿が印象に残った。

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優勝カップを掲げる加藤雄真君

 こうして今年のJBも無事に終了した。8人が再び事務所に戻る頃には、すっかり日が暮れてあたりが夕闇に包まれていた。ともあれ、事故もなく、全馬完走してくれたことを素直に喜びたいと思う。

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地下馬道に引き上げる出場者たち。全馬完走が何より

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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