年度末の大一番、第50回ばんえい記念

2018年03月28日(水) 18:00

生産地便り

第50回ばんえい記念を制したオレノココロ

売り上げV字回復、ネット発売の威力を痛感

 年度末の大一番として知られる「ばんえい記念」が、去る3月25日(日)、帯広競馬場にて行なわれた。この時期としてはひじょうに暖かな日で、晴天にも恵まれ、競馬場は大変な混雑であった。競馬場到着は午後2時過ぎで、この時刻になると、駐車場も満車になる。競馬場の前の白樺通を挟んだ向かい側に帯広厚生病院が現在建設中で、開業したら、こういう大きなレースの日は駐車場不足になりそうな気もする。

 ばんえい記念は、数えて今年で50回目。歴代幾多の名馬がこのレースを制し、盛り上げてきた。今年の出走馬は8頭。第9レース、午後5時15分の発走予定である。

 場内を歩いていると、あちこちで知人に会う。本州から訪れたファンもひじょうに多く、東京、千葉などからはるばるやってきた友人たちとも遭遇した。多くが「この日だけは帯広に来て生のばんえい記念を観戦する」という人々だ。レースが始まると、カメラを片手に、エキサイトゾーンの前をゆっくりと馬の歩調に合わせながら、声援を送りつつゴール方向に向かって歩いて観戦する、というのがばんえい競馬の楽しみ方の一つでもある。普段の開催では、エキサイトゾーンを行き来する人々はそれほど多くはないが、この日はレースの度にファンの大集団が移動を繰り返していた。

生産地便り

この日はレースの度にファンの大集団が移動を繰り返していた

 午後の日差しが暖かく、外にいてもそれほど寒さを感じない。徐々に日が傾き、西に没しかける頃がちょうど発走時刻となる。陸上自衛隊第5音楽隊の奏でるファンファーレとともに、スタンドを埋めた多くのファンの見守る中、ゲートが開く。

 ばんえい記念の橇の重量は1トンあり、相当に力の要る重さである。第1障害を越えた各馬が第2障害の手前に辿りつき、そこで息を入れる。しかし、ゴール前でカメラを構えていると、見えるのは各馬の頭だけである。

 最初に動いたのはコウシュハウンカイ(藤本匠騎手)。重量1トンをものともせずにほとんど一腰で第2障害をぐいぐい上り切り、先頭で坂を下りてくるのが確認できた。そのままゴールまで一気に独走してくるのではないか、というくらいの勢いであった。

生産地便り

第2障害を真っ先に越えたコウシュハウンカイ

 やがて他の各馬も第2障害を越えて坂を下ってくる。1番人気のオレノココロ(鈴木恵介騎手)は、3番手で続く。

 ばんえい競馬は、最後の最後まで展開が読めない。ゴール前であっても、息を整えるためにしばしば立ち止まる必要があるからだ。先行逃げ切りかと思われたコウシュハウンカイは、あとわずかのところまで先頭をキープしていたが、止まっては進み、また止まり、を繰り返し、なかなかゴール板まで辿りつけない。

 そんな中、ようやく追いついた他の各馬が少しずつ差を詰め、ついにゴール前わずかのところでオレノココロがコウシュハウンカイを交わし、1着でゴール板を通過した。

生産地便り

怒涛の追いこみでコウシュハウンカイを交わしたオレノココロ

 2着はフジダイビクトリー(西将太騎手)、3着には先行したコウシュハウンカイが入った。

生産地便り

サクラリュウ(左)、ソウクンボーイ(中央)、フジダイビクトリー(右)の競り合い
生産地便り

3着に粘ったコウシュハウンカイ

 オレノココロは、昨年に続きこのレース2連覇となった。父ウンカイ、母富士姫の牡8歳馬で、槻舘重人厩舎所属。馬主は大森勝廣氏、生産は東士幌町・六車實子氏。これでオレノココロは通算成績を125戦37勝とした。

 なお、ばんえい記念では、毎年全馬が無事にゴールするのを待って、スタンドから各馬の健闘を称える大きな拍手が巻き起こる。今年もそうなるはずであったが、残念なことに、ニュータカラコマが第2障害を下りてきたところで、立ち止まり、その場に倒れ込んで息を引き取るというアクシデントが起こった。突然としかいいようのない出来事であった。膝を屈して第2障害の上でへたり込む馬はこれまで何度も見てきたが、真横にバタリと倒れる場面は初めて見た。

 多くのファンの眼前で突発的に発生した競走中止で、何とも残念な結果になってしまった。ニュータカラコマは牡10歳馬で、昨年のこのレースでは3着に入線しており、今年は初制覇の期待がかかっていた。

 ところで、この日をもって2017年度のばんえい競馬は全日程(150日間)を終えた。好調なネット発売も追い風になり、帯広市単独開催になってから初めてとなる219億9264万円を売り上げた。前年対比で136.14%、約58億円もの大幅な伸びとなり、改めてネット発売の威力を思い知らされた形だ。どん底まで売り上げが落ちていたのは2010年〜12年の頃で、そこからわずか5年で倍以上にまでV字回復を遂げたことになる。

 またこの日、帯広競馬場には5963人が入場し、1億8829万円の売り上げを記録した。この後、1ヶ月近くのインターバルを置き、新年度は4月20日に開幕予定となっている。

生産地便り

ばんえい記念口取り風景

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

関連情報

新着コラム

コラムを探す