【マイルCS】ハナ差決着の裏にミルコの度胸とムーアの誤差『技術が高いからこそ馬がいつも以上に速い反応をした』

2017年11月23日(木) 18:01

哲三の眼

▲ハナ差決着の裏にあったムーア騎手の唯一の“誤差”とは (c)netkeiba.com

今週は世界レベルの攻防となったマイルCS(GI)をセレクト。M.デムーロ騎手の巧みなリードに絶賛の声が集まる中、哲三氏が注目したのは躊躇なくインに潜り込んだそのメンタル。ほぼ完ぺきな立ち回りをしたエアスピネルになぜハナ差上回ることができたのか?高い技術を持つがゆえに起きたR.ムーア騎手の唯一の誤算ならぬ“誤差”とともに解説します。(構成:赤見千尋)


ミルコは「詰まって負ける怖さを恐れていない」

 今週はマイルチャンピオンシップに注目。勝ったミルコはまたまた好騎乗でファインプレーを見せてくれましたね。ただ僕はミルコだけではなくて、2着だった(ライアン・)ムーア騎手もファインプレーだったと思いますし、3着だった(福永)祐一君も、自分の馬の今の現状をきちんと把握しながらのレースができていて、いい内容だったと思います。各自それぞれが好騎乗を見せてくれて、とても面白いレースでした。

■11月19日(日)マイルチャンピオンシップ(18番:ペルシアンナイト)

 まずは勝ったミルコですが、大外からのスタートで、力が抜けている馬ならまだしも、拮抗している時には外々を回る展開だとキツイかなと思っていたところ、好スタートを切ってすぐ内に入れた。ゲートを出て、スピードに乗せてからすぐに内に潜り込ませるというのは、高い技術がないとできないことです。京都の1600mを外枠から勝つにはそれしかないという選択肢だったのではないでしょうか。

 この選択は技術的にもファインプレーですが、僕は精神的にも凄いなと感じました。『もし内に行って詰まったら…』ということはおそらく考えていない。詰まって負ける怖さを、まったく怖いと思っていないんだと思います。

 僕も昔ああいう乗り方をして、前が詰まって負けると、「なんであんなところに行くんだ」と、乗り替わりになった経験がありました。僕はそういうことをあまり気にしないタイプだったけれど、気にしてしまう騎手もいる。そうなると、勝つための選択肢として内を選ぶより、ポジションを取ってキレイな競馬を見せた方がいいのかなという考えになってしまう。

 そこをミルコは、勝つために選ぶ選択肢に対して絶対に怖がらないし、リスクを背負ってでも勝ちにこだわっている。その気持ちの強さは大きいです。ペルシアンナイトの頑張りとミルコの高い技術、そしてリスクを怖がらない強い気持ちが勝利に繋がったのだと思いました。

 2着だったムーアにしても・・・

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佐藤哲三

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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