JRA・GI後の高知競馬に見る可能性

2017年11月28日(火) 18:00


◆「いつでも、どこでも」という投票が日本の競馬全体の売上を伸ばしている

 ジャパンCが終わった直後の16時から、NAR(地方競馬全国協会)とnetkeiba.comのコラボ企画『“年末年始”は地方競馬が濃い!』のネット生配信が行われたが、ご覧になられただろうか。告知はされていなかったものの、僕も電話で出演させていただいた。

【“年末年始”は地方競馬が濃い!】

 まずは裏話的な話をさせていただく。当初の構成では、1度か2度、電話で数分の出演ということになっていたので、その程度なら外でもいいかと思い、この日は東京競馬場でジャパンCを観戦した。その後、あまり人も来ないであろうローズガーデンのベンチに座って、タブレットで配信を見ながら待機していた。ところがスタジオの状況でだいぶ進行が変わって、突発的に何度か電話出演する状況になったのだった。

 ネット配信は18時まで。東京競馬場のパドックで行われていたジャパンC回顧のトークイベントも終わって17時近くなると、場内の人もほとんどいなくなり、日も落ちて気温も一気に下がった。寒い。さすがに17時過ぎてまで競馬場にいるわけにもいかず、左手にスマホ、右手にタブレットを持ったまま府中市内を彷徨いはじめたのだった。ちなみに歩いているときは映像を見ていたわけではなく、音声のみを聞いていたので念のため。

 なので後半の電話出演は、府中市内の歩道の上とか。そんなことになるなら家か事務所にいるんだったとも思ったのだが、高知競馬第5レース、第6レースの予想で、さすがに3着までは拾えなかったが、本命、対抗がちゃんと予想できたので一安心だった。

 長い前置き、失礼しました。本題はここから。ネット配信のサブタイトルは、『最速JC回顧&高知ナイターに挑戦!』というもの。ジャパンCを佐藤哲三さんが振り返ったあと、高知競馬の4、5、6レースの予想をしてネット投票しようというもの。

 その効果もあったのかどうか、この日の高知競馬の売上は、なんと!5億円超えの5億2948万3500円。高知競馬の1日の売上が5億円を超えたのは、今年3月14日の黒船賞当日(5億9414万4400円)以来のこと。

 近年、地方競馬の売上は好調で、ほとんどの主催者で毎年売上を伸ばしている。その中でも高知競馬の伸びがすごい、というのはさまざまなところで言われているとおり。

 高知競馬のどん底は2008年度で、その年の売上は1日平均で4042万円余りまで落ち込んだ。今考えても、よくそれで競馬の開催が続けられたものと思う。しかし、翌2009年7月に始めた通年ナイターという大英断(大博打とも言う)、さらには2012年10月にスタートしたJRA-IPATによる地方競馬の馬券発売などで年々売上を伸ばし、2016年度の高知競馬の1日あたりの売上は2億3897万円余りまでになった。どん底の時代の約6倍である。その伸びはとどまるところを知らず、今年度4月〜10月期でも前年同期比で143.8%となっている。

 特にJRAでGIが行われる日は競馬に参加する人口が多いためだろう、高知競馬の売上も連動するように伸びる。以下に、この秋のJRA・GIが行われた日の高知競馬の売上(右数字)を示す。

高知競馬売上

GI後の高知競馬の売上は上昇している

 やはり注目度が高い、天皇賞、ジャパンCの日の売上が大きかった。

 さらに高知競馬の1レースごとの売上を見ると、JRAの最終レースが終わった直後の第4レースから急激にアップし、重賞が組まれることが多い第7レースあたりがピークとなる。

 ジャパンC当日は、先に示したとおり5億2948万円余りの売上で、『“年末年始”は地方競馬が濃い!』が配信された16〜18時の間に行われた第4〜6レースの発売合計額が1億7498万200円で、18:10発走の第7レース、重賞・土佐秋月賞の売上が1億2518万1900円。この4レースだけで、この日1日の56.7%を売り上げた。

 JRA-IPATで発売されるのが第7レースまでということが最大の要因だが、『“年末年始”は地方競馬が濃い!』の配信も、多少なりとも売上には貢献したものと思われる。

 かつてであれば夢のまた夢だった、中央・地方間での相互発売が、すべてのレースではないとはいえ実現。また携帯電話やスマホで「いつでも、どこでも」という投票が一般的となって、今は日本の競馬全体が売上を伸ばしている。

 しかしながらこれまでの歴史が示してきたように、その売上上昇もどこかで頭打ちになる時期が来ることは間違いない。「いつでも、どこでも」馬券が買えるようになって、さてその先、世間一般にあまたある娯楽に対抗して、さらに馬券の売上を伸ばすには何をすべきかは、今から考えておく必要はある。

 そこで、競馬参加人口が多いJRA・GIのあと、今回の『“年末年始”は地方競馬が濃い!』の配信のように、競馬ファンを競馬に引き止めておくような企画は、特に地方競馬においては、今後ますます有効と思われる。

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斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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